【解説】年末総括 2023年も「フェイク情報」に注意を “ウクライナ侵攻”から学ぶ
2022年を振り返り、「フェイク情報」について、日本テレビの伊佐治健報道局長が解説します。
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今年はロシアによるウクライナ侵攻という戦後史を塗り替えるニュースがありました。そこで1つ学んだこと、いわゆるフェイク情報の問題を考えてみます。この動画を覚えていますか?
──これは、ゼレンスキー大統領のニセ動画でしたね。
はい。今年3月頃、SNS上で拡散しましたが、ゼレンスキー氏がウクライナの兵士らに「降伏」を呼びかける、今考えてもあり得ない内容でした。プラットフォーム会社の「メタ」は動画を削除しましたが、ネット上にはこうしたデマが飛びかいました。
また、ロシアのガルージン前駐日大使は、キーウ近郊ブチャの民間人殺害について、ロシア軍が撤退した後に、「ウクライナ側がロシアに泥を塗るためにやった」と主張しました。
しかし衛星写真を分析した調査報道では、ロシア軍がまだ町を占領していた時期にすでに遺体があったことが確認されました。現地に入ったNNNの取材団も「外を出歩けば無差別に射撃された」という住民の証言を得ました。
──ロシアの根拠のない主張が目立っていますね。
国同士の戦いは武力だけでなく、相手国内や国際世論を動かすための情報戦も盛んです。
その点今回ロシアは劣勢に見えますが、一方で10月の国連総会では、ロシア非難の決議に40か国が賛成せず、「反対、棄権」に回りました。プーチン大統領の反欧米の主張は、実は先進国に不満を持つ途上国で一定の支持があり、SNS上のインフルエンサーによる情報拡散が一役買っている事情もあります。
──日本でもフェイク情報の拡散はあったのでしょうか?
はい。安倍元首相が銃撃され殺害された事件に関して、ツイッターでこんな発信がありました。
「安倍元首相を治療した奈良県立医大にクレーム殺到」
これが事実なのかどうか、日本テレビが取材し、「正確」から「ミスリード」、「誤り」など7段階でファクトチェックをした結果「不正確」でした。
確かにクレーム自体はあっても「記者会見の声がよく聞こえない」といったもので、治療に対する批判ではなく、また「殺到」というレベルでもありませんでした。
フェイク情報の拡散は世界的な問題です。今月来日した国連のフレミング事務次長は強い危機感を訴えました。
国連・フレミング事務次長(「SDGメディア・コンパクトフォーラム」今月5日 都内)「私たちは有害な情報環境の中で生きているのです。まだ真実とフィクションの区別がつかない人々を(フェイク情報が)まどわせています」
フレミング氏は「ウクライナ侵攻や新型コロナをめぐってウソの情報がまんえんし、とりわけ途上国に混乱を招いている。人々はこれまで以上に信頼できる情報が必要だ」と訴えています。
──私たち報道機関が正確な情報を発信する役割は重いですね。
その通りです。ウソの情報はファクトチェックによって間違いだと明確に示していく必要があります。政府が今月閣議決定した国家安全保障戦略にも偽情報対策が入りましたが、私たち自身の問題です。インターネット上の情報が正しいのか、なんらかの政治的な意図でゆがめられていないか、一人ひとりが物事を見る目を鍛えていかなければいけません。
──その点は来年も注意していきたいと思います。
(2022年12月30日放送「news every.」より)
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