中国が日本への団体旅行解禁、ツアー申込みが急増 “爆買い”期待、京都では“観光公害”の不安も
中国から日本への団体旅行解禁を受けて、中国では旅行会社へのツアーの申し込みが急増するなど関心が高まっています。団体旅行の解禁について、関西の観光地では、期待と不安、両方の声が入り混じっています。
夏の夜空を彩る大輪の花火。１０日、和歌山県白浜町で開催された「南紀白浜花火フェスタ」ではコロナ禍で縮小していた規模を４年ぶりに戻し、約３５００発の花火が打ち上げられました。この花火を楽しんでいたのは日本人だけではなく―
中国人旅行客「中国から来ました」
会場には個人旅行で訪れたという中国人旅行客の姿も。実は白浜を訪れる中国人旅行客は増加傾向が続いていて、先月には４１００人と、コロナ禍前の２０１９年と比べ、約９割まで回復しているということです。
中国人観光客
「日本の田舎とか興味があって、見たいなと。海もきれいで海鮮もおいしい。（白浜町は）温泉も有名なので一回、来てみたいと」
以前の活気を取り戻しつつある中、１０日、さらなるインバウンド需要増加につながる発表が―。
中国政府は日本への団体旅行を約３年半ぶりに解禁すると正式に発表しました。ただし、団体観光ビザの取得には５日から１週間程度かかるということです。
ＮＮＮ上海・渡辺容代記者
「解禁を受け、さっそく中国の旅行会社のウェブサイトでは日本向けの団体旅行の募集が始まっています」
中国・上海にある旅行会社によると、大阪や京都への旅行に人気が集まっているということです。本格的に団体旅行が始まるのは９月からで、１０月の中国の大型連休・国慶節に合わせて、渡航する人が多くなる見込みです。
上海の旅行会社「春秋旅行」の副社長
「（解禁になって）とてもワクワクしてます。（１０月の）国慶節の休みは長くて、中国周辺の海外旅行にちょうどいい」
また、中国のほかの大手旅行サイトでは、取り扱う海外旅行商品の検索数が一時、２０倍以上に急増。さらに、日系の航空会社には昨日の発表以降、旅行会社などからの問い合わせが３倍近くに増えたということです。
制限前の２０１９年には日本を訪れた中国人旅行客は１０００万人近くに達していました。
本土の中国人
「大阪に行くつもりです。京都にも行って、清水寺は世界文化遺産ですよね。あとは伏見稲荷にも」
「アニメとか遊ぶところとか、食事とかいろいろあって、全部試したいです」
多くの中国人旅行客が訪れることで期待されるのが、いわゆる「爆買い」消費です。大阪・ミナミの家電量販店では期待の声が―。
エディオンなんば本店・原田誠司さん
「中国のお客様がやっぱり時計ですとか高額なものをよく買っていただけるイメージしかなかったので。それ（日本への団体旅行）が解禁されるのは本当に楽しみしかないですね」
こちらの店舗では今後、従業員の数を増やすなどの対応を検討しているということです。
京都を代表する観光地・嵐山。現在は中国以外の国や国内の観光客でにぎわいを見せています。
観光客
「経済が回るので良い」
「嵐山も、もっとにぎわっていくのではないかと思います」
コロナ禍で旅行客減少に苦しんでいた嵐山の商店街。その多くの店舗が打撃を食い止めるために数千万円もの融資を受けていて、切実な期待の声が聞かれました。
嵐山商店街・石川恵介会長
「“ゼロゼロ融資”（コロナ禍における無利子・無担保融資）の返済が始まっているので返していかないといけない。中国の方が来られて、お買い物もたくさんしてくれるので期待していますよ」
一方で、不安の声もー。
石川会長
「人が来るというのは、ゴミも落ちてくる。それによって『嵐山』というブランド力というのが下がっていく。結果として、いいお客さんが減っていって嵐山の個々の店の売り上げが減っていく可能性がある」
コロナ禍前、観光地が頭を悩ませていたのがゴミのポイ捨てや騒音などの観光公害です。商店街は『ポイ捨て禁止』などの観光マナーを呼びかける中国語の案内板を用意するなどして、対策を進めるということです。観光地が抱える課題は、ほかにも。
京都の繁華街にあるホテルでは―。
京都花ホテル・吉田良支配人
「お客様が増えてくださるのはありがたいことなんですけど、ちょっと人手が足りないということで大変かなと思います」
京都市観光協会によると、コロナ禍で一時５％台にまで落ち込んだホテルの稼働率は、今年３月には８割近くまで回復しています。その一方で、人手不足が深刻で、こちらのホテルの従業員は現在、コロナ前の半数程度しかおらず、今後、旅行客が急増することへの不安を隠せません。
吉田支配人
「ホテルによっては機械化して人手がかからないようにされていますので、当ホテルもそういうことを考えなきゃいけない」
