「ロシア有利とは言い切れない」2つの要因とは?専門家に聞く ロシア“総攻撃”開始(2022年4月19日)
ウクライナ東部ドンバス地方で、ロシア軍が大規模な攻撃を開始しました。
アメリカのシンクタンクの分析によりますと、ロシア軍はドネツク州・ルハンシク州全域の支配を目指し、新たな大規模作戦を開始したということです。
ロイター通信によりますと、ルハンシク州のクレミンナはロシア軍が制圧し、ウクライナ軍が撤退したということです。クレミンナでは民間人の死者が出ているとの情報もあります。
長く激しい戦闘が続いているマリウポリでも多くの犠牲者が出ています。
◆防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
(Q.ロシア軍による大規模な攻撃が始まりましたが、どう見ていますか)
ウクライナでの戦闘が新たな段階に入ったんだと思います。ロシア軍は、首都キーウの攻略に失敗し、戦闘を東部2州に集中させました。これに呼応する形で、ウクライナ軍も東部2州に集約することになります。今後、東部2州の攻防が本格的に始まると思います。
このタイミングでロシアが大規模な攻撃に踏み込んだ背景には、首都キーウから撤退した部隊が態勢を立て直し、数週間かけて東部2州に投入されたことがあると思います。もう1つは、対独戦勝記念日の5月9日向けて、ロシア国内に一定の戦果をアピールする必要があるため、今の段階で大規模な攻撃に踏み切らざるを得なかったんだと思います。
すでに攻撃が始まっていて、ウクライナ側も被害が出ていますが、今後の戦況は一概にロシアが有利とは言い切れません。今後の展開次第では、互角の戦いになる可能性もあるとみています。
(Q.「ロシア有利とは言い切れない」とはどういうことですか)
東部2州は平坦な場所で、広い場所でロシアが数量で上回る戦車などを投入して、ある程度攻め入ることができるとは思います。ただ、ロシア軍の士気は大幅に低下しています。今回、十分な休息が取れないまま、再投入されている部隊もあると思いますので、ロシア軍の戦闘力は必ずしも高くないと思います。
それから、アレクサンドル・ドボルニコフ将軍が総指揮官として全体を見る立場になりました。正規軍の統率は立て直されますが、正規軍のみならず、親ロシア派武装勢力や外国人傭兵、チェチェンの民兵などもいます。ロシアが足並みを揃えながら戦闘できるのかは、引き続き課題が残されています。
(Q.マリウポリの状況も影響しますか)
製鉄所にウクライナの部隊が取り残された状況で、ロシア軍は最後通牒を突きつけて投稿を促していますが、一部では攻撃に踏み切っているとも伝えられています。ロシアからすると、早めにマリウポリを完全に抑えたうえで、東部2州の戦闘に集中したい思惑があると思います。マリウポリがいつどのような形で制圧されるのか、制圧されないのかは、東部2州の戦況にも大きな影響を与えるとみています。
(Q.マリウポリにいるウクライナ軍アゾフ連隊は、ロシアにとって無視できない存在なのでしょうか)
アゾフ連隊は東部2州で新ロシア派武装勢力との戦闘を繰り広げてきました。マリウポリを拠点として、これまでもロシア軍と激しい戦闘を戦ってきました。ロシアは、アゾフ連隊を“ネオナチ”と呼び、過激な民族主義者で、ロシア系住民に危害を加えていると主張しています。ロシアからすると、アゾフ連隊を排除したうえで、ロシア系住民を脅威から解放したとアピールする必要もあるため、徹底的に排除する必要があるんだと思います。
(Q.ウクライナ側の状況をどう分析しますか)
欧米諸国からの軍事支援が強化されています。ただ、どの程度の兵器が東部の前線に届いているのかは、はっきりしていません。アメリカが供与を表明した榴弾砲などは、大きな戦力になると思われますが、一定の訓練をしないと運用はできないとみられています。実際に使えるようになるには、まだ時間がかかるのではないかと思います。
(Q.ロシアが目標とする東部2州の制圧を、5月9日までに達成する可能性はどのくらいありますか)
ロシア軍はまだ、ドネツク州の半分少しくらいしか制圧できていません。2月24日から軍事侵攻を始め、2カ月近くなりますが、このペースでしか進軍できていません。あと3週間で、100%の制圧は厳しい状況になっていると思います。ただ、東部2州にいるロシア系住民がウクライナ側から危害を加えられてきたというのが、ロシア側の今回の戦争の大義なので、5月9日を過ぎたとしても引き続き制圧しようとし続けると思います。それ以外の南東部でも激しい戦闘が続き、黒海沿岸地域をさらに西に向かって制圧地域を拡大していく動きも行われると思います。そのため、戦闘は長期化するとみています。
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