大津市保護司殺害事件初公判 更生支援の継続に課題 事件をきっかけに変わり始めた“保護司”の今とは
2024年、大津市で保護司の男性が殺害された事件の裁判員裁判が17日から始まりました。保護司の役割は、犯罪や非行を犯した人の社会復帰の支援です。事件をきっかけに変わり始めた「更生支援」の現場の”今”とは。
けさ(17日朝)、黒のスーツ姿で法廷に姿を見せた、殺人などの罪に問われている飯塚紘平被告(36)。
飯塚紘平被告
「間違いありません。守護神様の声に従ってやりました」
きょう(17日)始まった裁判員裁判で、飯塚被告は起訴内容を認めたものの、弁護側は心神耗弱状態にあったなどとして刑事責任能力を争う方針を示しました。
一方、検察側は…
検察側
「仕事が長続きせず自暴自棄になり、殺人事件を起こして政府に報復したいと考え、犯行に及んだ」
事件が起きたのは、2024年5月。滋賀県大津市の住宅で新庄博志さん(当時60)が、胸や首をナイフや斧で刺され、死亡しました。
殺害したとされる飯塚被告は、コンビニ強盗をした罪に問われ、執行猶予判決を受け、保護観察中でした。
当時、新庄さんは、「保護司」として飯塚被告の更生支援を担当していました。
保護司は、刑務所や少年院を出た人などが社会に戻るのを支援する非常勤の国家公務員です。法務大臣に委嘱された民間のボランティアが、生活や仕事の相談にのって、その人の再スタートを後押しします。
新庄さんは、支援の対象だった飯塚被告を面談のために自宅へ招いた際に襲われ、亡くなったとみられています。
彦根保護区保護司会・平田 敦之 会長
「こうした事件が起こるはずがないと思っていたんですね。それだけに、衝撃が大きかったのが事実ですね」
寺の住職の傍ら、彦根市で保護司会の会長を務める平田敦之さん。新庄さんと活動を共にしたこともありました。
彦根保護区保護司会・平田 敦之 会長
「上から目線でお話をされる方では絶対になく、今回の事件においても(保護観察)対象者の方を怒らせるだとか、そういったことをされる方では 全くなかった」
事件は、保護司の「人材確保」にも影響を及ぼしています。
彦根保護区保護司会・平田 敦之 会長
「新庄先生の公判が始まる中で、やはり保護司というのは、どういう立場なのかというのがおそらく話題になってくるだろうと」
保護司
「『保護司さんの事件があったよねって、大丈夫なん?』という答えを得ることもありますよね。『保護司っていうのはそういう人を家に呼んでお話するんやろう』っていうことを心配している方も結構おりました」
保護司を志す人がいても…。
保護司
「保護司になっていただきましたけども、ご家族の理解が得られなくて辞任された方がいらっしゃった」
十分な人材を確保できていないのが実情です。
一方で、事件をきっかけに、「制度」の見直しも。
法務省の検討会は、保護司の安全確保のため「複数の保護司による支援体制をとること」や、「自宅以外の面談場所を確保すること」などを提案、法律も改正されました。
この日、平田さんと保護観察対象者との面談は、自宅ではなく、公共施設で行われました。面談には、3年目になるもうひとりの保護司の姿も。
彦根保護区保護司会・平田 敦之 会長
「(面談では)先生が正面に座っていただき、基本的には1対1という形をとりたいと思っています。1対2だと威圧感を感じられるケースもありますので、できるだけ1対1をとって、私は少し外れた位置に座ります。ここに座りますと、対象者の視角から私は見えません」
「面接の中で(保護観察対象者が)どんなワードにひっかるのか、私たちもなかなかわからないので。彼の拳が握り出したとか、もしくは震えだしたとか、きょうはここでやめておこうとか、この言葉はやめておこうとかは見えてきたりします」
保護司・水波 晋さん
「ちょうど保護司になったときに事件が起きたので、正直、家族にも心配されましたし、不安はあったんですけど、1人目から複数ということで、それは安心できました」
ひとの思いで繋がる”更生支援”のあり方が、いま改めて問われています。
彦根保護区保護司会・平田 敦之 会長
「もちろん私たちのこういった活動の背景には、一つ一つの事件の中で苦しい思い、悲しい思いをされた被害者、周辺のご家族の皆様のお気持ちがあってこそ、再犯させないように、 やり直すという、そこにわたしたちが手を差し伸べていかなければいけないんだろうと思います」
■“保護司” 世界が認める一方で…
(黒木千晶 キャスター)
「再犯を防ぐ」そして「次の被害を防ぐ」という意味で、本当に保護司の方の活動というのは頭が下がる思いなのですが…。
今回亡くなった新庄さんがかつて担当していた谷山さんですけれども、今日取材に応じていらっしゃって、
「社会人として後押ししてくれた。恩を感じている。新庄さんの活動は無駄じゃない」
とお話をされています。
さらに、国連でも再犯防止に効果的な(日本)独自の制度として評価されていて、文書にも「hogoshi(JAPAN)」と記載されています。
■担い手不足にどう対応?
(黒木千晶 キャスター)
保護司の方は、年々減少傾向にあり、内閣府の去年12月のアンケートでは、「保護司は引き受けたくない」と答えた方が86.4%いらっしゃいました。
「保護司を増やすために国がすべきなのは?」という質問対しては、現状無報酬の状態ですので、「報酬・手当を支払うべき」と答えた方が60.3%、そして「仕事との両立に企業の理解が必要だ」と答えた方が45.7%いらっしゃいました。
(高岡 達之 特別解説員)
私も事件取材が長かったので、ああいう現場に行くと、この国の犯罪を犯した人をもう一度社会で更生させるという道のりには、たくさんのボランティア、ご自分の意思で参加をしてくださっている方が多いということに改めて気づきます。
例えば、死刑の判決を受けた人に対しては、宗教指導者の方が教会心と言って、人の道を教え諭しに本当においでになるわけです。その志に甘えている部分が、我が国はないだろうかということを非常に思います。人手不足は、確かにありますのでオンラインの提案もあると思うのですが、そのアイデアを先ほどからご覧いただいているように、「面談の仕方も全部、現場の皆さんが考える」私はそれでいいのだろうかと。
やはり、もっと法務省も国も踏み込んで、一緒に志を持ってくださっている方を守って、報酬を上げるということもそうですし、場合によっては警備。これはもっともっと国家が関与すべきことではないかと思います。
(黒木千晶 キャスター)
判決は、3月2日に言い渡される予定です。
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