【解説】互いの「レッドライン」を確認…対話再開も年末に“もう一山”? 米中首脳会談

【解説】互いの「レッドライン」を確認…対話再開も年末に“もう一山”? 米中首脳会談

【解説】互いの「レッドライン」を確認…対話再開も年末に“もう一山”? 米中首脳会談

15日から始まったG20サミット(=主要20か国・地域首脳会議)を前に、日本時間14日、アメリカのバイデン大統領と中国の習近平・国家主席が初めて対面で首脳会談を行い、互いの「レッドライン」を確認しました。

●ロシア外相、短パンで…

●「越えてはならない」

●年末に“もう一山”

以上を中心に詳しく解説します。

■「ラブロフ外相が搬送」報道 ロシア側「フェイクの極み」

インドネシアのバリ島でG20サミットが15日、開幕しました。今回のサミットはロシアのウクライナ侵攻以来、主要国の首脳が初めて一堂に会する場です。

ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで出席するのに対し、ロシアのプーチン大統領は欠席し、ラブロフ外相が出席しています。

そのラブロフ外相をめぐっては、「13日にインドネシア到着後、病院に運ばれた」とAP通信などが報じていました。この報道に対しラブロフ外相に同行しているザハロワ報道官はすぐさま、「フェイクの極みだ」と批判し、Tシャツに短パン姿のラブロフ外相の動画をtelegramに投稿しました。

動画の中で、ラブロフ外相は資料を読んでいるようで、「プーチン大統領も、もう10年間、『病気』だと報じられている。そのような“お遊び”は、政治では珍しい事ではない」と話していました。

「ラブロフ外相が搬送された」というAP通信などの報道についてはロシアメディアも取り上げましたが、“何らかの意図がある報道”だとの見方を示し、「米中首脳会談の結果にフェイクがないことを望む」などと皮肉りました。

■滞っていた“意思疎通”再開 一定の成果も…

米中首脳会談は、その「ラブロフ外相の入院説」が浮上したのと同じ日に行われました。アメリカのバイデン大統領と中国の習近平主席が対面での会談をするのは、初めてのことです。最大の焦点は、今滞っている「両国間の意思疎通の正常化」です。

そもそも関係がこじれたのは、今年8月にアメリカのペロシ下院議長が台湾を電撃訪問したことがきっかけです。これに中国が激しく反発し、軍事的な威嚇も見せていました。

14日、バイデン大統領が習主席のホテルを訪ねる形で会談は行われました。両首脳は笑顔で握手を交わし、手を離した後もバイデン大統領が声をかけている様子も見られました。

アメリカ バイデン大統領
「我々は米中両国の違いを乗り越え、競争が衝突に発展することを避ける責任を共有している」

中国 習近平国家主席
「我々は中米関係の正しい発展の方向を見つけ、中米関係の向上を推進すべきだ」

両国は、気候変動対策や食料安全保障などで協力を進めることや、アメリカのブリンケン国務長官が中国を訪問することなどで合意しました。今回の会談で様々なレベルで滞っていた意思疎通を再開させ、一定の成果は挙げたと言えそうです。

一方で、一番懸念されている台湾問題では、両国の溝が改めて浮き彫りになりました。バイデン大統領は、軍事的圧力を強める中国を「台湾海峡の平和と安定を損ない、世界の繁栄を危うくしている」と批判しました。これに対し習主席は、台湾問題は「核心中の核心だ。越えてはならない『レッドライン』だ」と述べました。

■台湾めぐる「レッドライン」確認より…一番の目的は対話? 年末に“もう一山”も

「レッドライン」とは、お互いが考える“越えてはならない一線”のことです。

習主席は、「そもそも、アメリカが台湾問題に口を挟むこと自体がレッドライン」だとしています。

これに対し、アメリカの歴代の政権は台湾問題でのレッドラインをあえて明確にしない、あいまいな政策をとってきました。しかし、バイデン大統領は「中国が台湾に軍事侵攻した場合、台湾を防衛する」と踏み込んだ発言をしています。

結局、今回の会談では、このレッドラインについてどこまで話したのでしょうか。

外交・安全保障に詳しい明海大学の小谷哲男教授は、「今回の米中首脳会談は、レッドラインを明確化することが一番の目的ではなかった」と指摘しました。「これまでも、ビデオ会議などでお互いの立場を主張していたので、今回の会談では改めてそれを直接確認したにすぎない」ということです。

一番の目的は、やはり対話です。

小谷教授は「今回の会談で、トップ同士が会って対話が再開できた。台湾問題をめぐってかなり緊張が高まる中、米中で意思疎通ができれば、紛争の危機を回避することができる。そのための環境が取りあえず整ったことが、今回の会談の成果」と評価しました。

しかし、今後は年末に“もうひと山”ありそうだということです。

米議会では、年末に向けて台湾への軍事支援を強化する法案が審議されていて、これが議会を通れば中国の反発は避けられません。小谷教授は「ここも、米中の話し合いで乗り越えられるかも課題」だと話していました。

    ◇

台湾問題について緊張が続く中、米中首脳会談で再び対話できる状態になったことは、一定の成果と言えそうです。しかし、お互いの主張は180度違っていて、まだ着地点を見いだせていないのも現状です。

台湾と沖縄・与那国島はわずか110キロの近さだけに、私たちにも関わる問題として、今後も台湾問題について注視していきたいと思います。
(2022年11月15日放送「news every.」より)

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