「まるで虎刈り」間伐のはずが…ヒノキ6000本伐採で“山肌むき出し” 説明なく怒り【羽鳥慎一 モーニングショー】(2022年8月9日)
静岡市の山間部上空から撮影した映像です。山の中で茶色い山肌がむき出しになっている部分があります。静岡県の公共事業で、説明なく大規模な伐採が行われ、山林の所有者が困惑しています。
■「まるで虎刈り」県の伐採で“山肌むき出し”
先週、山形や新潟に降り続いた大雨。
新潟県村上市では、山の至る所で土砂崩れが発生。土砂は麓の住宅地まで押し寄せ、民家には流された木が屋根の高さまで積み重なりました。
大雨などによる土砂災害、その危機に直面している場所があります。
静岡市の中心部から車で2時間ほどの場所。奥静岡(オクシズ)と呼ばれ、自然に囲まれた山間部です。
緑豊かな木々が生い茂る山並み。しかし、突如として現れる“異様な光景”。至る所で木々が伐採され、広範囲にわたり山肌がむき出しの状態になっています。山肌には、伐採された木々や切り株が延々と残されています。
土地の所有者の弟・安池勘司さん:「まるで虎刈りですよ」
土地の所有者・安池倫成さん:「本当にこれこそ、自然破壊だと思いますよ」
こう語るのは、この山を4代にわたって受け継いできた安池さん兄弟です。なぜ、このような状態になってしまったのでしょうか。
安池倫成さん:「静岡市の森林組合から土砂災害を防止するとか、そういった公共的な役割も果たしつつ、強度な間伐をしましょうと提案がありまして。それじゃあ、お願いしますと…」
この場所は、県と森林組合が“森を再生する事業”として4割の木を伐採する「間伐」を提案しました。
木々を間引き、太陽光を地表に届けることで、植物の発達を促進。土砂災害防止などにつなげます。
安池さんは承諾し、去年7月から作業が始まりました。
■“ヒノキ6000本”伐採に怒り 担当者は…
そして、半年後の今年1月に「作業が完了した」と報告があり、現場を確認してみると、驚きの光景がありました。
安池倫成さん:「ヒノキを全部切っちゃって。全然、私の意図と違うことをやられた。説明を受けていたのと、違う山になっちゃったなって感じがしてます」「(Q.(県から)説明はあった?)1回ですね。その時に、強度な列状間伐しましょうって言われた。木と木の間が15メートルなんて、そんな聞いてないですね。一般の人が間伐といったら、間を切るわけですから。でも、全部切っちゃったわけですよ」
現場に広がっていたのは、間伐とは到底思えないような大規模伐採の跡。切られた木々も放置され、山肌があらわになっていました。
安池倫成さん:「こういうところが7ブロックあります。トータルで2ヘクタール、6050本ほど切られちゃったんですね」
安池勘司さん:「富士山が向こう側に見えますよ。残念なことに見晴らしが良くなってますよ」
ゴルフコースでも作るかのような大規模伐採。なぜ、こんな状態になってしまったのでしょうか。県の担当者は、次のように説明しました。
静岡県中部農林事務所・山田達司部長:「森の力再生事業では(間伐は)樹高のおおむね2倍以内までの幅なら認めるという基準を設けておりました。現場の樹高が約10メートル前後で、2倍は超えないようにと、15メートルの幅を提案したということになります」
県によると、木の高さの2倍以内の幅の間伐であれば「森林の生態系を破壊しない」「風害などを回避・軽減」の利点があることから、幅15メートル程度の間伐を予定していました。
しかし、その事業内容とは異なる場所もありました。
安池勘司さん:「これ何メートルくらいあるかな。50メートルじゃきかないと思いますよ」
山頂付近の木々は15メートルを大幅に超える、50メートルの範囲で伐採。その理由については、次のように説明しました。
静岡県中部農林事務所・山田達司部長:「(Q.広範囲にわたり伐採した理由は?)ヒノキ林は生育がよくないということで、なるべく(間伐を)広い幅でといったことも考えて、あの幅になったと思います。森林組合さんのなかで、事業計画作る方と実際現場で木を切る人って、別の人でやっているんで。意思疎通がうまくいかなかったんじゃないかと」
■“土砂崩れの危険性”水害の恐れも…
意向と全く異なる整備が行われたことに、安池さん兄弟は実際に作業を行った森林組合に抗議しました。すると…。
静岡市森林組合・狩野豊課長:「自分たちの方で認識のずれがありましたし。土地の経過の報告とかも、十分にされていなかったので。今回の事態になっているんだと思います」
その後、県と森林組合は、事前に伐採方法を伝えていなかったことを認め、謝罪しました。
しかし、問題はこれだけではなく、“土砂崩れの危険性”もあります。
安池勘司さん:「皆伐した所の水が、全部ここに集まってきたら怖いですよね。大規模な土石流みたいになっちゃったら、個人のレベルじゃないですよ。どうにもならないですから」
切り株が残され、むき出しになった山肌に、伐採された木はそのまま放置されている状態。専門家は、次のように話します。
NPO自伐型林業推進協会・中嶋健造代表理事:「たくさん切ったので山盛りになっていますけど。こうやって置いておけば、土はここで止まりますから。水が流れないように、土が流れないようにしてるのでは。これほどいらないんですけどね」
一方、残された切り株は、どうなるのでしょうか。
NPO自伐型林業推進協会・中嶋健造代表理事:「10年くらいで、この根っこ(切り株)が腐ってきます。もう根っこが抑えられなくなって、この斜面ももたなくなって、すると(土壌が)流れやすくなります。水が流れてくると、これが崩れちゃう可能性がある。(他の地域では)大崩壊につながったところもあります」
森を再生して、土砂災害を防ぐはずの間伐がかえって危険性を高める事態になりました。この問題について、県は、次のように説明しています。
静岡県中部農林事務所・山田達司部長:「実際にそういったこと(土砂災害)はまだ起きていないですし、木の根っこ(切り株)がある限りは、そんなにすぐに土砂の崩壊っていうのが起こるとは考えにくい状況です」
切り株が根を張っているうちは“災害が起きる可能性は低い”というものの、安池さん兄弟の不安は募る一方です。
安池勘司さん:「大雨が降って、大水害なんか起きてしまった場合に、私たちはどのように一般の皆様に、説明したらいいのかなって心配してますよ」
伐採された場所は7カ所です。静岡県が主導し、県から委託された静岡市森林組合が伐採しました。
伐採面積はおよそ2ヘクタール、テニスコートおよそ76面分で、ヒノキおよそ6050本を伐採したそうです。
静岡県と森林組合は、事前に所有者に伐採方法を伝えず、意向と異なる整備が行われたことを認めて謝罪しました。
伐採費用のおよそ1000万円はすべて森林組合が負担することになりました。
山林の所有者である安池さんによると、森林組合から慰謝料が振り込まれ「木を植え直すために、補助金を使用できるよう協力する」と言われたそうです。
今後、森林組合が現場に残っている伐採した木を処理する予定だといいます。
もし、災害が起きた時、責任は誰が取るのか。
小林弁護士によると、「一次的には土地の所有者が責任を負うことになる。伐採した森林組合の過失や災害との因果関係が認められないと森林組合は責任を負うことはない」と指摘します。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2022年8月9日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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