【独自】薬価引き下げで“赤字”ジレンマも…深刻な薬不足 最前線で何が(2023年12月6日)
薬局の薬不足。なかなか解消が進まない背後で、一体、何が起きているのでしょうか。
高松市内。メーカーと薬局をつなぐ“卸”の倉庫に200箱の医薬品が届きました。せき止めやたん切など、今や“手に入りにくい”薬の常連です。これまでは“欲しいとき”に“欲しい量”が届いていましたが、今や、メーカーから“配給”される形になっています。
若松薬品・営業担当者:「『今月は、この数量でやってください』と、こちらの要求を聞かずに送ってくる。こちらの希望数が届くことの方が少ない」
しかも、この配給は月1回。取引先である700軒の薬局に振り分けるのも一筋縄ではいきません。
若松薬品・営業担当者:「社内でけんかになる。『なんで〇〇の担当先には、こんなについてるんや』とか『うちの所、もっと必要なんやけど』っていう。各担当は、やっぱり得意先に持って行きたいので、そういうのを防ぐためにも、公平に割り当てをしている」
届いた薬は、すぐさま薬局へ。たん切薬は希望の4分の1しか届けられませんでした。
元気えむ薬局:「どっと入ってくるのは、(年内)最後。それで年末年始。また風邪のシーズンに入っていく。この先、めちゃくちゃ不安」
製薬会社の不祥事が発端で始まった“薬不足”。3年近く経った今でも、改善の兆しは見えていません。政府は、これまで何度も増産を要請しています。ただ、メーカー側にも増産できないワケがあります。
大手製薬会社で製造に携わる男性が、匿名を条件にこう話しました。
大手製薬会社の製造担当者:「現場では、特に高度人材の方が不足している。医薬品というのは、国に定められた製造手順・試験手順に従い、製造している。順守できなかっただけで、製品は回収になる。GMP(適正製造基準)に熟知して安定して回せる方が求められている」
状況を、さらに悪化させているのが、低くなりすぎている“薬価”だといいます。
大手製薬会社・製造担当者:「今まで2年に1度の薬価改定だったのが、毎年になり、薬価の下落スピードが2倍近くになり、採算性が急速に悪化した。(人材を)採用できないという状態に)
“薬価”とは、政府が毎年決める薬の価格で、近年、“引き下げ”傾向が続いています。現在、不足している薬の6割が単価10円を切る安さです。増産や設備投資をするにも、赤字になりかねない状況だといいます。
6日に開かれた厚生労働省の専門部会では、業界団体から、薬価の引き上げを求める声が上がりました。
医薬品卸関係者:「当たり前に薬が届いていたのが、メーカーが不採算で製造ができなくなるギリギリのところにきている」
一方で、膨らみ続ける社会保障費を抑制するために薬価の引き下げを求められている事情もあります。
専門家は、こう話します。
神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授:「社会保障費のコントロールと、(薬の)安定供給と同時達成は難しい。安定供給が必要なものは薬価を引き上げる。あるいは、薬価が下がらないよう下支えをする。品目ごとのメリハリを付けた薬価制度の議論が必要」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
コメントを書く