熱海土石流「危険な盛り土」の責任は曖昧なまま【現場から、2021】

熱海土石流「危険な盛り土」の責任は曖昧なまま【現場から、2021】

熱海土石流「危険な盛り土」の責任は曖昧なまま【現場から、2021】

 「現場から、2021」です。危険な盛り土が被害を大きくしたとされる静岡県熱海市の土石流災害。半年が経とうする今、関係者の証言や行政の記録からわかったことは、盛り土をめぐる責任は曖昧なままだということです。

 7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区を襲った土石流。土砂で押しつぶされた家や壊れた建物は136棟。土石流による死者は26人、いまだ1人が行方不明です。

静岡県 川勝平太知事
 「山が水を持ちきれなくなって、その上にあった盛り土を一気に押し流して被害を大きくした」

 土石流の起点に人工的に造られた盛り土は規定の3倍以上の高さで、10トンダンプおよそ1万2000台分。崩落を防ぐための排水設備も不十分でした。

 盛り土は、神奈川県小田原市の開発業者が2007年、熱海市に届け出て造成しました。盛り土の崩壊を、開発業者は考えなかったのでしょうか。

開発業者の元幹部
 「民家まで飲み込んでくっていうのは、多分想定してなかったと思う。そういうのを想定するのは我々よりも行政じゃないの。被害者の人には申し訳ないけど、俺は行政だと思う。あんだけのものをほっとくこと自体、異常だよ」

 盛り土を含む土地は2011年、現在の所有者に売却され、その後、必要な安全対策はとられませんでした。10年以上にわたり、危険なまま置き去りにされた盛り土。責任はどこにあるのか。

 これは、県と熱海市が公開した盛り土に関する公文書。その数は8000枚にのぼります。そこには、危機感を募らせた行政職員の声が並んでいました。

 『危険な状態を行政として放置しておくことはできない』
 『土砂流出の恐れがあるのなら止めさせるしかない』

 造成当時、盛り土の危険性を職員たちはわかっていました。しかし10年以上放置されるうち、その危機意識は引き継がれませんでした。盛り土の崩壊3日前、県の職員が現場の状況を確認していました。しかし、誰も危険だと思わなかったといいます。

静岡県 難波喬司副知事
 「もし仮に私が土木系の専門家としてあれを見たとしても、崩壊するとは思わない。ずさんな工事がやられていると分かっている時にやらないと、後はちょっと対応が取れない」

 熱海市のずさんな対応は、市議会でも追及されました。これは、開発業者が熱海市に提出した盛り土造成の届け出。防災対策など必要な項目が空欄のまま、熱海市は受理していました。聞き取り調査だけで、申請を受理したことがわかりました。

斉藤栄熱海市長
 「(Q.市には責任はあった?)ないとは言えない。じゃあそれがどれくらいなのか、まだきちんとお伝えできる状況にない」

 多くの住民がなぜ犠牲になったのか。責任はどこにあるのか。遺族や被災地域が前を向くため、一日も早く明らかにする必要があります。(27日11:45)

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