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「13万頭に保護必要か」改正動物愛護法 6月施行の“頭数制限”で揺れるペット業界(2022年6月24日)
先月、国内で初めてペット専用の新幹線車両が運行するなど、コロナ禍で在宅時間も増え、いま空前のペットブームです。
こうしたなか、今月からペットのマイクロチップ装着の義務化が始まりました。チップの大きさは、約直径1ミリ、長さは1センチ。埋め込まれた部分に専用の機械を当てると、15桁の番号が表示されます。この番号に飼い主の情報を紐づけ登録。これによりペットの飼い主が特定でき、飼育放棄の問題解決などにつながると期待されています。
3年前に成立した『改正動物愛護管理法』。度重なる動物虐待や、多頭飼育崩壊の事件を受け、動物を守るために改正されましたが、ある規制がペット業界を騒然とさせています。“飼養頭数の制限”です。従業員1人あたりが飼育できるペットの数を、今後、段階的に減らしていきます。
しかし、その法改正によって苦しむ人たちもいます。20年以上、ブリーダーを続けてきた伊藤さん。現在25頭の繁殖犬を飼育しています。しかし、今回の改正にあわせて繁殖犬を減らすことで、収入源である子犬が生まれない月も出てくるといいます。
ブリーダー・伊藤なつみさん:「お産や赤ちゃんがいない時期があるということは、収入がゼロという月も出てくると思う。あと2年のうちに頭数も減らさないといけない。また収入がその分、減るので、違う職を考えている。やっぱり長くやってきただけあって、(受け入れるのは)厳しい」
全国のブリーダーに対して実施されたアンケートによりますと、伊藤さんのように廃業を視野に入れるブリーダーは約30%いるといいます。また、この規制の結果、全国で13万頭以上の犬や猫に保護が必要になるという推計もあります。しかし、その受け皿になる保護団体にも、頭数制限はかけられます。
大阪府にある保護施設。現在36人のスタッフが自然豊かな環境で約500頭の犬や猫を保護しています。もし、頭数制限により手放される犬や猫が増えても、スタッフ数を増やさなければ、新たに受け入れることができません。
動物保護団体『日本アニマルトラスト』甲斐尚子代表理事:「頭数制限があれば、人を増やさないといけないし、給料ばかりかさんできて、やっていけない」
これまで身寄りのない動物たちの受け皿となっていた保護施設も、規制の枠を超えることはできず、こうした動物たちの行き場所がなくなる可能性もあるといいます。
動物保護団体『日本アニマルトラスト』甲斐尚子代表理事:「受け入れられなかったときに、浮いてしまった動物は一体どうなるのか。私は無限に保護もしたい。困ってる子は全部引き受けたい。(改正動物愛護法は)そういうのをどんどんカットしていっている」
なぜ頭数制限は、すべてのブリーダーや保護施設に一律にかけられてしまうのか。番組の取材に対し、「動物愛護管理法」を所管する環境省は、こう答えました。
環境省動物愛護管理室:「生業が成り立つかというより、多頭飼育で適切に管理できないブリーダーがいたことから、動物愛護の観点で基準を決めた背景があった。検討し具体的な数値の基準を決めた」
改正法案に携わった動物福祉の専門家は、こう話します。
帝京科学大学・佐伯潤教授:「本来は業界の中で自主規制的に、自らが可能な範囲でさまざまな改善をしていただくというのが、一番いいかなと思っていたけど、そういったことが、なかなか実施されなかった。法律として規制ができた以上、まずそれを実現してみて、実際に適切な数字であったのかというのも検証されるところがある」
この頭数制限の数値は、どう決められたのか。環境省は「1匹にかかる世話の手間や、かかる時間を割り出し、一人で世話できる限度という観点で定めた」としています。佐伯教授は背景として、「子犬を劣悪な環境で大量生産するようなブリーダーや、多頭飼育崩壊などの事件もあって、具体的な数値を示して頭数を制限する法律になった」としています。
◆朝日新聞の梶原みずほさんに聞きます。
ものすごい数の動物たちが、どうなっていくのか、とても心配ですが、法改正に伴って、ペット業界は過渡期に入ると思います。
一部の人気の犬種など、需要があるがゆえに、悪質なブリーダーや販売者を生んできたという側面があると思います。今月、イギリスでは、研究論文が話題になっていて、品種改良をして、かわいらしさを追及するあまり、ある特定の犬種に深刻な健康上の問題が起きて、獣医師たちが購入しないように呼び掛けています。
保護施設も人を増やさないと、保護できる動物の数を増やせない。こうした行き場を失ったペットは、社会でも受け入れる必要もあり、飼う側にもモラルが一層求められると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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