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国民生活に直結する危機 “令和のオイルショック”を避けろ 日本政府の思惑は?【後藤部長のリアルポリティクス】
ロシアのウクライナ侵攻から2週間。アメリカは「ロシア産の原油の禁輸」という思い切った措置に踏み切りました。“令和のオイルショック”は訪れるのでしょうか?日本政府の思惑とあわせて、TBS報道局の後藤俊広 政治部長に話を聞きます。(聞き手:高野貴裕キャスター)
ーーロシアのウクライナ侵攻から3月10日で2週間がたちました。
今日もやはり、ウクライナ情勢に関連するお話です。特に今日は日本のエネルギー事情について、私たちの最新の取材を基にお話ししていきたいと思います。早速ですが“オイルショック”という言葉は?
ーー1979年生まれなので、教科書で習ったぐらいです。親がオイルショックでトイレットペーパーや何やら買いあさっていたということを聞いています。
第一次オイルショックは1973年です。なぜオイルショックでトイレットペーパーを大量に購入しているのかはよくわからないのですが、とにかく当時の皆さんが“あらゆるものが足りなくなる”という恐怖におののいていたのがオイルショックです。
ーー集団心理で買いあさってしまったということでしょうか?
なぜこの話触れたかというと、オイルショックのきっかけも戦争だったんです。
第4次中東戦争が勃発した時は、イスラエルと中東の産油国との闘いという構図でした。その中で、親イスラエルの政策をとるアメリカなどの欧米諸国に反発した中東諸国が「原油を輸出しないぞ」ということで、ストップをかける動きを示しました。その結果、当時の価格で約4倍にまでガソリン価格が上がってしまったということです。当時は“狂乱物価”という言葉が流行語になるほど大きな社会現象となりました。今の状況と似てきています。
ーーかなりガソリン価格が高くなってきています。
今回のウクライナへの侵攻が、一つのトリガーを引いたのではないかとみています。
この直近の動きでいうと、今はアメリカ・EU諸国に日本も、ロシアに対して経済制裁を科しています。さらに、アメリカは思い切った措置に踏み切りました。ロシア産の原油の禁輸措置に踏み切ったのです。
ーーロシア産の原油は生活に影響を及ぼすのですね。
アメリカは割合シェアは少ないです。しかしヨーロッパ、特にドイツなどは(禁輸の)経済制裁は慎重です。同じく日本も慎重な姿勢崩していません。岸田総理は9日、報道陣に対して「バイデン大統領は会見においても同盟国の多くが参加する立場にないことを理解した上でこの措置を進めている」と説明しています。その上でエネルギーの安定供給に引き続き取り組む考えを示しています。
中東からのオイルというイメージが強いですが、日本はロシアもシベリア、サハリンなどかなり地理的に近いところから一定程度の原油を輸入しています。
日本はロシアから全体から見れば約3.6%の原油を輸入しています。日本から見てのロシアは、原油だけでなくLNGなどのガス、石炭などかなりのエネルギー資源を輸入していることもあるから、現状ではアメリカのように全面的にストップということはできない事情があります。
ーー日本はどうしても輸入に頼っているところもあります。
総理官邸の幹部の一人は「ガスとか8‐9%ぐらいをロシアから輸入してるから、それを全部止めたら大変なことになる」と危機感を示しています。日本側の本音では、金融などの制裁を主軸に進めて行きたいというのが本音です。
国際社会へのアピールとともに重要なのは、国民生活の安定になります。原油高は全ての物価高の根本になり得ます。輸送コストや人件費含めて、原油価格が上がることによっていろいろな価格コストが上がり、物価そのものがかなりダメージを受けてしまいます。
ーー戦争は長引きそうですか?
少なくとも長期化は避けられないとみています。今日とか明日で停戦合意ができるということは、よほどどちらかが譲歩しなければ難しいでしょう。
ーー今後、外相会談が予定されていますが?
色々なカードのやり取りはありますが、ロシアはプーチン大統領の一存でかなりの部分が決まります。プーチン大統領本人が交渉にてどう判断するかで、かなり決まってくるのではないでしょうか。プーチン大統領が納得する落としどころについては、国際社会も苦慮していると思います。
ーー長期化すればガソリン価格も上がるのではないですか?
日本政府の幹部が頭を悩ませているのは、戦況がどれだけ続くか、ということです。長期化を見ている政権幹部の1人は「あと2,3か月続く」などと言っています。
今はガソリン1について、1リットル当たり25円の補助金を出しています。それもそろそろ高騰が続いていて、更なる価格上昇のリスクもあることから、25円では足りないのではないかという見方も出ています。
さっそく政界でも動きが出ていまして、自民公明の与党と国民民主党の幹部がトリガー条項の凍結を解除するかどうかについて協議を始めています。
ーートリガー条項は一部のガソリン税を免除するということでしょうか?
一定の条件価格が続いた場合は自動的に減税します、というシステムは作られているのですが、その行使は止めています。これを真剣に議論せざるを得ない状況にまで追い詰められているのではないか、というのが今の状況です。
ーー市場価格が170~180円まで上がると、どうなるでしょうか?
そうなりますと、もちろん首都圏でも車を利用される方は多いと思いますが、特に地方の寒村地域に行くと車は生活の手段=必需品です。食料を調達するにも車が必要だということもありますから、そういった所がやはり国民生活に直結する危機だということは言えます。
ーーこれどのくらいまでガソリン価格は上がるとみていますか?
軽々に予測はできませんが、政府内関係者は1リットル当たり200円という可能性も有りうると想定しています。なので、そうならないための対応を、あらゆる選択肢を考えていかなければいけない、ということですね。そういう危機感をもって政府側はトリガー条項を扱うべきかどうか、検討を進めてきているのがいまの実態だと思います。
(10日19:30)
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