【解説】共和党は下院で過半数獲得も… “トランプ離れ”? アメリカ中間選挙

【解説】共和党は下院で過半数獲得も… “トランプ離れ”? アメリカ中間選挙

【解説】共和党は下院で過半数獲得も… “トランプ離れ”? アメリカ中間選挙

アメリカ中間選挙で、日本時間17日朝、野党・共和党が議会下院で過半数の議席を獲得しました。その直前には、トランプ前大統領が「大統領選への出馬」を表明しましたが、“トランプ離れ”も進んでいるようです。

「“追及”の行方は?」
「“トランプ節”に変化」
「ファミリーに“亀裂”か」

以上の3点を詳しくお伝えします。
■政権と議会が“ねじれ”に…共和党が過半数の議席獲得
今回の中間選挙は、最終的な大勢が判明するまで、投票から1週間以上かかる異例の選挙となりました。

NBCによると、上院では与党・民主党が50議席を獲得し多数派を維持しましたが、下院では野党・共和党が、日本時間午後4時15分時点で218議席と過半数を超えていて、多数派を奪還しました。こうなりますと、バイデン政権と下院で“ねじれ”が起きることになるわけです。

“ねじれ”が起きると、どういうことになるのかというと、例えば、バイデン大統領は議会で法案などを通す際に野党・共和党の協力が必要になるため、さまざまな政策の実現が困難な状況になります。

また、民主党が主導してトランプ氏の召喚を決めた「議事堂占拠事件」を調査する特別委員会というものがありますが、今回、共和党が多数派になったことで、この特別委員会が解散させられる見通しとなりました。

■トランプ氏「アメリカと中間層に、『富と健康と成功』を取り戻す」
トランプ氏は「議事堂占拠事件」以外にも、機密文書の持ち出しや脱税疑惑などでも訴追される可能性がありますが、やはり、世界を震撼(しんかん)させた「議事堂占拠事件」を調査してきた特別委員会が解散となると、真実の追究が困難になる可能性があります。

こうした中、トランプ氏は15日、2024年の大統領選挙への出馬を正式に表明しました。

出馬表明したトランプ前大統領
「アメリカを再び偉大で輝かしい国にするために、私は今夜、大統領選への出馬を表明する。この2年間で、バイデン政権はアメリカ経済をめちゃくちゃにした。破壊しただけだ」

トランプ氏は1時間に及ぶ演説で、「バイデン政権下の2年間は、痛み、苦難、不安、そして絶望だった」などと批判を繰り返しました。また、ロシアによるウクライナ侵攻については、「私が大統領だったら問題は起きなかっただろう。バイデン大統領は、核戦争の瀬戸際に我々を導いている」と主張しました。

さらに、「自分が大統領になれば、アメリカと中間層の人々に、『富と健康と成功』を取り戻す」などと主張しました。
■メディアは演説を酷評…「『同じ料理』を温め直して出しただけ」
アメリカメディアは、今回の演説を次のように分析しています。

有力ニュースサイトの「アクシオス」は、「覇気のない、弱々しいスピーチで、お得意の『アドリブ』もかなり抑え目だった」、「中間選挙の苦戦で、側近たちがあえてトーンを抑えた原稿を用意していたのでは」と分析しています。

また、演説の内容について「ワシントンポスト」は、「これまでと『同じ料理』を温め直して出しただけだ」と、「何1つとして新しい要素はなく、しゃべっている本人でさえも退屈しているようだった」というふうに酷評しています。
さらに、「NYタイムズ」はトランプ氏の演説の全文を掲載しました。ところどころ赤く塗りつぶしています。塗りつぶされた部分というのは、「事実とは異なる間違った情報だ」と指摘しています。出馬演説でこれだけ適当なことを多く言っていた、ということなんですね。

■大口支援者たちが続々と“トランプ離れ”
さらに、アメリカメディアによると、これまでトランプ氏を金銭的に支えてきた“大口の支援者”も離れ始めているということです。

「Center for Responsive Politics」によると、前回の大統領選挙で選挙にかかった総費用は57億ドル、日本円で約8000億円と桁違いです。これは過去最高額ですが、日本とは桁違いの費用がかかるアメリカ大統領選を戦い抜くためには、必要な資金を提供してくれる支援者というのが欠かせません。

そのような中、トランプ氏に巨額の寄付をしてきた投資会社CEOは、トランプ氏の出馬会見のあとで、「共和党は世代交代すべき時に来た。次の大統領選では、新しい候補者を支援する」と述べたということです。

他にも、巨大ヘッジファンドのトップが、トランプ氏の対抗馬として取り沙汰されているフロリダ州のデサンティス知事を「応援する」と表明するなど、全米屈指の大富豪で、トランプ氏の大物支援者たちが続々と離れ始めています。

■身内からも“トランプ離れ” 長女が政治と距離を…
こうした“トランプ離れ”は、実は身内からも起きています。

長女のイバンカ氏(41)は、トランプ氏の大統領時代、補佐官を務めていました。前回の大統領選挙の時には、トランプ氏のそばにいてサポートしていた姿が印象的だったのですが、16日の出馬表明の場には姿を見せませんでした。

それだけでなく、その直後には自身のインスタグラムに「政治に関わるつもりはありません。いつも父を愛しているし、サポートしていくけど、政治以外の分野でやります」との投稿をしました。“政治とは距離を置いて、父の選挙活動には関わらない”ということを示唆しています。

   ◇

今回の中間選挙の結果を受けて、「トランプ党」とも言われていた共和党内のパワーバランスが変わり始めていることは確かなようです。

今後、さらに“脱トランプ”が進んで、次の大統領選に向けて、共和党からトランプ氏以外の候補がどれだけ名乗りを上げるのかに注目が移っています。
(2022年11月17日放送「news every.」より)

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