ロシア「核」使用なら…横須賀、三沢に影響及ぶ可能性も(2022年10月15日)

ロシア「核」使用なら…横須賀、三沢に影響及ぶ可能性も(2022年10月15日)

ロシア「核」使用なら…横須賀、三沢に影響及ぶ可能性も(2022年10月15日)

ウクライナ情勢を巡り、「核の使用」もちらつかせるプーチン大統領ですが、それがどれほどの脅威なのか?ロシアの軍事と安全保障に詳しい小泉悠さんにお話を伺います。

高島)
まず、ロシアの「核の脅威」については、非常に高まっているなという風に私は感じるのですが、小泉さんはどのように感じていらっしゃいますか?

小泉氏)
戦争が始まった当初に比べると、脅威は高まっていると思うんですね。ロシア軍は、実際に地上で勝てていないという状況で、動員かけても1か月近く経ってますけど、まだ戦況が回復しないということですから、当然じゃあ次は「核」というオプションは視野には入ってくると思います。ただそれは、もう本当に明日にでもロシアが「核」を使うか、まだそこまで差し迫ってはいないんじゃないかというのが私の考えですね。

高島)
ロシアはかなり追い詰められている状況というように感じるんですが、そこはどうですか?

小泉氏)
完全にボロ負けしてウクライナから叩き出されるっていうところまでは行っていないんですけれども、やはりこの東部の方、それから今日は南部の方でもウクライナ軍の大攻勢が始まりましたけども、あちこちで領土を幅広く取っていくとか、また当初の目標のようにそのウクライナの政権そのものを瓦解させるとか、そういうことは明らかにできていませんので。となると、やっぱりもうここで、そろそろ手打ちを図るのか、それとも、まだまだ続けるんだとしたら何するんだ、核なんじゃないか?そういう話には当然なってきますよね。

高島)
では、そのロシアが保有する核兵器について見ていきます。

板倉)
現在、世界では1万2000発以上の核弾頭があるということなんでが、このうち、およそ半数をロシアが保有しているということなんです。数にしてみますと、5977発。このうち、射程範囲が近距離で威力が小さい核兵器、いわゆる「戦術核」と呼ばれるものが、およそ1900発保有しているという風にいわれています。小泉さん、この「戦術核」、威力が小さいとは言いますが、例えば今行われているミサイル攻撃と比べて破壊力というのはどうなんでしょうか?

小泉氏)
例えば、キエフなどに打ち込まれた巡航ミサイルの弾頭というのは、大体爆薬が500キロぐらい詰まっているんです。「戦術核」ですと一番威力が小さい、超ミニ原爆と呼ばれるようなものでも、爆薬換算して、おおよそ5000トン分ぐらいですから、1万倍ですよね。通常の「戦術核」であればもっともっと威力がありますので、やはり完全に同じ兵器として比べられないぐらいの威力ということですね。

高島)
放射能の影響も心配だと思いますが、攻撃を受けたところ、それ以外の場所への影響はどうでしょうか?

小泉氏)
空中が高い所で核爆発を起こす場合は、その瞬間に出る放射能が危ないんですけれども、比較的放射能汚染は少ないとは言われています。地表付近で大規模にいくつも核爆発を起こすということになると、巻き上げられたチリが放射能汚染されて降ってくる。いわゆる広島の「黒い雨」のようなもの、そういうことがあって広範囲を汚染するのではないかと言われますから、仮に放射能汚染がなくても使ってはいけないんですけれども、そういう不安も当然ありますよね。

高島)
柳澤さん、世界が保有している核弾頭の半数をロシアが持っているという、この現状は非常に怖いと思いますが?

柳澤)
これまで核兵器というのは、相手側を脅す、あるいは抑止するという、いわば「脅しの兵器」というイメージが強かったと思うんですよ。ところが、どんどん小型化され、威力が小さいといっても、部隊単位で叩くということになってくると、核兵器が実際に戦場で使う兵器に変わりつつあるのかなというイメージがあるんですけれども、いかがでしょうか。

小泉氏)
実は「戦術核」というのは、冷戦時代のかなり早い段階から出てきていまして、おっしゃるような脅しのために射程の長い核を持っておくというのとは別に、相手を脅しておいて全面核戦争にはならないようにしながら、ヨーロッパ、中国・ソ連の間では、激しく小型の核を使いながら戦うという発想自体はあったんですよね。実際ソ連軍はそういう軍事演習も何回もやってきました。ですので、前からあるにはあるんですけども、今回の戦争の場合は相手がウクライナなんですよね。つまりロシアが少数でも核兵器を使った場合に、果たしてNATOから報復があるかどうかということがはっきり紐づいていないという相手なので、使ってしまうのではないかという懸念が高まっています。

柳澤)
ロシアのラブロフ外相は、「国家存亡の危機」になったら使うかもしれないというふうな言い方をしていますが、真に受けるかどうかは別として、ロシアにとって「国家存亡の危機」というのはどういう状況を考えればいいでしょうか?

小泉さん)
「国家存亡の危機」の場合に核を使うというのは、2014年の「軍事ドクトリン」と、2020年の「核抑止に関する国家政策の基礎」、この2つの文書の中で共通して出てくる言葉なんですね。「国家存亡の危機」とは何かというと、これは、はっきりこれまでは規定されていなかったのですが、最近ロシアの外務省は、ロシアの領土的一体性が損なわれる場合なども含むというふうな言い方をしてきてます。ですからまさに今ウクライナ軍が領土を取り返しにかかっているわけなので、ロシアの言い方に則れば、これは「国家存亡の危機」に含まれると解釈されるわけですよね。では、そこでロシアは気軽に核を使えるかというと、やはりそれに対してNATOがどう反応するかとか、または脅しのために誰も死なないようなデモンストレーションの核爆発をやった場合というのは、ウクライナ側が「だからなんですか」といってそのまま奪還作戦を続ける可能性もあるわけですよね。だから中々そこはロシアも我々が考えるほど気軽に核を使えるわけではないと思いたいというのがひとつ。それからもうひとつは、ロシアは今回併合した領土の境界線がどこにあるかということはっきりさせていないんですよ。ですからロシアとしても、一律にザポリージャ州やヘルソン州にウクライナ軍が入ってきたらすぐに核使いますというわけではないという形にしたいのだと思いますね。

高島)
例えばもし核を使った場合、アメリカの参戦も含めて日本への影響はどうでしょうか?

小泉氏)
やはり使ってしまった場合は、NATOが「何らかの物理的な対応を取る」というふうにNATO事務総長は言っているわけですから、ロシアの核使用を罰するということになると思うんですけども。もしそこで終わらなくて、本当にNATOとロシアの直接対決となった場合、そうなるとアメリカ側もロシアの「戦略核」を一掃するような、いわゆる武装解除打撃をかける可能性があると思いますし、とすると、ロシアとしては完全に核戦力武装解除される前に、アメリカの攻撃能力を叩こうとする。とすると、例えば日本でいうと三沢や、横須賀、そういった所が叩かれる可能性がありますから、このエスカレーションは我々にとってまったく他人事ではないと思います。

サタデーステーション 10月15日OA
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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