【G7広島サミット】「被爆の実相」表現さえアメリカ側は反発 “特別な文書”めぐる現実…

【G7広島サミット】「被爆の実相」表現さえアメリカ側は反発  “特別な文書”めぐる現実…

【G7広島サミット】「被爆の実相」表現さえアメリカ側は反発 “特別な文書”めぐる現実…

19日に広島で始まるG7(=主要7か国首脳会議)の焦点の1つは「核なき世界」です。岸田首相は核軍縮について、特別な文書でまとめることにしています。ただ、日米の間でさえ認識の違いがあるといった現実もあります。

■「透明性向上」「被爆地の訪問促進」…核軍縮の“特別な文書”ポイントは

有働由美子キャスター
「G7広島サミットの焦点の1つが『核なき世界』です。岸田首相はこれを特別な文書でまとめることにしています。通常は、サミット最終日に議論した成果を各国合意のもと『首脳宣言』という形でまとめますが、今回、これとは別にすることが岸田首相のアピールでもあるわけです。17日、その文書の骨子が明らかになりました」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「文書のポイントを見ていきます。今、ロシアが核の脅威を振りかざしながらウクライナ侵攻を続けていることなどを背景に『核による威嚇や使用に反対』や、中国など『核保有国の透明性向上』『核兵器削減の継続』『核兵器不拡散体制の強化』『各国指導者の被爆地を訪問促進』が柱になるということです」

■「被爆の実相」さえアメリカ側は反発 実効性ある合意は…

小栗解説委員
「実際には、サミットでの議論を受けて文言を作っていくという作業になるわけですが、実はなかなか大変そうなんです」

有働キャスター
「どういうところが大変なんですか?」

小栗解説委員
「この文書は各国が合意しないといけないのですが、日米の間でさえ認識の違いがあるんです。例えば、首相は最近よく『被爆の実相を伝えていくことは、核軍縮に向けた取り組みの原点だ』という言い方をしています。この『被爆の実相』は“ありのままの姿”や“真実”という意味ですが、この表現にさえアメリカ政府側は反発しています」

有働キャスター
「『ありのままを伝えていく』というのは、当たり前のことに思えますが…」

小栗解説委員
「私もそう思うんですが、アメリカの中にはいまだに『原爆投下は戦争終結のため仕方なかった』『原爆を使わなければもっと多くの犠牲者を出した』という考え方をする人がいるのも事実なんです」

「そのため、“ロシアが今やっていることとは違うのだから、広島の被爆と今、『核のない世界』を目指すのを結びつける必要はない”と考えているようなんです」

有働キャスター
「立場が違うとはいえ、日本からしたら理解に苦しみますね…」

小栗解説委員
「ただ、現実としてお互いに受け入れられないものがあるということなのです。また、G7のうち、アメリカ・イギリス・フランスの3か国は核兵器を保有していて、その力を弱めるようなことはしたくないです。さらに、ロシアだけでなく中国も近年、核戦力を増強し、北朝鮮も核ミサイル開発を進めています」

「こうしたそれぞれの現実の中で、岸田首相がただ『核なき世界』という理想を掲げるだけではなく、現実的で実効性のある合意をとりまとめるために各首脳を説得できるのかが問われているわけです」

■ 「1人の人間」として感じることを…

有働キャスター
「辻さんはどう思いますか?」

辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「G7では過去の正当化についてではなく、この先に関する議論を突き詰めてほしいです。以前、私も原爆ドームや資料館を訪問して、苦しんだ方々の壮絶なリアルを改めて目の当たりにしました。各国の政府が自国の目線で論じるのは、100歩譲って致し方ないかもしれないです。しかし、実際に被害に遭ったのは、あくまで一人ひとりの『人』なので、大統領であろうが、どこの国の人であろうが、少なくとも『1人の人間』として資料館を前に何か感じることはあってほしいと思います」
(2023年5月17日放送「news zero」より)

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