「ウクライナを攻撃していない」持論に終始・・・ロシア外相の発言意図は?専門家解説(2022年3月10日)

「ウクライナを攻撃していない」持論に終始・・・ロシア外相の発言意図は?専門家解説(2022年3月10日)

「ウクライナを攻撃していない」持論に終始・・・ロシア外相の発言意図は?専門家解説(2022年3月10日)

ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから初めて、両国の外相会談が行われました。

会談では「人道回廊の確保」「停戦について」「会談の継続」「首脳会談の開催」などについて話し合われたとみられます。

会談後の会見では、両者の温度差が明らかになっています。

ウクライナ、クレバ外相:「ロシア側は停戦を成立させる気がない。要望はウクライナの降伏」「マリウポリ発着の人道回廊の設置合意は得られなかった」

ロシア、ラブロフ外相:「他国を攻撃するつもりはない。ウクライナも攻撃していない」「ロシア経済は自分たちで面倒を見る」

◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.今回の外相会談をどうみますか)

軍事侵攻後初の外相会談だったので、事態の打開に向けた糸口が掴めないかと期待しましたが進展はありませんでした。それどころか、停戦に関しても、歩み寄る交渉に関しても、ロシア側は全く応じる態度ではなかったことを残念に思います。

今回の会談は、ロシア側の主張すべてをウクライナ側にのませるための外交的圧力をかけたようにみえます。外交圧力もかけながら、ウクライナを追い込もうとしている感じがあります。

ラブロフ氏は18年、外相をやっていて、ロシアの外交的立場を国際的にアピールするスポークスマン的な役割を担っています。今回の外相会談は、国際社会に改めて、ロシアの主張を大々的に伝える場に利用された感じもあります。

◆会談が開かれたトルコ・アンタルヤにいる伊従啓記者に聞きます。

(Q.ラブロフ外相の記者会見は、どんな雰囲気でしたか)

まず、非常に注目度が高かったと言えます。ウクライナ侵攻後初めて、ロシアの外相が西側に出てくる、直接質問できるということで、非常に多くのメディアが集まりました。発表では、34の国から400人のジャーナリストが集まったということです。

会見では、西側メディアからはたびたび、辛らつな質問が飛びました。今回の会談では、実質的には何も進展せず、ラブロフ外相に対して「あなたはこの場に何を用意してきたのか」と問う記者もいました。

会談内容とは別に、ウクライナで起きた小児病院への攻撃に関しては、3度にわたって質問が飛びました。ラブロフ外相は最初「あの病院は過激派によって占拠されていた。患者はいなかった」と説明していましたが、3度目にもなると「あなた方は私の言っていることを何も聞いていない」といら立ちをみせるシーンもありました。

この場に集まっているメディアのなかにも「多少は進展するのではないか」と期待する声がありましたが、実質的に何もなかったというのが結果だと思います。ラブロフ外相は「実質的な協議はすべてベラルーシで行われていて、ここではない。同じ問題について、別の場所で別の人間が協議することに意味はない」として、この場所で交渉・協議をする気がなかったことを明らかにしています。ロシアとしては、話し合いには応じるが、ゼロ回答しか用意していなかったという印象を受けました。

◆再び、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.会見全体をみて、どんな印象を受けましたか)

ロシアの立場の正当化、欧米に対するけん制に終始する会見だったと思います。ラブロフ外相は「特別軍事作戦で、ウクライナへの攻撃ではなく、予定通りに行われている」と主張。欧米から経済制裁を受けていますが「自分たちで何とかする。大きなダメージはない」と強がっています。そして「ウクライナに武器や傭兵を送る国は、その責任を思い知ることになるだろう」と、欧米諸国の軍事支援に対して痛烈に批判しています。

「核戦争が始まるとは信じたくない」という発言は、外相としてどうなんだと思います。プーチン大統領も核使用を示唆する発言を繰り返していますが、軍事攻撃が激化した場合、ロシアは核を使うかもしれないと示唆することによって、ゼレンスキー政権を追い詰めて降伏させる最後の脅し文句です。今回の外相会談で進展がなかった後に、この発言をしているのは深刻だと思います。

(Q.ゼレンスキー大統領は「私が目指すのはロシアとの戦争を終わらせること。一定の手段を講じる用意もある。妥協することはあっても、それが祖国を裏切るものであってはならない」と発言しました。これについて、どうみますか)

ロシアが要求している中立化、NATO(北大西洋条約機構)非加盟に対して、ウクライナ側が柔軟な姿勢を見せ、交渉が進展するのではないかという見方がありました。この先に予想される、首都キエフの総攻撃を避けるためにも、ウクライナ側は歩み寄ろうとしたと思いますが、結果的にロシア側は一切、歩み寄りの姿勢を見せませんでした。プーチン大統領の「ロシアの要求をすべて無条件でのまないと、軍事作戦はやめない」という発言がありましたが、そこから一歩も妥協する様子がみられませんでした。

(Q.今回の会談では、首脳会談の可能性についても言及があったということです。首脳会談が実現する可能性はありますか)

ラブロフ外相は、首脳会談をやること自体は否定しないものの、「会談のための会談は意味がない」と言っています。本来、外相会談で論点が整理されたうえ、首脳会談で妥結するのが普通の交渉ですが、外相会談でも歩み寄る余地がないので、首脳会談に発展しないのではないかと思います。

(Q.攻撃を続けながら、対話をする形をとって、そのたびにロシアの立場を主張する。これは長い目で見れば、世界に対するロシアのプロパガンダではないかという気もしますが、いかがですか)

軍事侵攻の前も、首脳会談・外交交渉をするような素振りをしならが、軍事侵攻に踏み切りました。外交的な話を素振りをしていますが、それはパフォーマンスであって、最終的には首都キエフへの総攻撃に向かって着実に進んでいるようにも見えます。

(Q.プーチン大統領を止める人は周囲にいますか)

プーチン大統領を止められるのはプーチン大統領しかいないと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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