ミャンマー国軍クーデターから2年半 “深刻な教育実態”が…タイへ避難の家族を取材(2023年8月28日)
ミャンマー国軍によるクーデターから2年半、今も国内情勢は混迷を極めている。タイへ避難した家族を取材すると、ミャンマーの教育について深刻な実態が見えてきた。
■クーデター後の弾圧 タイへ逃れる人々
ミャンマーと国境を接するタイのターク県にある教育施設で、タイの国歌をタイ語で歌っている子どもたちはミャンマー国籍だ。
2021年2月、国軍がクーデターを起こして以降、ミャンマーでは市民への弾圧や攻撃が続き、タイへ逃れる人が後を絶たない。
タイのターク県には多くのミャンマー人が避難してきていて、その子どもたちへの支援施設が現在64カ所ある。
現地の支援団体によると、およそ1万5000人の子どもたちが教育支援を受けているという。
教育支援を受けるミャンマー人:「勉強は楽しいし、問題はありませんが、タイ語の授業はとても難しいです」
■ミャンマーの教育危機 教師の声を取材
タイで教育支援が行われる一方で、深刻な問題となっているのがミャンマー国内の就学率の低下だ。
先月、世界銀行が公表した報告書によると、6歳から22歳までの就学率が2017年と今年を比較すると、およそ12ポイント低下している。
ミャンマーが直面する“教育の危機”。ANN取材班は、ミャンマーで教師として働いていた女性に話を聞くことができた。
タイに逃れてきたミャンマーの教師:「ミャンマーでは抗議活動に参加しているとか、軍の教育を受けさせたくないとか、様々な理由で多くの子どもたちが学校に通えていません。教師が少なく、生徒たちを十分に管理できないとも言われています。あってはならないことが、ミャンマーで起こっているんです」
女性は国軍に対する抗議活動を行ったことで、教師用の宿舎を追い出されたという。
地方で避難生活を送っていたが、いつ逮捕されるか分からない状況に思い悩み、去年、家族と共にタイへ逃れてきた。
タイに逃れてきたミャンマーの教師:「どんな障害にぶつかったとしても、自分がした選択を誇りに思っています。子どもたちも、ようやく学校に通えるようになり満足しています」
女性は現在、タイの教育支援施設で働いているが、教育の必要性を強く感じているという。
タイに逃れてきたミャンマーの教師:「子どもたちには教師が必要です。ここでは家庭で勉強を教えるような余裕はありません。ですから、学校への期待が大きいのです。彼らの教育のため、成長のため、できる限り手を差し伸べたいんです」
■教育環境の悪化 上智大名誉教授に聞く
多くのミャンマー移民が流入するタイの国境付近の学校では、環境整備が課題となっている。
ターク県の学校を運営する財団の担当者は「避難してくる子どもが増えて、教室が足りない。年齢ごとに教室を分けることが難しい」と話している。
また、同じくターク県でミャンマー人への教育支援をする団体の担当者は「ミャンマー移民の子どもたちが急増することで、タイでは教師が不足している。特に国境付近の街は治安が悪く、余計に教師を確保できない」と教師不足について話している。
このまま教育環境の悪化が進むことによる影響について、ミャンマーの国内情勢に詳しい上智大学・根本敬名誉教授は「就学率低下がこのまま進むと、ミャンマー国内で低賃金の労働者が増え、国内情勢はますます悪化する。ミャンマー国軍への直接的な支援はできないので、国連など国際機関への支援金やタイなど隣国への教育支援、移民申請の入り口を広げるなど間接的な支援を続けることが重要」と指摘している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年8月28日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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