急激な円安・物価高に打つ手は…日銀「政策変更しない」にまた円安進む|TBS NEWS DIG
急速に進む円安と物価高の中、日本銀行が手を打つか注目された金融政策決定会合が開かれました。そんな中、大きな買い物の現場では先の見通せない心配事に消費者が悩まされています。
先週末の住宅展示場。夢のマイホームを手に入れようと明るい未来を思い描いているはずの来場者たちの心には、どうしても引っかかるものが。
「気がかりは金利。今は安いが、今後どんどん上がっていく不安がある」
「これからの変動金利の上昇、その辺がちょっと不安」
日銀が低く抑え込んできた金利が、この先、跳ね上がってしまうのではないか、近い将来の負担増加の可能性に心配が広がっています。金利が変わらない固定金利か、半年ごとに見直される変動金利か…。来場者たちの気持ちは揺れています。
「どっちが良いんだろう。インスタとかで見ると、変動の方がトータル良いのではないかとざっくり見たが、安全とるなら固定なのかな」
「知識不足で…」
「変動だと、都度都度上がったら結構な額になるので」
「お友達にも意見を聞いているが、変動よりも固定の方が圧倒的に多くて」
今年、住宅ローンを契約した客のうち「35年固定型」を選んだ割合は1年前に比べて2倍以上に増えたといいます。日銀が近く政策変更を迫られるのではないか。先読みする動きが始まっています。
日本銀行 黒田東彦総裁(2013年4月)
「これまでとはまったく次元の違う金融緩和」
今から9年前、黒田総裁はデフレ克服のため、大規模な金融緩和に踏み出しました。当時の安倍総理が打ち出した「アベノミクス・3本の矢」の1本目。金利を大幅に引き下げることでお金の回りを良くし、景気を引き上げようとしました。「物価の番人」である日銀の伝統的な政策からは邪道と呼ばれる奇策でしたが、この大規模な金融緩和は株価を2倍以上に引き上げました。しかし、一方で政府の「成長戦略」は不発に終わり、賃金は上がらず、今や物価だけが上がる事態に。
物価高に拍車をかけているのが円安です。アメリカはインフレを止めるため金利を引き上げ。金利を上げない日本との金利差が拡大したことで円安は加速。1ドル=140円に迫る24年ぶりの円安水準となっているのです。
黒田・日銀は何を間違ったのでしょうか。黒田総裁就任当時、日銀の審議委員を務めていた木内登英氏。大規模な金融緩和に異を唱えていました。
元日銀審議委員 木内登英氏
「10年近く続いた異例の金融緩和の副作用が円安や金融市場の不安定化という形で、今現れてきている」
今年に入って円安は24円進み、中小企業を一段と苦しめています。こちらの工場で生産しているのは、自動車部品を作る際に使う工具です。
日東精密工業 近藤敬太社長
「ここまで急激に上がると、自分たちの努力だけではカバーしきれない」
原材料はレアアースなどすべて輸入品です。円安の影響で、この半年で原材料が25%高騰しました。政府・日銀への恨み節も…
日東精密工業 近藤敬太社長
「非常に舵取りとしては難しい局面だと素人ながらわかるが、もう少しマクロに実態をみた政策をやってほしい」
そして21日、急速に進む円安に日銀は手を打つのか。
日本銀行 黒田東彦総裁
「現状維持とすることを全員一致で決定しました」
結局、日銀は今回も政策変更をしませんでした。急激に進む円安について…
日本銀行 黒田東彦総裁
「急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスであり、望ましくない」
円安阻止は日銀の役割ではなく、為替介入は政府の権限だと強調したのです。そして、注目の利上げについては完全否定しました。
日本銀行 黒田東彦総裁
「金利を引き上げるつもりは全くない。金利を少し上げただけで円安が止まるとは到底考えられない」
木内氏は、日銀が政策変更をしなければ物価がこのまま上がり続けるという不安が広がりかねないと指摘します。
元日銀審議委員 木内登英氏
「日本銀行の硬直的な政策がずっと長く続くことによって円安もずっと長く続いて物価高もずっと長く続いてしまうと個人も企業も考えた時に、経済にかなりダメージが及ぶ」
会見のあと、円相場は再び円安が進みました。日銀への風当たりはさらに強まりそうです。
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