大阪のIR整備計画を政府が認定 2029年開業目指す 全国初の“カジノ”に賛否 課題は山積

大阪のIR整備計画を政府が認定 2029年開業目指す 全国初の“カジノ”に賛否 課題は山積

大阪のIR整備計画を政府が認定 2029年開業目指す 全国初の“カジノ”に賛否 課題は山積

 大阪府と大阪市が政府に申請していたカジノを含む統合型リゾート=IRの整備計画が14日認定されました。全国で初めて設置が認められた「カジノ」。しかし、待ち受けるのは山積する課題です。

 岸田首相「大阪の区域整備計画の認定を行うこととなりました」

 大阪府と大阪市の申請から約1年。政府はこの日、夢洲でのIR整備計画の認定を決めました。政府の“お墨付き”は得ましたが、カジノを受け入れることになる大阪の人たちの理解は必ずしも進んでいるとはいえません。

 先日の大阪府知事選挙の出口調査では、IRに賛成の人は50%を超えているものの、反対も40%以上いました。

 大阪府民(20代女性)「賛成です。カジノができると、そこでお金使うし、そこに人が集まるから、また周りのお店とか経済が回るんじゃないかなと」
 大阪府民(70代男性)「大賛成です。あそこの島を有効利用しないともったいないでしょう。ずっとほったらかしだったから」
 大阪府民(70代男性)「反対です。ギャンブル好きな人が多くいるからそういう人が行くんじゃないかと、依存症の人が増えるんじゃないかと」

 “カジノ”への受け止めが様々なままの船出となりそうです。

 IRの建設予定地は、大阪のベイエリアにある夢洲です。大阪府と大阪市は2029年に北側の約49ヘクタールを活用し、IRを開業させる計画です。

 吉村知事(2019年)「世界規模のIRというのをぜひこの大阪、関西に誘致をしたい」

 IRとは「Integrated Resort」の頭文字で、「統合型リゾート」の意味です。カジノだけでなく国際会議場や展示場、それにホテルや劇場、ショッピングモールなどを揃え、その開発と運営は民間事業者が担う大規模なリゾート施設です。

 大阪府と大阪市の試算によりますと、売上高は年間5200億円と見込まれています。このうち売り上げの8割をカジノが占め、その収益によって採算が取りづらい施設の大部分の運営を賄います。

 開業による経済効果は1兆1400億円、大阪府と大阪市にはカジノの収益に応じて事業者から年間1060億円の納付金が入る見込みです。

 (1985年)「21世紀の大阪の新しい都心として計画が進められているテクノポートは総事業費2兆円というビッグプロジェクトです」

 夢洲は「ごみの処分場」として1977年から工事が始まり、廃棄物と建設残土で埋め立てられました。

 大阪市は1980年代から住宅地としての整備や、当時、招致を進めていた夏のオリンピックで選手村として活用を模索しましたが、いずれもとん挫。

 活用方法がなく、持て余された広大な土地は「負の遺産」と揶揄されました。しかし、2009年、転機が訪れます。

 大阪府・橋下徹知事(当時・2009年)「(夢洲・咲洲のまちづくりに)カジノが1つ大きなキーワードになってまして」

 当時、大阪府知事だった橋下徹氏がベイエリアにIRを呼び込む構想を提唱したのです。その後、大阪府と大阪市は夢洲へのIR誘致を決定。当時の政府もIRを後押ししました。

 安倍首相(当時・2014年)「この統合型リゾートは日本の成長戦略の目玉になると思います」

 2018年にはIRの整備法が成立。大阪府と大阪市は大阪・関西万博が開催される2025年までの開業を目指し、最大級の経済効果を期待していました。しかしー。

 安倍首相(当時・2020年)「緊急事態宣言を発出致します」

 新型コロナの感染拡大などで状況は一変します。
 吉村知事(2020年)「万博前の開業ということについては、断念と…」

 新型コロナの影響でスケジュール全体が遅れ、開業時期を2029年に延期せざるをえなくなりました。こうしたなかにあっても誘致に向けた準備は着実に進められました。

 吉村知事(2021年)「MGM、そしてオリックスグループが大阪の統合型リゾート、IRのパートナーに決まりました」

 事業者は公募に唯一応じていたラスベガスに本社を置くIR事業者「MGMリゾーツ・インターナショナル」と日本のオリックスの企業連合に決定。

 昨年4月、国に区域整備計画を提出し、1年経った今日14日、政府はこの計画を認定しました。

 一方で、課題も。
 住民投票求める会・山川義保事務局長「市が790億円を負担することにしたといったが、市民はですね。本当に市民生活が圧迫される可能性が大きいと思っているんです」

 夢洲では、地盤の液状化リスクや土壌汚染が明らかになっていて、大阪市は対策費として790億円を負担することになりました。

 市民団体は公費で負担することに市民の合意が得られていないとして、国に対して認定しないよう求めてきました。

 しかし、その声は届くことなく、この日政府に認定された大阪のIR計画。

 市民団体「吉村さん聞こえてますか~、府民の声を届けますよ~。夢洲にカジノはいらない!政府は承認を撤回せよ!」

 認定からわずか数時間後、大阪府の庁舎前で上がったシュプレヒコール。認定に反対する約130人が急きょ集まり、今回の認定に「ノー」を訴えました。

 課題を解決したIRを実現できるのでしょうか。新たに市長に就任した、この人はー。

 大阪市 横山英幸市長「大阪としては待ちに待った認可。万博やIRを通して、大きな発展をしていくことは今後の大阪のベイエリアの発展にもつながりますし、大阪の転換点になると思っています」

 すでに市の負担が決まっている790億円から、さらに費用が上振れするのではという懸念の声についてはー。

 横山市長「(すでに市の負担が決まっている)788億というのは、一定の根拠をもって積算した数字ですし、この数字の中で収めていくように全力で取り組む。その枠内に収めるというのは私たちの至上命題だと思っています」

 目標とされる2029年の開業まであと6年。日本初のIRの行方はどうなるのかー。

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