【解説】ロシア軍「地下貫通弾」を“最後の砦”巨大地下施設に投下?

【解説】ロシア軍「地下貫通弾」を“最後の砦”巨大地下施設に投下?

【解説】ロシア軍「地下貫通弾」を“最後の砦”巨大地下施設に投下?

ウクライナ側が抵抗を続ける南東部マリウポリの巨大地下施設では、1000人以上と言われる一般市民が命の危機にさらされています。「マリウポリで“降伏”はあるのか」、「製鉄所の地下には多数の市民」、「地下貫通弾による攻撃」、「国連が呼びかける4日間の停戦」、この4つのポイントについて詳しく解説します。

■抵抗続ける「アゾフ連隊」 ロシア側は投降を呼びかけ
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日に公開された自身のテレグラムで、「マリウポリの状況は極めて厳しいままだ。ロシア軍は、人道回廊の設置と人命を救う努力をことごとく妨害している」とロシアを強く非難しました。

今、ロシアが完全に包囲しているウクライナ南東部のマリウポリでは、多数の市民が取り残されて、ウクライナ側の治安組織「アゾフ連隊」が抵抗を続けています。

ロシア側はこれまでも何度も投降を呼びかけましたが、ロシア国防省は日本時間20日午後8時から、投降するための時間を設定すると明らかにしています。

■“ヨーロッパ最大級”の製鉄所に地下シェルターが…
マリウポリにあるアゾフスタリ製鉄所には、多数の市民が逃げ込んでいるとみられています。抵抗するウクライナ側のアゾフ連隊司令官に、話を聞くことができました。

ウクライナのアゾフ連隊 マクシム・ゾリン司令官 
「毎日、空爆が行われていて、海からも砲撃されている。1日のうち、砲撃されていない時間帯は30分もない。避難者は数日間、新鮮な空気を吸ったり、太陽を浴びたりしていない」

アゾフ連隊は、製鉄所にある地下シェルターの様子とする映像をSNSで公開しました。洗濯物とみられる衣類が至る所に干され、多くの子どもや女性、高齢者らの姿が確認できます。

避難した市民
「つい最近、誕生日だったんだ。ここから脱出したら、ママとパパにすてきなプレゼントを買ってもらうよ」

避難した市民
「ここには、食事もちゃんととれていない子どもたちがたくさんいます。お願いだから、避難させてください。もう力が出なくて、涙も出ません」

■ロシア軍 制圧困難?“最後の砦”アゾフスタリ製鉄所
1000人以上が避難しているというアゾフスタリ製鉄所は、実は「最後の砦」のようになっています。なぜ、アゾフスタリ製鉄所が「砦」なのでしょうか。アゾフスタリ製鉄所は、ヨーロッパ最大級の製鉄所で、11平方キロメートル、東京ドーム235個分もの広さがあります。これだけの広さの所に、製鉄所なので頑丈な構造物がたくさんあります。

注目したいのは、地下です。巨大な地下施設が広がっており、出入りしたことがあるというアゾフ連隊司令官によると、地下は何層にもなっていて、居住空間や菜園、診療所などもあるということです。

この地下施設にはトンネルも張り巡らされていて、「地下に街があるようだ」とも言われているほどです。この地下施設にロシア軍が入り、制圧するのは相当困難ということです。さらに、地下施設は、空爆を受けても耐えられるぐらい頑丈に造られているということです。

ロシア側は、ウクライナ側に対して、繰り返し「投降しろ」と呼びかけていると考えられています。

■ロシア軍、地下貫通弾「バンカーバスター」投下か 化学兵器使用の懸念も…
一方、ロシア軍がより破壊力のある兵器を使う可能性も指摘されています。ウクライナ大統領府のポドリャク顧問は19日、自身のツイッターで、「ロシア軍が地下施設に対して、地下貫通弾=バンカーバスターを投下し続けている」と主張したうえで、「子どもたちへの殺人行為だ」と非難しました。

バンカーバスターは、2003年のイラク戦争でも使用され、衛星利用測位システム(GPS)やレーザーで誘導され、目標となる地点を精密に狙う兵器です。バンカーバスターは、目標地点に突入すると、地中深くに潜りこんでから爆発して、地下施設を攻撃できるのが特徴です。

一方、現代軍事戦略に詳しい防衛省防衛研究所の高橋杉雄室長は、「この施設は地下に深く大きく広がっているため、バンカーバスターでは全体を破壊することはできない。1発の爆弾で破壊するのは半径約10mなので、効果は限られる」と指摘しています。

むしろ考えられるのは、先週、ロシア軍が使ったとされる「有毒化学物質」や「化学兵器」です。高橋氏は「地下との空気口になっている換気施設を利用して、毒物を地下に流し込むことが懸念される」と分析しています。

■国連事務総長「人道目的の停戦」呼びかけも…ロシア側「偽善」と反発
19日、国連のグテーレス事務総長は「命を救え、流血と破壊を止めろ。対話と平和のための窓を開け」と強く述べ、今月21日から4日間、人道目的の停戦を実現するように呼びかけました。

これに対して、ロシアの国連次席大使は、「平和と停戦の呼びかけは偽善だ。ウクライナの過激派が武器を受け取るための時間と場所を提供するためのものだ」と反発し、停戦が実現するかは、まだ不透明な状況です。ロシア側は、投降に応じないのなら、民間人も戦闘員とみなして、「攻撃の対象」と自らを正当化する可能性があるとみられています。

一方、ウクライナ側は、首都近郊・ブチャなどで民間人を虐殺してきたとされるロシア側の言い分を「そう簡単には信用できない」という気持ちがあり、脱出したくてもできない状況が続いています。

ウクライナのベレシュチュク副首相は、「日本時間20日午後8時から、マリウポリに『人道回廊』を設置することで、ロシアと事前合意に達した」と自身のフェイスブックで発表しました。包囲されたマリウポリから、女性や子ども、高齢者を避難させるためのものだということです。

     ◇

一人でも多くの命を救うための人道回廊や停戦が何とか実現することを願います。
(2022年4月20日放送「news every.」より)

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