妻は“殺害”されたのか？“自殺”したのか？ 講談社元社員夫の最高裁弁論が開かれる｜TBS NEWS DIG
妻を殺害した罪に問われた講談社の元社員の最高裁での弁論が開かれました。「妻は自殺した」と一貫して無罪を主張してきた被告がJNNの取材に応じました。
「パパが持ってるからね」
息子に離乳食をあげる朴鐘顕被告。
「ママの佳菜子さんです」
「撮らなくていいのに」
妻の佳菜子さんとの間には4人の子どもがいました。朴被告が佳菜子さんを殺害したとして逮捕されたのは6年前。私たちとの面会や手紙のやりとりで朴被告は繰り返し無罪を訴えていました。
「私は妻を手にかけてなどいません」
一審と二審で懲役11年の判決を受け、迎えたきょうの最高裁での弁論。朴被告側は改めて無罪を主張しました。最大の争点は、佳菜子さんが自殺したのかどうかです。
講談社で「聲の形」など人気マンガを手がけ、雑誌「モーニング」の編集次長をつとめていた朴被告。
事件は2016年8月の深夜に起きました。
弁護側の主張によると、朴被告が帰宅した際、佳菜子さんは2階のリビングで包丁を握りしめていました。そして、こう話したといいます。
「子どもを殺して私も死ぬ」
佳菜子さんは生後10か月の末っ子が眠る1階の寝室に向かい、そこで2人はもみ合いになりました。検察側は朴被告が佳菜子さんを首を締め殺害し、2階の階段から突き落としたと主張。
一方、弁護側は朴被告が末っ子を抱え2階の部屋に逃げ、部屋から出た時には、佳菜子さんが階段で首をつっていたと主張しています。
遺体を司法解剖した法医学者は、JNNの取材に解剖からは“自殺”か“他殺”か判明しなかったと明かしました。
佳菜子さんを司法解剖 千葉大大学院 岩瀬博太郎 教授
「首に外力がかかって窒息したことまでは医学的にわかるけど、“他殺”なのか“自殺”なのかの判断は法医学的にできないこともある」
一審と二審が朴被告を有罪とした根拠の一つが寝室の布団に残っていた唾液混じりの血痕と失禁の痕です。
一審の東京地裁はこれを「窒息死に至る過程で生じたもの」として、「佳菜子さんは寝室で殺害された」と認定しました。
きょうの最高裁弁論で弁護側は血痕と失禁の痕は「2人がもみ合いになった際のもの」とし、「この事件に他殺を積極的に推察させる証拠は何1つない」と主張しました。
弁護側によると当時、佳菜子さんは「産後うつ」の状態にあったといいます。事件が起きた日の夕方、朴被告に送ったメールには…
佳菜子さんから朴被告へのメール
「一日一日過ごすのが精一杯です。涙がとまらない」
こうしたメールは立て続けに15通送られていたといいます。
事件現場となった自宅です。残された4人の子どもは朴被告の母親が育てています。
朴鐘顕被告の母親
「『お母さんがいたらこうしてくれた』 とか言わない、子どもらも。言ったら悪いと思ってるのか。（朴被告に）早く帰ってきてほしい、この子らのために」
拘置所で朴被告は「子どもたちからの手紙を毎日読み返している」といいます。
朴被告からの手紙
「自分のことを“罪なし”とは思えていない。きっと妻を救えた。私はあまりに愚かで、情けない夫でした」
最高裁はどのような判断を下すのか。弁論が開かれたことで一審、二審の判決が見直される可能性も出てきています。
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