【解説】経済制裁は無意味?プーチン大統領の目標は政権転覆?
ロシアによるウクライナへの侵攻は予想外のスピードで進んでいて、「首都・キエフの陥落も近い」との見方も出てきています。ロシア側は、なぜここまで強硬な手段に出ているのでしょうか?その背景には、プーチン大統領の“野望”と“執念”が見えてきました。
■防空壕へ避難した子供「死にたくない…はやく全部終わってほしい」
25日時点で、ロシア軍はウクライナ東部、南部のクリミア半島、そして首都・キエフに近い北部などから一斉に攻撃を行っています。まさに“全方位”から攻め込んでいる形となっています。
ロシア国防省は、「ウクライナ軍の飛行場など83の軍事施設を破壊した」と発表しました。また、一部の米メディアは「キエフが数日以内に陥落するとの見通し」も報じています。
そして、犠牲者も増えています。25日までにウクライナ側は、「兵士と民間人合わせ137人が死亡、316人がけがをした」と発表しました。
ウクライナ東部・マリウポリでは24日、民家やアパートなどが甚大な被害を受けています。幼い子供を連れて、地下の防空壕へと避難した家族もいました。
避難した子供
「死にたくない… はやく全部終わってほしい」
既に、子供を含む一般の人にも影響が出ています。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、「ウクライナでは10万人以上が家を失って、避難生活を強いられている」と推測しています。
■“手詰まり”感が漂う欧米諸国 もはやできることは限られ…
こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「首都・キエフにとどまっている」と明らかにし、世界にメッセージを発信しています。
ゼレンスキー大統領
「敵は私を第1標的とし、家族を第2標的とした。国家のトップを破壊することによって、ウクライナを政治的に破壊しようとしている。私たちを今助けなければ、次はあなたたちに戦争が降りかかる」
ゼレンスキー大統領はこのように述べ、各国首脳に支援を呼びかけています。ただ、欧米諸国としては、もはやできることは限られていて、“手詰まり”感が漂っています。
欧米30か国が加盟するNATO(=北大西洋条約機構)は、加盟国ではないウクライナに対して「派兵は行わない考え」を強調しています。
■先進7カ国(G7)や欧米諸国は経済制裁を強化
先進7カ国(G7)や欧米諸国は、経済制裁を強化しています。イギリスは、「全てのロシアの銀行を、イギリスの金融システムから排除する」としています。
また、アメリカは、ロシアに対する追加制裁としてハイテク製品の輸出を規制しました。これが、軍需産業や宇宙開発に打撃を与えることなどが狙いです。さらに、大手銀行や、プーチン大統領に近いエリート層と、その家族に対しても制裁を発表しました。
■バイデン大統領は・・・記者の質問に
一連の経済制裁によって、ロシアの態度は変わる可能性はあるのでしょうか?しかし、経済制裁は「生ぬるい」との声が大多数です。24日、米・ワシントンで行われたバイデン大統領の会見では、記者から問い詰められる場面がありました。
――「プーチン氏個人への制裁も選択肢だ」 と言っていましたよね ?
アメリカ バイデン大統領
「もちろんハッタリではない」
――プーチン大統領を制裁しますか?
アメリカ バイデン大統領
「はい」
「プーチン大統領個人になぜすぐに制裁をしないのだ」と記者から問い詰められましたが、バイデン大統領は言葉に詰まってしまい、オプションは「温存している」と答えるのがやっとでした。
■“欧米警告”核をちらつかせるプーチン大統領
一連のロシアへの制裁について、プーチン大統領はどう受け止めているのでしょうか。
プーチン大統領は24日、ロシアの大手企業経営者らと会談し、「ロシアは制裁に対して、準備を行ってきた」としています。つまり、「制裁による経済への影響はない」と強調しています。少なくとも「現状の制裁では、あまり効果はない」という見方が大勢です。
プーチン大統領は、「ロシアは世界で最も強力な核保有国だ。われわれへの直接攻撃は、潜在的な侵略者に敗北と壊滅的な結果をもたらすことに間違いない」と、核をちらつかせて、欧米諸国に警告しています。
■プーチン大統領“野望”の裏 専門家「旧ソ連圏をロシア中心でまとめ直したい」
ここまで強気に出るプーチン大統領の狙いは、一体何でしょうか。東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠氏は、「プーチン氏の当面の目標は、ウクライナの政権転覆。つまり、ゼレンスキー政権を倒すことにある。その上で、『旧ソ連圏をロシア中心でまとめ直したい』と思っている」といいます。
また、「こうした野望の背景には、『欧米中心に塗り変わってしまったヨーロッパの秩序を何とかひっくり返してやりたい』という強い気持ち。また、『弱くなったロシアを大統領として、何とかしなければ』という思いがある」とも話しました。
さらに、「『自分は、ロシアにとって何がいいか分かっている』という“強い信念”と“愛国心”があって、そのためには、どんなことでもやるという認識なのだろう」と分析しています。
■“軍事侵攻”ロシア国民の受け止めは
では、ロシア国民は、今回の軍事侵攻をどう受け止めているのでしょうか。
取材した限りでは、取材を受けてくれた人のおおむねが賛成で、中には「今回の軍事行動は遅すぎたくらいだ」と話す市民がいる一方、取材を拒否された人も多くいました。その中には、賛成・反対より、制裁による市民生活への影響を心配する声が聞かれました。
また、今回の軍事行動に対する世論調査の発表は、まだありません。しかし、ロシアがウクライナ東部の2つの地域を独立承認したことに対しては、「ロシア国民の70%以上が賛成している」というデータは発表されています。
ロシアの国営放送では、ロシア軍の被害状況については全く報道されていません。しかし、SNS等では、“ウクライナが攻撃される映像”が拡散しています。
24日夜には「ウクライナに対する軍事侵攻に対して抗議しよう」という呼びかけが拡散し、モスクワ市内の広場などに多くの市民が集まりました。
当局はデモの開催を認めておらず、大きな衝突はありませんでしたが、人権団体によると、「モスクワ市内で約1100人、ロシア全土で約1700人が拘束された」ということです。
ロシアメディアなどでは、「強攻策に出る」という情報はあまり伝わってきませんでした。市民の中には、「いずれ、こういうことにはなるだろう」と言う声は聞かれていました。
◇
多くの専門家も「予想外だ」と驚くほどのスピードと規模で進む、今回の軍事侵攻。プーチン大統領をここまで突き動かす原動力を、欧米諸国が読み誤ったのだとしたら、その代償はウクライナだけではなく、世界各国に重くのしかかってきます。
(2022年2月25日放送「news every.」より)
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