海外に比べて“給料”が上がらない日本。今後どうなる?(2022年6月25日)

海外に比べて“給料”が上がらない日本。今後どうなる?(2022年6月25日)

海外に比べて“給料”が上がらない日本。今後どうなる?(2022年6月25日)

今年の夏のボーナスについて、大企業はコロナからの回復もあり増額となった。一方、中小企業は原材料価格の高騰などの影響で依然厳しい状況が続いている。
また日本は海外に比べて平均年収が上がっていない。今後、私たちの給料はどうすれば上がるのか、第一生命経済研究所の永濱利廣さんに聞きました。

■夏のボーナスUPについて
板倉)
経団連が発表した、大手企業105社の夏のボーナスは、1人当たりの平均は92万9259円で去年よりも、およそ14%増えたということです。夏のボーナスが前の年を上回るのは実に4年ぶりだそうです。一方、中小企業はというと、求人サイトがボーナスを支給する予定とした365社に聞いたところ、「増額予定」と答えたのは全体の27%で「額は変わらない」は最も多く56%「減額予定」は12%でした。

高島)
大企業はボーナスが増えたということですが、これはどうしてなんですか?

第一生命経済研究所・永濱利廣さん)
最大の要因は新型コロナからの事業環境が回復しているということなんですけども。経団連に属している企業というのはグローバル展開してますから、今円安で我々庶民は負担が増えて大変なんですけれども、むしろ大手企業にとっては円安が業績にプラスになりますから、そういうこともあって大きく上がっている。
高島)
とはいえ、日本の会社のほとんどを占めている中小企業をみてみると、ボーナスを上げられないという現状のようですね。

永濱さん)
ビジネスモデルを考えると、中小企業というのは海外からの原材料の依存度が非常に高くて、それを国内の市場で展開するということですから、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高の影響も出やすいし、なおかつ円安の恩恵を受けにくいということもありますから、なかなかボーナス上げにくい。

高島)
中小企業のボーナスが上がらないと消費っていうのやっぱり上向いていかないわけですよね?

永濱さん)
やはり日本の従業員の7割近くが中小企業に属してますから。
いくら大企業があがっても中小企業が上がらないと本格的な景気の回復はいえないと思います。

■冬のボーナスについて

高島)
今の世界情勢見てますと、なかなかまだ先行きはちょっと明るくないのかなと思いますけど冬のボーナスについてはどうお考えですか?

永濱さん)
海外の要因だけを考えるとなかなかロシアのウクライナ侵攻の状況も変わらなそうですし、円安も変わらないということ全般に厳しいんですけれども。
もしかしたら、夏休みの旅行者が増えたりとかして、宿泊や飲食が大きく潤えばですね、一部の中小企業が賃上げできるとなるかもしれない。

■平均年収 日本は30年間“横ばい”

板倉)
世界の主要国の過去30年間の平均年収を見てみると、アメリカは右肩上がりで伸びていて30年前と比べて246万円も増えているんですが、日本はというと、ほぼ横ばいで30年間で増えたのは18万円です。年収が上がってる国と日本の何が違うんですか?

永濱さん)
最大の理由は、日本が30年間ほとんど経済成長してないということがあるんですけども。
もう1つ雇用形態の違いというのも影響しているということだと思うんですね。日本ではメンバーシップ型雇用に対して海外ではジョブ型雇用という違いがあるんですね。
日本は人に対して仕事を配置するということなので特徴としては、終身雇用と年功序列が前提になってます。となると終身雇用なので、なかなか解雇しにくくなると、1回給料をあげるとずっと上げ続けなければいけないので給料があげにくい。さらには年功序列なので、長く働いた方が従業員にとっては恩恵を受けるわけですよね。だからなかなか転職、労働市場が流動化しにくいので、経営者側も賃金を上げなくてもいいじゃないかというふうに動きやすい。対して海外のジョブ型雇用というのは仕事に対して人を雇用するので、能力に応じて報酬が変わってくるんですね。となると働く側からしてもどんどん自分のスキルを上げて転職をして給料上げていくとインセンティブが働きますし、採用する側からしてもですね、給料上げないと、やはり辞められやすいということで賃金上げざるをえないという状況なんでこういう違いもある。

高島)
働く方のマインド自体が全く違いますよね。企業だけではなくて。

永濱)
ですから日本は“就職”というのも“就社”という感じに対して、まさに海外は“就職”ということだと思いますね。

板倉)
とはいえ、この平均年収の推移を見ていると、同じアジアでお隣の韓国、90年代は日本のほうが平均年収高かった。気付けばここで逆転されて今や韓国のほうが年収が高い。これ雇用の問題ということですか?

永濱)
雇用の問題もあると思いまして、最大は経済環境の違いですよね。日本はやはりバブル崩壊以降のですね、経済対策を誤ってずっとデフレを長期化してしまったことによって、要はその日本人というのは何か買いたいものがあってもできるだけ我慢して買い物を遅らせれば安く買えるので、なかなか経済が回りにくいんですね。でも普通の国っていうのは普通に物価が上がっていきますから、買いたいものがあったときに、早く買わないと無くなってしまう、値段が上がってしまう可能性がありますから。そういった環境の違いで、大きく賃金の差が出てるんだと思います。

高島)
そういう意味でもそういったデフレマインドってかなりこう深くに染み込んでる感じがあるんですけれども。それを支えていくっていうのはなかなか難しい。

永濱)
そうですね。ただ今足元で、もしかしたらチャンスになるかもしれないのが今回は悪い意味であるんですけれども輸入物価の上昇で物価上がってるじゃないですか。そうなると、これをきっかけに日本の人々も早く買わないと物価上がってしまうというようなマインドになって、なおかつ今後政府がですね、積極的にこの経済対策をやることによっていろんな分野に積極的にお金を使って企業が儲かるような環境を作ればですね、例えば来年の春闘で大きな賃上げが実現するということになればですね、日本ももしかしたら好循環になるかもしれないと。

高島)
そういう意味ではある種、こう思い切った投資とか何か政策みたいなことが必要ってことだそうですね。

永濱)
そうですね。ですから将来絶対必要なその人に対する投資だったりとか、経済安全保障とかデジタルとかそういう必要な面もあるじゃないですか。そういったところにもっと政府が積極的にお金を使って民間企業がもうかるような環境を作るということが重要だと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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