【専門家解説】観光船社長が会見…「条件付き運航」とは

【専門家解説】観光船社長が会見…「条件付き運航」とは

【専門家解説】観光船社長が会見…「条件付き運航」とは

北海道・知床半島沖で起きた、観光船の遭難事故。発生から5日目の27日、運航会社の社長が初めて会見を開きました。船長と打ち合わせたという「条件付き運航」や連絡手段の不備、安全管理に対するプロ意識について、海難事故の専門家らと考えます。

■「条件付き運航」の有効性は?
有働由美子キャスター
「事故が起きて初めて、運航会社『知床遊覧船』の桂田精一社長が会見を開きました。最大のポイントは、出航するに至った判断です」

「社長は会見で『海が荒れるようであれば引き返すという条件付きで運航することを、豊田徳幸船長と打ち合わせて当日出航の決定をした』『今となれば判断は間違っていた』と話しました」

「この『条件付きで運航』という今回の判断について、社長は『船長判断で全て決められる』『何年もやっていること』と話しましたが、元海上自衛官で水難学会副会長の安倍淳さんは、どう感じましたか?」

安倍さん
「条件付き運航を社内規定で決めていたとしても、今回の事故では、それが有効に生きていなかったと思います。(運航)中止基準と同じように、具体的な数字を、波の高さでも風速でも示すべきだったと思います」

■社内規定「欠航する基準」の中身
有働キャスター
「条件付き出航ではない、会社の『欠航する基準』は、波1メートル以上、風速8メートル以上、視界300メートル以下でした。実際は(事故当日の)午後から、基準を上回る強風注意報や波浪注意報が出ていました。普通、これで出航は考えられるのでしょうか?」

安倍さん
「そもそも注意報が出ている段階で、通常は欠航する判断に至ります。それ以上に(気になったのは)、会見でも『お客様に対するサービスだ』と(社長は)強調していましたが、安全を担保するという最低の条件が守られてこそです」

「(その上で)社内規定によって『条件付き運航』で船長に任せるのであれば理解できますが、それにすら数値がない、具体的な中止基準がないとなると、(条件は)ないに等しいと言えると思います」

■社長の弁解は「間違った考え方」
有働キャスター
「社長からは『お客様からも、ちょっとでも走ってほしいという要望がすごいある』という発言がありました。どう感じましたか?」

安倍さん
「旅客業の許認可を受けていますので、乗客の安全を第一に守らなければ(いけません)。それは間違った考え方だったのかなと言わざるを得ません」

有働キャスター
「海の上での強風・波浪注意報は、どのくらい危険なものと認識すればよいでしょうか?」

安倍さん
「海上工事をする場合にも、波の高さと風速、視程、潮流などさまざまな条件を設けますが、『波1メートル以上で欠航』などの社内規定の数字自体は、妥当だと思います。それを超える注意報が出ているので、その前の段階で運航は中止されるべきだったと思います」

■観光客の「安全」軽視…プロの自覚は
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー)
「事業者としての責任だけでなく、あくまでお客さんの要望があったからという、(お客さんの)せいにもしているのが、正直かなり驚きました」

「危険があると分かっているのに『いざ揺れればお客さんも納得するから』と船を出すのは、お客さんの安全性を軽視しているとしか思えません」

「仮に自分が観光客だったら『悪天候で危険だから』と言われれば残念だけど諦めますし、仮にお客さんがなんと言ったとしても、海のプロとして危険性を説明し、命を守ることがまず仕事なのではないかと思います」

■「無線・衛星電話」不備で運航
有働キャスター
「連絡系統のずさんさも明らかになりました。無線については『出航当日にアンテナの故障の報告を受けたものの、携帯電話などでやりとりできる』と(社長は)話しました」

「さらに衛星電話も積んでおらず、『事故後に壊れていることを確認した』とのことでした。会社と直接やり取りできず、衛星電話も積んでいない。こんなことはあり得るのでしょうか?」

安倍さん
「旅客船の許認可をもらっている事業者に関しては、海上運送法によって船と事業所と常に安全(上)の無線交信をしなければならないとされているので、もし仮に、通じない状態が直前に分かっていながら出航していたら、大問題になります」

「バックアップとして普通のキャリア、携帯電話で通信ができない場合に、流されてしまってサービスエリアから出てしまった場合には衛星携帯電話やマリンVHFなど、さまざまな通信手段を二重三重にも備えるのが、お客さんを預かる旅客船として当然のことです」

「これも会見の中で、衛星電話があったのかなかったのか、故障していたのか生きていたのか(社長は)分からなかった、というのが非常に残念でした」

■安倍さん「命を預かる認識持って」
有働キャスター
「最終的に、事故原因について(社長は)『事故の原因も分からない、そういう至らなさが事故原因だ』と話しました。会見を全部聞かれて、どう感じましたか?」

安倍さん
「何も知らないで、観光で来るお客様の安全、命を預かるという認識をもう少し強く持つ必要があるのではないか。当事者としてやらなければならない最低限のチェック、確認をやるべきではなかったかなと思います」

有働キャスター
「28日も悪天候が見込まれますので、巡視船を中心に捜索が続けられるという予定です」
(2022年4月27日放送「news zero」より)

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