「ウクライナの穀物は青空の下で腐っていく」ウクライナからの穀物輸出に滞り 世界的な食糧危機の懸念も｜TBS NEWS DIG
ロシアによる侵攻の影響で世界有数の穀倉地帯、ウクライナからの穀物の輸出が滞っています。農家が苦境に立たされる一方、世界的な食糧危機の懸念も高まっています。
記者
「この一面の小麦、1か月後には収穫シーズンを迎えるそうです」
ウクライナ東部・チャプリンカにある農場には広大な敷地に青々とした小麦が育っていました。
農場経営 サーシャさん
「（小麦は）汗と睡眠不足と手にできるタコと、そういったものの結晶ですね」
しかし、今年の収穫が近づいているというのに、倉庫には去年の小麦がまだ保管されていました。
農場経営 サーシャさん
「ここにあるのは保管されているものの１％くらいですかね」
いつもの年だったら、この時期は既に売り切っているはずですが、この100倍の量が売れ残っているといいます。
小麦だけではありません。こちらはヒマワリの種。去年、収穫したうち2割が売れないままです。
農場経営 サーシャさん
「（同じ東部の）メリトポリ港は占領されてしまっていてもう輸出はできません。たとえオデーサの港まで運べてもその先、船が出られませんからね」
原因はロシアによる侵攻です。ロシアが黒海沿いの港を占領したり封鎖したりしているため、輸出ができないのです。そのためバイヤーが買いに来ず、ヒマワリの種も小麦も国内価格が侵攻前のおよそ半分に。たとえ売れても大きな損失を被るのだといいます。
さらに、これまで肥料を調達してきた工場の多くが戦争の影響で操業を停止。全体として肥料価格が上がっていて経営を圧迫します。
農場経営 サーシャさん
「セベロドネツクは戦闘地域だし、チェルカッスイの工場もドニプロジェルジンシクの工場も停止しています。どこも稼働していないんです」
そして、ウクライナからの輸出が困難になっていることで各国で小麦など穀物の価格が上昇。
特に途上国で食糧危機を招きつつあると指摘されています。
ウクライナ クレバ外相
「世界では食糧危機に瀕している国があるのに、ウクライナの穀物は青空の下で腐っていくことになります」
国連のトップは・・・
国連 グテーレス事務総長
「ロシアはウクライナが港から穀物を安全に輸出できるようにするべきです」
こうした声に対してロシア側は「経済制裁の解除と引き換えに黒海に“人道回廊”を設置してもよい」などとゆさぶりをかけていますが、ウクライナは応じないよう訴えています。
ウクライナの小麦農家も・・・
農場経営 サーシャさん
「プーチンには軍を撤収して出て行けと言いたいです。そうすれば全部うまくいくとね」
一方、ロシアでは25日、連邦議会が職業軍人になるための年齢の上限（40歳）を撤廃する法案を可決しました。ロシア軍の死傷者が増え、兵力不足も指摘されるなか、これを補いたいとの思惑もあると見られています。
そんななか、モスクワの病院ではこんな場面も。
プーチン大統領
「家族はどこに？」
兵士
「カバルダ・バルカル共和国です」
プーチン大統領
「軍に戻りたい？」
兵士
「もちろんです」
プーチン大統領がウクライナで負傷した兵士らを慰問したのです。
ウクライナ侵攻開始から3か月。こうした映像が公開されるのは初めてで、プーチン氏としては兵士らに寄り添う姿勢をアピールする狙いでしょうか。
さらにこの日、プーチン氏はウクライナ南部のへルソン州とザポリージャ州の住民を対象にロシア国籍の取得手続きを簡略化する大統領令に署名。
ロシアはこれらの地域で今月に入り通貨ルーブルを導入するなどしていて、「ロシア化」の動きを加速させています。
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