港町・真鶴町民「派閥争いにウンザリ」 リコール成立で町長不在の“異常事態”(2023年9月25日)

港町・真鶴町民「派閥争いにウンザリ」 リコール成立で町長不在の“異常事態”(2023年9月25日)

港町・真鶴町民「派閥争いにウンザリ」 リコール成立で町長不在の“異常事態”(2023年9月25日)

 風光明媚な港町が今、大きく揺れています。24日に行われた住民投票で神奈川県真鶴町の町長へのリコールが成立。これによって失職に追い込まれるという「異例の事態」になっています。この背景には長年、町を二分してきた派閥争いが関係しているようです。

■17年ぶり“異例事態” 町長失職

 取材に応じたのは、24日まで神奈川県真鶴町の町長だった松本一彦氏。

 真鶴町 松本一彦前町長:「毎日モヤモヤというか、寝ても覚めてもというか。何もなくなって肩の荷が下りた」

 相模湾に面した風光明媚な港町・真鶴町。名産は養殖に成功したカキ「鶴宝」です。およそ6700人が暮らす港町を揺るがせたのが24日に行われた住民投票。町長のリコール「解職請求」の賛否が問われたのです。結果は賛成票が6割を超えて松本町長は失職。町長のリコールは神奈川で17年ぶりの異例の事態になりました。

 真鶴町 松本一彦前町長:「(Q.住民投票の結果をどう捉える?)悔しくなかったと言えば嘘になる。本当に色んな悔しい思いも当然あった。ただ情勢を考えると厳しいなというのもあった」

 リコールの署名活動に動いた反町長派の代表は。

 真鶴の未来をつくる会 青木巌会長:「町民の民意が出たわけだが、町民の間で分断されているとか混乱が起きているとかではなく、将来、未来に向かって真鶴町民が一つにならなければいけない」

■発端は選挙人名簿の不正コピー

 一体、町に何があったのでしょうか。騒動のきっかけが町長の不正でした。

 神奈川・真鶴町 松本一彦氏(当時町長):「選挙人名簿の流出をさせてしまったのは私です」

 松本氏は町の職員だった3年前、町役場から有権者およそ6600人分の選挙人名簿を無断でコピーして持ち出しました。名簿には氏名や住所に加え、有権者が期日前投票をしたか当日に投票したかなどが記されていました。そして、松本氏は2020年に当選した町長選で名簿の情報をもとに有権者にはがきを送るなどの選挙活動を行っていました。

 不正が発覚したのは当選からおよそ1年後。町長を辞職し、出直し選で再選を果たしたものの、町が町長を公職選挙法違反や窃盗などの疑いで刑事告発。県警が捜査する前代未聞の事態に。さらに、住民投票が行われる前、町長派と反町長派で町は真っ二つに。

■役場混乱 職員の2割が退職

 町役場も混乱に陥っていました。「民間で考えればブラック企業」。前町長の不正が発覚した後、役場の職員を対象に行われたアンケートです。町政が「混乱している」と8割を超える職員がそう回答しました。「異動の基準が不明確であり、適任とは思えない配置が多い」。役場では毎月のように人事異動がある一方で、町長に直談判した職員の希望には応じる場あたり的な人事もあったといいます。真鶴町役場では、全職員の2割を超える24人が退職する事態になりました。

 移住して1カ月の女性:「遅いなと感じることはある。(行政の)手続きですね。職員の数が足らないのか」

 松本前町長の不正問題でリコールが決まった真鶴町。職員の離職が相次いだことに前町長は…。

 真鶴町 松本一彦前町長:「辞めちゃった子もたくさんいてさ、そういう判断させちゃって申し訳なかったなと思うけど、そういう子って、自分のことが全く原因じゃないとは言わないけど、そういうことを元々考えていたと思うんだよね。どうせ同じ仕事するなら給料良い方がいいし神奈川県で一番、職員安い給料だから、他のところ行けば少しでもお金多くもらえるっていうのもあるだろうし」

■“漁師困惑”役場混乱で県が管理

 こうした混乱を受け、町に委託している真鶴港の管理について来年4月以降、県が直接管理すると発表。漁師は困惑していました。

 地元の漁師:「町が放棄したのかよく分からない。前町長に聞いたが明確な答えが出なくて、何となく調整中ですとはぐらかされた。町長が変わって町政がしっかり仕事ができれば、県は(港を)町に返してくれるのではないか」

 真鶴の心を一つに。おととしの町長選で松本前町長が掲げたのは町を二分する派閥争いを終わらせることでした。

■前町長 “出馬せず” 真鶴の今後は

 真鶴町 松本一彦前町長:「私がそもそもやりたかったことは、前町長派、前々町長派で割れていたものを一つにしたいという思いで町長になったので」

 真鶴町では元町長の宇賀一章氏と、青木健氏の2人による派閥争いが長く続いてきたといいます。その後、青木氏が町長時代に部下だった松本氏が宇賀氏を破って町長に。2021年の出直し選挙でも松本氏は再選を果たしました。

 真鶴町 松本一彦前町長:「(Q.真鶴町は今後一つになる?)分からないですね。次に町長になる人がどういうふうな思いで取り組むかだと思います」

 町の人はリコールが成立し、真鶴が生まれ変わることを期待しています。

 地元の住民:「本当に馬鹿なことをしているなという印象。(選挙で)無駄遣いをして。だったらもうちょっと観光に力を入れるとか、そういう方向に使ってくれればいい」「真鶴もそれなりに移住者が増えて、すごく良い町で自然も多いし魚もおいしい」「(Q.願いをかなえてくれるリーダーが?)見つかるといい。何派とか何派とか、もううんざり」

 松本前町長は町長選に再出馬しない意向を表明。取材を進めると、No.2の副町長も不在だということが分かりました。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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