【社会部長が解説】警察の威信かけた国葬“2万人”警備 ポイントは「想像と準備」
27日、安倍元総理大臣の国葬が東京・千代田区の日本武道館で行われています。警察の威信をかけた今回の警備。銃撃事件を受けて変わった点は? 重要ポイント「想像と準備」とは。
■今回の安倍元総理「国葬」の警備は…
まずは、今回の警備態勢を整理します。今回、警視庁は、およそ2万人態勢で警備にあたっていて、そのうちおよそ2500人は全国の警察からの応援部隊「特別派遣部隊」です。
また、大石吉彦警視総監をトップとする「最高警備本部」を設置。この「最高警備本部」は2019年の「即位の礼」や2021年の東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式で設置されていて、最高レベルの警備体制となっています。
さらに、今回は異例ともいえる厳しい交通規制も行われています。首都高の都心部では正午ごろから午後9時ごろまで広い範囲で通行どめになっていて、会場である日本武道館の周辺の一般道も通行止めとなり、一部では歩道も通れなくなっています。
■元警視総監が挙げる警備の重要ポイント「想像と準備」
警備のポイントについて、東京五輪で危機管理のトップを務めた米村敏朗元警視総監は、「想像と準備」が重要だと話しています。
というのも2か月半前、安倍元総理は至近距離から手製の銃で撃たれました。これまで、日本国内では銃撃そのものへの危機意識が低く、近距離からの銃撃については具体的に想定されていたかといえば、不十分だったという警察庁の検証結果が報告されています。
米村元警視総監によりますと、銃撃を防ぐためには、銃を持った人物に“そもそも近寄らせない”ことが必要で、そのためには警察官が現場で“不審な人物”とはどのような人物か具体的に想像した上で、少しでも不審に思った人物には徹底的に声をかけるといった、危険な芽を事前につむための準備が重要だといいます。
■社会部長が解説 「国葬」警備、ポイント押さえられた? 難しさは…
日本テレビの下川社会部長が、今回の「国葬」警備について解説します。
──警備のポイント「想像と準備」ということですが、今回はポイントを押さえた警備といえるのでしょうか?
そうですね。大きな混乱は起きておりませんし、要所要所で「想像と準備」というのは功を奏していると見えます。
例えば、一般道や歩道の長時間規制もそうですが、平日の首都高をこれほど広範囲に9時間も規制するのは異例ともいえ、まさに「想像と準備」を実践し、「とにかく危険なものは近づけない」という姿勢のひとつだと思います。
また、およそ2万人の警備体制は2000年の小渕元総理の内閣・自民党合同葬と比べると2倍の規模で、しかも警察庁長官自らが現場の警備を視察するのも異例です。警察の威信をかけた、絶対に失敗できない警備において、緊張感を持って準備しているように見えます。
この「緊張感」が警備の成功にとても重要で、安倍元総理銃撃事件の現場には、残念ながらその緊張感が少し足りなかったと感じます。
また緊張感も大事ですが、国葬会場の日本武道館は過去にも大規模警備の実績があり、公園の中で、地形的にも守りやすい。それは警備にとって追い風といえます。
──一方で今回の警備の難しさもあると思います。
警備には国民の協力が重要な後押しになります。ここまで国葬反対の空気が強くなった中で、国民生活に制限をかけることに協力を求めることは容易ではありません。
そして、安倍元総理を撃った山上容疑者のように、過激派などの組織に属さず、思想的背景もない、いわゆる「ローンウルフ」を事前に把握することの難しさも挙げられます。ネット上の知識や3Dプリンターなどで、“普通の人”が自暴自棄になるなどして突如テロ行為に走る可能性。55年前の吉田茂元総理の国葬のころにはなかった警備の難しさといえます。
「無事に終わって当たり前」なのが警備なので、まずは平穏に夜を迎えることが大前提ですが、それだけではありません。今回のオペレーションについて、足りない点、あるいは過剰な点がなかったかなどを検証し、今後の「想像と準備」につなげることが重要だと感じます。
(2022年9月27日放送「news every.」より)
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