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“幸福の国”ブータンで 柔道を広める日本人女性 背景に…若者の深刻な「薬物犯罪」(2023年6月10日)
“幸福の国”ブータンで、柔道をする若者が増えているという。ブータンで初めて柔道教室を開いた日本人を取材。柔道を広める背景には、ブータンが抱える社会問題が関係していた。
■決め手は“教育的なものが取り入れられていたこと”
稽古に励むブータンの子どもたち。この柔道教室を開いたのは、片山理絵さん(50)だ。
片山さん:「すごく楽しんでくれてます。今いる先生にもお願いしているが、特に初心者が楽しい柔道っていうところを強調してほしいとお願いしている」
大学時代に知り合ったブータン人と2001年に結婚し、ブータンに移住。
そして、2010年に「教育に貢献したい」という夫と共に、中高一貫校を開校した。
同時に柔道教室を開いたというが、なぜ柔道だったのだろうか?
片山さん:「柔道の哲学の根底に、教育的なものが多く取り入れられていたことが決め手となりまして、柔道を紹介させていただくことになった」
■広がる“薬物犯罪” 柔道でどう撲滅しようとした?
ブータンでの柔道の普及は、ワンチュク国王の願いでもあるという。
2011年に夫妻で来日した際には、柔道の総本山である「講道館」を訪れていた。
この時、国王にはブータンで初めてとなる、初段の黒帯が贈られた。
シドニー五輪柔道 金メダル・井上康生氏:「柔道の心も理解されているうえで、柔道を国で普及させていきたいということで感銘を受けました」
そして、片山さんが柔道を広めようとしたもう一つの理由。それは、ブータンにはびこる“ある深刻な問題”だという。
片山さん:「薬物犯罪は(2010年当時から)ブータンは大きな問題でして。例えば、勉強の時に集中できるとか、不安な気持ちを忘れられるとか、そういったところから簡単に手を出してしまうんです。若者たちがそういったことをやってしまっているのが実情です」
ブータン警察によると、去年、薬物事件で逮捕された若者は人口およそ78万人に対して727人。過去5年間で最多となり、深刻な問題になっているという。
少しでも“若者の薬物問題をなくしたい”と柔道教室を始めたというが、なぜ柔道だったのだろうか。
片山さん:「柔道を学ぶことによって、礼儀作法が自然に身につくと思う。柔道を通して学んだことで、そういったこと(薬物)に手を出さない子どもになっている。柔道をしている子どもたちは、1人として薬物に手を出した子はいません、今まで」
■ブータン初“国際規格の柔道場” 日本政府が建設・支援
しかし、これまでの苦労は数えきれないという。
最初は、柔道には当たり前の「畳」もなかったため、隣国インドから運動用のマットを輸入し、屋根裏部屋で指導を始めたという。
徐々に柔道が認知され始めてからは、屋外で柔道を行う「青空教室」の活動も。今では、若者の競技人口が数百人まで増えているという。
そして、おととしの東京オリンピックに柔道教室の教え子だった、ガワン・ナムゲル選手(当時22)が招待枠で初出場した。
初戦で敗れたものの、ブータン柔道の歴史的な一歩を刻んだ。
また去年7月には、日本政府が「文化無償資金協力」で建設・支援した、ブータン初の国際規格の柔道場も完成した。
■ブータンに“柔道精神”を 日本人女性の夢
さらに、子どもたちが国際大会で“勝てる体”をつくるため「ゆでたまご」を食べていることを知った、ある日本人が支援を名乗り出た。
片山さん:「ゆでたまご先生が『それは面白い』ということで協力させてほしいと。ブータン柔道協会に、年間を通して、プロテインを供給してくれるという話まで、ゆでたまご先生がつないでくれた」
人気漫画「キン肉マン」の作者「ゆでたまご」の嶋田隆司氏だ。
ただ、ブータンは卵の値段が高いため、企業と手を組み「プロテイン」を支援している。
片山さん:「若い人たちの悩みがあると思うが、それはどうしてかというと、自分を見つめる機会がないからだと思う。そういった機会を少しずつ与えることができれば、問い掛けをして彼らが考えて言葉にする。そんな習慣が身に付いてくれれば、というのが私の願いですね」
ブータンで根付く柔道の精神。現在は、教え子のパリオリンピックでの活躍を目指して奮闘中だという。
■今後は…「柔道を通したコミュニティーを作りたい」
日本の柔道をブータンで広めている片山さんだが、今後についても話している。
片山さんは、「他の学校にも柔道教室を開いたり、誰でも参加できる青空教室の活動を行うことで、柔道を通したコミュニティーを作ることに力を入れていきたい」といい、「地域の子どもたちが変わっていかないと社会は変わらない」と話している。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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