プーチン氏“侵攻正当化” パレードで「終末飛行機」中止のワケ(2022年5月9日)

プーチン氏“侵攻正当化” パレードで「終末飛行機」中止のワケ(2022年5月9日)

プーチン氏“侵攻正当化” パレードで「終末飛行機」中止のワケ(2022年5月9日)

 戦勝記念日を迎えたロシアで日本時間の9日午後4時から軍事パレードが行われました。リハーサルとは一転、パレードには異変も見られました。プーチン大統領は演説でウクライナ侵攻をネオナチとの戦いと一方的に主張する一方、直接的な戦争宣言をすることはありませんでした。

 ナチスドイツへの勝利から77年を祝う「対ドイツ戦勝記念日」。プーチン大統領が演壇に立ちました。

 ロシア、プーチン大統領:「偉大な歴史的大勝利の日、祖国を守った日、祖国の運命が決定した日、おめでとうございます」

 軍服姿の軍人が並ぶなか、スーツ姿のプーチン大統領。早速、激しい戦闘が続くウクライナのドンバス地方について触れました。

 ロシア、プーチン大統領:「今も皆様はドンパスでロシアの人々のために、私たちの人々のために、祖国の安全のために戦っています」

 プーチン大統領は一方的にウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と主張していて、演説でもウクライナ侵攻を正当化する発言が目立ちました。

 ロシア、プーチン大統領:「昨年12月に安全保障のシステムを私たちは提案しました。お互いの西側とのお互いの安全保障を補償するためのシステムを提案した。それは無駄に終わった。西側諸国の計画は全く別のものだったのです。それは今、結果となって出ています。それはドンパスでのクリミアを含め私たちの土地である、領土である。キーウもそうです。ロシアに近い土地で戦争を起こし、私たちに脅威を与えている。直接的な脅威を与えているのです。ネオナチスとの衝突が起きています。それを避けるための、防ぐための戦い、克服するための戦いは避けられなかった。NATO(北大西洋条約機構)では最新兵器が配備されています。ロシアの国境の近くに配備されているのです。これは私たちの国にとって直接的な脅威になります。私たちが起こした行動というのは唯一の決定的な(国を守る)行動でした」

 そして、アメリカやNATOを批判し、ウクライナ侵攻は自分たちを守るためだったと主張しました。

 ロシア、プーチン大統領:「アメリカは特にソ連崩壊後、自分の国が特別であること主張してきた。世界中を侮辱し、そして世界で起こっていることを無視した。ロシアでは全く別の性質を持っているのです。ロシアは決して諦めません。独特の価値観、伝統、文化を持っています」

 また、注目されていたのはウクライナとの「戦争」状態を宣言するかということでした。もし戦争を宣言すれば、大量の兵士を動員することができるのです。

 しかし9日、直接的な「戦争」という言葉は出ませんでした。

 ロシア、プーチン大統領:「第2次世界大戦の教訓を生かすために私たちは今、努力しています。私たちは、その戦った大祖国戦争で失われた命のために頭を下げます。尊い記憶に頭を下げます。その人たちのために祈りたいと思います。この世をすでに去った戦争参加者を悼み、黙祷(もくとう)を捧げます」

 そして、演説の最後にはロシア語で「万歳」を意味する言葉で参加者を鼓舞しました。

 ロシア、プーチン大統領:「ロシアの兵隊に栄光あれ!ロシアに栄光あれ!万歳!」

 プーチン大統領の演説の後、祝砲を皮切りに行われたパレード。

 スカート姿の女性兵士もいます。

 戦車やミサイルなどが続くなか、2日前のリハーサルとは異なる展開となりました。それが・・・。

 リハーサル時の映像では、上空に現れた大きな航空機「イリューシン80」。

 核戦争などの非常時に大統領が乗って空から指揮を執るとされることから、“終末の日の飛行機”とも呼ばれています。

 9日のパレードで2010年以来12年ぶりの登場かと思われましたが、中止が発表されました。その訳は・・・。

 ロシア大統領府・ペスコフ報道官:「悪天候のため、航空部隊は参加しない(タス通信)」

 防衛省防衛研究所の高橋杉雄氏は突然の中止について、こう分析します。

 防衛省防衛研究所・高橋杉雄氏:「一つは予行でもそうだが、ものすごく遅い速度で飛ぶ。飛行機は遅い速度で飛ぶと事故の危険が高くなるので、例えば上空の風が比較的強くて低速で飛ぶには危険だった可能性が一つ。あるいはサプライズで全然違う所で飛行機だけのパレードをやる。それこそマリウポリとか」

 本来は登場させる予定だった“終末の日の飛行機”「イリューシン80」、その機能とは・・・。

 防衛省防衛研究所・高橋杉雄氏:「基本的にはアメリカのエアフォースワンと役割はほとんど同じです。イリューシン80がロシア上空を飛んでいれば、そこから直接核兵器の発射指示は出せるので、核戦争になってもロシアは戦う準備ができていると国内と国外にアピールするという意図がある」

 ナチスドイツへの勝利を祝うパレードは国民の結束力を高め、海外に軍事力を誇示する狙いがあるとされています。

 しかし、今年はウクライナ侵攻を続けるなかで異変も・・・。

 去年は兵士の数が約1万1200人でしたが、今年は2000人程度減少。戦車やミサイルなどの兵器も大幅に減っています。パレードの戦車にはロシア軍の象徴となっている「Zマーク」は見当たりません。

 防衛省防衛研究所・高橋杉雄氏:「Zマークはあくまで基本的に戦場での識別用なので、今回はゲオルギーリボンをかたどったエンブレムを付けている」

 「ゲオルギーリボン」は「火薬」と「火」を象徴した黒とオレンジの模様です。戦勝記念日に愛国心を示すため、兵士や国民が一体となって身に着けるといいます。

 世界中が注目した軍事パレード。今後の情勢はどうなっていくのでしょうか。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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