【解説】船長経験は約半年? “社内体制”事故に影響? 知床・観光船不明

【解説】船長経験は約半年? “社内体制”事故に影響? 知床・観光船不明

【解説】船長経験は約半年? “社内体制”事故に影響? 知床・観光船不明

北海道・知床半島沖で子供2人を含む乗客24人と乗員2人が乗った観光船が行方不明となってから、丸2日が経過しました。観光船は、悪天候の中、なぜ出港したのでしょうか。「止められたのになぜ出港?」、「観光船…過去にも事故」、「社内体制が“影響”か」、「低水温で“命の危険”も」の4つのポイントについて、詳しく解説します。
■観光船不明 当時「強風・波浪注意報」が…
これまでに分かっている情報を整理します。

行方不明となっている観光船「KAZU I」は、ウトロを23日午前10時に出発しました。約40キロ先の知床岬まで行って、午後1時には戻ってくる予定でした。しかし、午後1時13分に船から「沈みかけている」と運航会社に連絡がありました。

その5分後には、「船首が浸水している」「エンジンが使えない」と、知床岬から南に位置するカシュニの滝付近にいた「KAZU I」から海上保安庁に救助要請があったといいます。そして、午後2時ごろには、「船体が30度ほど傾いている」との連絡があり、これを最後に船からの連絡は途絶えました。

当時、現場付近では、16.4m/sの北西の風が吹いていて、波の高さは2m~3mで、「強風・波浪注意報」が出されていました。

■他の観光船は“GWから出港”決めた中…事故の船だけ運航か
天気が悪かったのに、なぜ、観光船は出港してしまったのでしょうか。

現場の海をよく知る人たちからも、疑問の声が上がっていました。地元の漁師は「午前中は晴れていた。天気が悪くなるのが分かっていたので、前日から漁に行くのはやめようと思っていた。昼過ぎに見たら、やはり波も高かった」と話していました。

また、別の観光船の船長は「当時は観光船が出られる状態ではなかった」と話し、事故当日、「KAZU I」の船長とも会話したといい「どんどん天候が悪くなるからやめた方がいいぞ」と出港を止めたといいます。これに対し、「KAZU I」の船長も「はい」と答えたということですが、結局は出港を決めました。

また、別の漁協関係者によると、そもそも他の観光船なども含めた安全協議があり、他の船はゴールデンウイークの連休からの運航を決めたといいます。その中で、「KAZU I」だけが事故当日、23日から今シーズンの運航を開始したということです。

■去年も事故…長く務めた職員が全員“契約解除”?
実は、この観光船、過去にも事故を起こしたことがありました。国土交通省によると、「KAZU I」は、去年5月に漂流物に衝突し乗客3人がけがをする事故を起こしたほか、6月には座礁事故を起こしたことも分かっています。

これらの事故と今回の事故との間に直接の因果関係があるのかということまでは、まだ分かっていませんが、以前、この「KAZU I」の船長だった男性によると、去年春、運行会社の従業員がほぼ全員入れ替わったということで、社内体制に不安を感じていたといいます。

「KAZU I」を運行するのは、斜里町にある「知床遊覧船」です。2020春まで「KAZU I」の船長を務めたという男性によると、元船長だけでなく、去年春に、長く務めた職員が全員「契約解除」となり、“総入れ替え”の状態になっていたということです。それにより、十分な引き継ぎができず、「整備不良」や「技術不足」につながったのではないかと懸念していました。

なぜ、全員、契約解除となったのか、元船長によると、観光船の船長らは季節雇用で、4月~11月の運航期間がおわれば契約も終了し、また次の4月から新しいシーズンの契約をするということです。元船長は、去年3月にいまの社長から電話があり、突然、「再契約しない」旨を伝えられたということです。

経営者が数年前に代わり、今回、船長を務めた豊田徳幸さんは、いまの経営者が2年前の夏に雇った人で、豊田さんが元船長らベテラン職員と一緒に働いたのは、その夏から11月いっぱいの半年足らずということになります。

去年春には、元船長らが契約更新されませんでしたので、豊田さんが船長を務めるようになったといいます。「KAZU I」船長としての経験は、去年1シーズンの約半年間になります。そして、この春、2シーズン目が始まったところで、今回の事故が起きてしまいました。
■空気中よりも25倍早く体温が下がる水中…放熱防ぐ姿勢は
そして、今回、現場の状況で非常に心配な要素が「海水温の低さ」です。海に投げ出されてしまうと、短い時間で命の危機が非常に高まります。

「海技振興センター」がまとめた、船員のための低体温症対策のガイドブックによると、まず、低体温症とは「体温が35℃以下に低下した状態」を指します。その症状は、体温が下がるほどに深刻になるということです。

35度から32度は「軽度」とされますが、身体の震えが止まらなくなります。32℃から28度の「中等度」で意識障害に陥り、筋肉は硬直、身体が動かなくなるということです。さらに、体温が28度を下回ると「重度」となり、意識が無くなってしまいます。ただし、この状態でも適切な処置を受ければ、蘇生の可能性はあるということです。

では、水温と意識レベルの関係はどのようになるのでしょうか。

水温が0~5℃だと、意識が無くなるまでの猶予は15分から30分程度だといいます。4月下旬とはいえ、北の海は非常に冷たく、今回、周辺の水温はわずか2~3℃だったとみられます。海中に転落したら、とにかく一刻も早く陸に上がることが重要だということです。

それから、体温を奪われないことが重要だということで、海に落ちたときに体温低下を防ぐ「HELP姿勢」というものがあります。「Heat Escape Lessening Posture=熱を逃がさない姿勢」の頭文字になります。

水中では、空気中よりも25倍早く体温が下がるということで、水中から身体を出せば、出すほど放熱量が下がり、生存の可能性が高くなるということです。

特に頭は放熱の速度が速いため、頭を水の上に出す姿勢をとり、できるだけぬらさないようにすることが重要だといいます。また、水の中で身体を動かすことも、体温低下を進めてしまうので、動いてはいけないそうです。

    ◇

海上でも、陸上でも、一刻も早く、行方の分からない方を見つけて手当てをすることが不可欠です。25日午後4時前時点で、まだ15人の行方が分かっていませんので、海上保安庁などは引き続き捜索活動を行っています。
(2022年4月25日放送「news every. 」より)

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