“ナイト”運転手「平日は6~7割戻っていない」タクシーにみる日本経済のいま(2022年11月18日)
10月の消費者物価指数が発表され、去年の同じ月に比べ3.6%上昇し、40年8カ月ぶりの上げ幅となりました。これで14カ月連続の上昇となり、異例の物価高騰が続いています。
そして、東京23区などでは、今週からタクシーの初乗り料金が420円から500円となるなど、約15年ぶりの値上げです。
タクシー業界は今、岐路に立たされています。
ドライバー歴23年、個人タクシーに乗る小嶋達矢さん(57)。ここ最近の原油高が大きな負担になっています。去年、月に2万5000円程度だったガソリン代は、今は約3万5000円だといいます。
小嶋達矢さん:「物価とかガスの高騰とか、多少なりとも値上げはしょうがない。本音を言えば、あと(ガソリン代)20~30円安くなってもらわないと」
高騰する燃料代を、今回の値上げ分で賄えるかもと期待していました。しかし、ほとんどが近距離のお客ばかり。料金が値上げされた今週、長距離を敬遠する雰囲気を肌で感じているそうです。
17日は、16組の客を乗せましたが、売り上げは約2万円。それでも、小嶋さんは「2人の子どもが学校に通っているうちは」と、毎日、仕事に出ています。
小嶋達矢さん:「お客さん減ったときには、時間を増やすしかない。このコロナの3年間で思った」
業界では“ナイト”と呼ばれる夜専門のドライバーの中野孝昭さん(62)。26年間、ずっと夜の東京を走り続けてきました。しかし、コロナ禍になり、一変した夜の景色は、まだ戻っていないといいます。
中野孝昭さん:「右も左も正面も空車だらけ。曲がってくる車も空車。本当に厳しいです」
平日の終電後、お酒を飲み、タクシーで帰る客は、めっきり少なくなりました。1日4万円以上あった売り上げは、今は3万円程度です。
中野孝昭さん:「新橋も終わりですね。人がもういない(Q.ここまで長期的に新橋が落ち込んだことは)ないでしょう。平日は6~7割は戻っていない」
歩合制の多いタクシー業界。コロナ禍で収入が減り、職を離れる人はますます増えました。ドライバー不足の解消に期待を持たれているのが、外国人ドライバーです。
ガーナ出身のカリム・ハッサン・アブドゥルさん(47)。1カ月前、タクシードライバーになったばかりの新人です。ハッサンさんはお客さんに、こう話します。
カリム・ハッサン・アブドゥルさん「長く仕事がしたいので(この仕事を始めた)。タクシーは75歳まで仕事ができる」
そんなハッサンさんにとって最もうれしいのが、空いた時間使ってできるお祈り。
カリム・ハッサン・アブドゥルさん:「お祈りは1日5回やっているので、この仕事を始めてから一番うれしいのが、お祈りできる時間があること。今、人手不足になってるが、周りもみんな『難しい』『できない』と。私にできたんだから、みんなにもできる」
こうした外国人ドライバーの採用は増えているそうですが、それでも人手不足を補うまではいかないといいます。
日の丸交通・富田和孝社長:「人手不足という状況に陥っている産業は非常に多い。運賃値上げにより、新たな人材もタクシー業界に入りやすくなる」
東京ではきょうも多くのドライバーがハンドルを握っています。車内での話題はやっぱり値上げのことです。
利用客:「値上がりしたなと思っていました。しょうがないどでしょう。値上げしていかないと、結果的に賃金上がらない。良い方向に向かってると信じて」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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