まるでカジノ?“型破り介護施設” 認知症専門医も注目「非薬物療法として意味ある」【Jの追跡】(2023年3月5日)

まるでカジノ?“型破り介護施設” 認知症専門医も注目「非薬物療法として意味ある」【Jの追跡】(2023年3月5日)

まるでカジノ?“型破り介護施設” 認知症専門医も注目「非薬物療法として意味ある」【Jの追跡】(2023年3月5日)

今、各地にその数を増やしている介護施設「ラスベガス」。その名の通り、ラスベガスのカジノをイメージした施設内では、麻雀やブラックジャックに興じる高齢者たちがいました。認知症の専門医も、その効果に注目する“型破りな介護施設”は、新たな高齢者福祉の扉を開くのか、追跡しました。

■麻雀などが“脳を活性化させるリハビリ”に

今、各地に数を増やし注目されている介護施設を知っていますか?

豪華なシャンデリアの下には、介護施設とは、とても思えないような光景がありました。

利用者(82):「ツモったんじゃない?」

麻雀に熱中する高齢者たち。さらに…。

ディーラー:「19いいですね、ナイス、ブラックジャック!」

こちらでは、ディーラーを相手に白熱する本格的なカードゲームも行われています。

ディーラー:「21ぴったり、素晴らしい」
利用者:「やっぱり普段の行いだよ」

アメリカ・ラスベガスのカジノをイメージして作られたというデイサービス施設。その名も「ラスベガス」です。

麻雀やカードゲームなどを、脳を活性化させるリハビリとして取り入れているのです。

利用者(82):「麻雀やっている時は楽しいから、頭が活性化する」

利用者(78):「これがなきゃ来ないわよ。うちの中でぼーっとテレビ観て、観てるのか観てないのか分からなくて、一日が終わる。家にいてはダメ。とっくにボケてるわよ」

週に2回利用するという田中えみこさん。ここに来るまで、麻雀パイに触れたことすらなかったそうですが、娘にすすめられて、通い始めたところ…。

田中さん:「楽しい!頭の体操になるということで。今は麻雀をやることに生きがいを感じています」

68歳の男性は、カードゲームで大勝ちしたようで上機嫌です。

利用者(68):「きょうは210万勝っています」

ゲームに勝つことで増やせるのが、疑似通貨「ベガス」。もちろん、ギャンブルではないので、換金や景品に交換することはできません。

利用者(68):「ただの紙くずみたいなお金ですけど。親が負けると、みんな拍手しちゃうし、自分たちが勝てば“勝ったー!”となる。負ければ“負けちゃった…”っていう気持ちもある」

■送迎車などこだわり…楽しみながら通える施設へ

「通い続けたくなる介護施設」をコンセプトに、生まれたというラスベガス。

 施設を立ち上げた森薫さん。そのきっかけは以前、別の介護施設で働いていた時に受けた利用者からのクレームでした。

森代表:「レクリエーションが子どもじみていることだったりとか、介護を受けていることをご近所に知られたくないという方もすごくいらっしゃったので。それを私なりに解決したら、こういうふうになった」

クレームから生まれたこだわりの一つが、施設への送迎車です。

通常はデイサービスであることが一目瞭然、こうした車体が使われることが多いですが、ハイヤーをイメージしたという黒一色のボディーとなっています。介護施設のお迎えであることを知られたくない、という声からこの形にしたといいます。

利用者(89):「やっぱり違いますね。これに憧れて入った」

そして、決してゲームを楽しむだけの施設ではないといいます。

朝、まず最初にするのは体操です。実は、体操をすることでもらえるのが、疑似通貨「ベガス」。まず健康を維持するための運動をしないと、レクリエーションに参加できないというわけです。

森代表:「“ストレッチ(体操)”に参加しないと、“ベガス”が発生しませんので。絶対、皆さん参加していただく」

他にも、食事を10種類以上のメニューから選択できるようにするなど、楽しみながら通えるデイサービスを目指しているといいます。

■ギャンブル依存症の心配は?…「1件も症例ない」

日田章さん(89)。歩行などに介助が必要とされ、3カ月前から週に1回通っています。

日田さん:「これも頭使ってやるから楽しい」

実は日田さん、およそ20年前からパーキンソン病を患う妻・紀美子さんの介護をしています。

そんな夫の週に一度の楽しみを、紀美子さんは心から歓迎しているといいます。

紀美子さん:「楽しそうです。私に手がかかるから、看病をしなくちゃいけない。だから、ラスベガスに行ってもらえるのは、私としても楽です」
日田さん:「ラスベガスは楽しいし、ストレスの解消にもなる」
紀美子さん:「女性もいますし」

全国に22軒を展開し急成長中の「ラスベガス」。とはいえ日常的にゲームをし続けることで、依存症への懸念はないのでしょうか。

森代表:「開設から5000件以上、契約しているが、1件も症例がない。(ゲームができる)元気な人が『税金で何をしているんだ』と言われることもありますが、(ラスベガスに)来ているから元気になっているし、家族の介護負担の軽減にもつながる」

高齢者医療に詳しい医師によると、「実際に使えるお金を賭けているわけではないので、囲碁や将棋に打ち込むことと本質は変わらず、依存症になるリスクは考えにくい」といいます。

■認知症専門医「継続的に通える仕組みが効果的」

利用者(68):「自分で選んで来ているわけで、そういう選択肢が老人にもたくさんあってほしい」

実際、通うようになって物忘れが減ったという利用者は少なくありません。

利用者(68):「妻に『お風呂沸かしてきて』って言われて、『いいよ』って言ったけど、風呂場の前で『どうやって沸かすんだ?』って考えている。そういうのも完全になくなった。『お風呂沸かして』って『はい、いいよ』と、改善していると自分で実感している」

40年以上、認知症など高齢者医療に携わってきた須貝佑一ドクターが注目したポイントは…。

あしかりクリニック・須貝副院長:「家ではできないようなコミュニケーションがある。3~5人が集まってコミュニケーションをとりながら、積極的に自分から参加する意識、モチベーションがかなり高い」

楽しく自発的に通い続けられる仕組みが効果的だといいます。

さらに須貝ドクターは、ゲームのメリットをこう語ります。

須貝副院長:「勝ち負け、その楽しさ。『ああ勝った』『負けた』っていう、これが混然一体となると思うんですね。このことが認知レベルを普段のレベルより上に上げる。それが連続的に行われれば、認知力は上がっていく」

須貝ドクターによると、ゲームを通し、一人では感じにくい、本気で喜んだり悔しがったりすることが、モチベーションを上げることにつながり、認知症の予防に効果的なのだといいます。

■施設に通うことで…新たな生きがい“賞状獲得”

鈴木健之さん(81)。この施設に通い始めて以降、要介護度が「4」から「3」に改善したといいます。

鈴木さん:「勝てば気持ちいいし、負ければ悔しいし。ストレスが少なくなるからね。家でずっと天井見ているよりは」

鈴木さんは5年前、大病を患い、両足を失いました。

車椅子生活を余儀なくされ、これまでは閉じこもりがちでしたが、「ラスベガス」に通うことで、新たな生きがいが生まれました。

それは、ゲームで優秀な成績を残した人に贈られる賞状を獲得することです。壁一面に、その成果が貼られています。

妻・みつ子さん:「家で私といるよりもラスベガスのほうが良いみたいです」
鈴木さん:「そりゃそうでしょうよ。やっぱり人と話できるしね」

年を重ねても、本気で夢中になれるものを見つけることが、大事なのかもしれませんね。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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