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【日本製リニア】初めてニューヨークで売り込み 高速鉄道は受け入れられる?『イチから解説』
<NEWSイチから解説>
日本テレビ報道局国際部のニューヨーク支局長が解説するのは「日本製リニアをアメリカに売り込み!」
日本のリニア技術をアメリカで売り込むイベントがニューヨークで初めて行われました。
日本からはわざわざJR東海の会長が参加するほどの力の入れようだったんです。
■ニューヨークーワシントン間が日本製リニアで1時間に
日本では現在東京の品川ー名古屋間を40分で結ぶべく「超伝導リニア」が2027年以降の開通を目指し、現在建設中です。
そのJR東海が照準をあわせているのがアメリカ東海岸の“北東回廊”と呼ばれるニューヨークと首都ワシントンを結ぶビジネス路線です。
ニューヨークとワシントンは東京ー名古屋間と同じぐらいの距離で新幹線「のぞみ」だと1時間40分ぐらいの時間なのですが、現在は高速鉄道「アセラ」で3時間弱かかります。
ここにリニアを通して1時間で結ぼうというのがJR東海の計画です。
現在の「アセラ」は在来線の線路を走るために、高速運転ができる区間が限られていてスピードが出せません。
本数も「のぞみ」は1時間最大12本に対して、アセラは1時間に1本程度です。
私も何度か利用しましたがよく遅れますし、乗り心地も新幹線の自由席の方が揺れや広さ、快適性全てが上回っていると思います。
実は、世界を見渡すと高速でのリニアモーターカーが実用化されていたり今後実用化される予定があるのは、上海浦東国際空港と市内を結ぶ路線と、JR東海のリニア中央新幹線ぐらいしかないんです。
リニアは新幹線よりさらに建設・維持費用がかかるためにちゃんとお金を払って乗ってくれる人がいるということが大事になるんです。
■リニア建設で採算が取れるのは「世界で2か所のみ」
JR東海が目をつけた“北東回廊”という場所には、ニューヨーク・フィラデルフィア・ボルチモア・首都ワシントンDCという名だたる大都市が連なっています。
このエリアには人口が集中していて、東京・大阪・名古屋圏を合わせたGDPを上まわるんです。
さらに、人口だけではなく、「時間を金で買う」人がいることが重要なポイントです。
JR東海によると、リニアを走らせて採算がとれる路線は世界を見渡しても東京ー大阪間とアメリカの“北東回廊”ぐらいしかなく、ここに技術協力しようということなんです。
JR東海は会長自らがニューヨークに来て、「ニューヨークとワシントンが1時間で結ばれると巨大経済圏が形成され間違いなく大きな経済効果や人々の生活にポジティブなインパクトがもたらされる」と力説しました。
さらに、航空便への波及効果についても言及し、リニアが走ることでワシントンとニューヨークの空港や機体にも余裕ができ、より需要の高い航空路線を拡充することができるとしています。
また、JR東海と協力して現地展開を行う「ノースイースト・マグレブ」のCEOは、車に比べると温室効果ガス削減につながり、新たに雇用も創出されると経済効果を訴えました。
一方で、「リニアは既存のアムトラックを補完するものだ」として、現在運行しているアムトラックへ の配慮もにじませていました。
当日は会場に地元自治体や企業関係者など95人が集まり、参加者の1人は、「これまで3時間以上かかっていたのが1時間に短縮されるのは素晴らしい」と語っていて評判は上々だったようです。
しかし、ニューヨークでも日本のリニアについて知っている人はほとんどいないので、これからどう日本の鉄道の素晴らしさをアメリカで知ってもらうかがとても重要になります。
■国土が広大なアメリカで高速鉄道は受け入れられるのか?
アメリカ国土は広大で都市間輸送には主に飛行機が使われていますが、ニューヨーク、ワシントン間以外でも人口が多い地域では高速鉄道計画が進んでいます。
<① カリフォルニア高速鉄道>
一つ目が全米最大の人口を擁する西部カリフォルニア州です。
大都市サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴなどを結ぶ高速鉄道が計画されています。
専用軌道を建設しつつ、大都市通勤圏では既存の在来線に乗り入れる方式を採用するため山形・秋田新幹線で在来線に乗り入れる新幹線を運行するJR東日本がかつて入札を検討していましたが採算性に疑問があるとして撤退しました。
カリフォルニア高速鉄道は2015年に着工されていますが運行開始は2030年頃になる見込みです。
<② フロリダ高速鉄道>
続いては、南部のフロリダ州です。
2018年からマイアミーウェストパームビーチ間で高速鉄道が運行を開始しています。
ディズニーリゾートで有名なオーランドまで2021年に延伸する予定でしたが、新型コロナウイルス流行などの影響で開業は延期となっています。
<③ テキサス高速鉄道>
そして3つめがテキサス州です。
こちらはJR東海が技術協力をして日本の新幹線方式を採用する予定になっています。
ダラスーヒューストン間のおよそ380キロを90分で結ぶ計画です。
JR東海の関係者によると日本のアメリカの安全基準の違いを乗り越えるのに大きな苦労があったということなんです。
■日米の安全基準の違いが大きなハードル
アメリカの鉄道は、踏切で自動車やトラックと衝突しても乗客の命が守られるように、先頭車両が頑丈であることが求められます。
一方、日本のフル規格新幹線は専用軌道で全線立体交差で踏み切りがなくトラックなどと衝突する恐れはありません。
そのためスピードを上げるために車体には軽いアルミが使われています。
衝突事故を前提に、図体が大きくて丈夫な車両を要求するアメリカの安全基準に対し、日本の新幹線はそもそも衝突を避ける(クラッシュアボイダンス)という哲学で設計されているんです。
日米の違いについてJR東海は数年にわたってアメリカの運行当局と協議し特例として安全基準をクリアするところまでこぎ着けたんです。
建設資金の調達が進められていたのですが、コロナの影響でペースダウン。
資金集めの体制を現在立て直しているところだということです。
■日本製リニア計画第一弾ワシントンーボルチモア間を15分に
では、アメリカに日本製のリニアが走る日はいつになるのでしょうか。
「ノースイースト・マグレブ」社によると、計画はまず第一弾として首都ワシントンからメリーランド州のボルチモア間65キロを15分でつなぐ予定だということです。こちらは2033年から2034年ごろの完成をめざして環境影響評価が現在進められています。
ニューヨークまでとなると、さらに先になりそうですが、まずは日本の鉄道の素晴らしさを短い距離でもアメリカの人たちに知ってもらうことが大事だと思います。
(2023年3月23日放送)
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