“史上初”候補者すべてが女性…食を通じて描く“人間模様”芥川賞決定(2022年7月20日)
第167回の芥川賞が発表され、高瀬隼子さん(34)の『おいしいごはんが食べられますように』が選ばれました。今回、候補に選ばれた作者は、5人全員が20代~30代の女性。90年近い芥川賞の歴史の中で、史上初めてのことです。
高瀬隼子さん:「とてもうれしい。うれしいが、ここに来るまで、全然、実感が湧かなくて。タクシーで担当編集者と来たけど『嘘かもしれない』と言いながら来た。まだ、びっくりしている」
“食べること”をテーマにしたこの物語。舞台は、ある会社のオフィスで、中堅の男性社員・二谷さん、頑張り屋の女性社員・押尾さん、2人の視点から交互に、オフィス内の人間模様がつづられていきます。
そして、2人に大きくかかわるのが、同僚であり、二谷さんの恋人でもある芦川さん。か弱く、誰からも守られる存在の芦川さんを、押尾さんは苦々しく思っています。
料理が得意な芦川さんは、オフィスで頻繁に手作りお菓子を振舞うようになりますが、それがきっかけである出来事が起きます。“食べること”という明るいテーマの裏に潜む人間の悪意や、嫉妬、すれ違いを軽快な文章でつづっています。
高瀬さんの作品が選ばれた理由について、選考委員の川上さんは、こう話します。
選考委員・川上弘美さん:「小さい集団の中での人間関係を立体的に描き得ている作品で、“いかに書くか”の技術が非常に優れていると評価された」
自身も会社勤めをしながら小説を書いているという高瀬さん。
高瀬隼子さん:「職場の人だと、年代も考え方もバラバラの人たちと、毎日、顔を合わせてやっていく。私がしたことで、ムカつかせてしまっていることも、逆もあるなかで、それを何とかこうにか、会社の中で“まとまっていこう”との経験を誰もがしていると思うが、その経験が生かせているとは思う。(Q.執筆中は食欲がなくなったと。美味しいご飯が食べられそうか)ちょっと食べられなそう。食欲が、今、ゼロになっていて、発表を待っている間も気持ち悪くなっていた」
1935年に創設された芥川賞。主催者によりますと、前回までに、177人が受賞していています。受賞者の内訳で見てみると、昭和の時代、男性80人に対し、女性は20人。女性は全体の2割です。平成になって、女性の割合は約4割になりました。2003年には、綿矢りささんが、最年少の19歳で受賞。同時に受賞した金原ひとみさんも、当時20歳とあって、若い女性2人の同時受賞は話題を呼びました。令和に入ると、6割以上が女性になっています。
高瀬隼子さん:「私自身もデビューするまで新人賞に投稿していた身だったので、好きだったら書き続けてしまう。書き続けてしまう限り、書き続けたらいいと思う」
直木賞に選ばれたのは、窪美澄さん(56)の『夜に星を放つ』。女性のダブル受賞となりました。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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