【イチから解説】日本一短い「西九州新幹線」誕生のワケ

【イチから解説】日本一短い「西九州新幹線」誕生のワケ

【イチから解説】日本一短い「西九州新幹線」誕生のワケ

<NEWS 1から解説>

鉄道ファンでもある日本テレビ報道局社会部の田頭デスクが解説するのは「日本一短い新幹線誕生のワケ」。

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■水戸岡デザインの最新新幹線 長く乗っていたいが…約30分で「終点」

いよいよ9月23日、西九州新幹線が開通します。

新幹線「かもめ」としてデビューする車両は東海道・山陽新幹線ですでに活躍中のN700S系と同じ形式ですが、デザインが違います。

車体には毛筆体の「かもめ」の文字におしゃれな赤いラインがあしらわれています。

車内も東海道新幹線だと普通車は横5列ですが、西九州新幹線は普通車指定席なら横4列。グリーン車のようにゆったりしています。

デザインは、JR九州の「ななつ星in九州」など数々の豪華列車も手がける水戸岡鋭治さんです。

「長く乗っていたい」。そんな声もきかれそうですが、快適な新型新幹線も始発駅からわずか30分ほどで終点に着いてしまうのです。

■西九州新幹線でどう変わる?

佐賀県の武雄温泉駅と長崎県の長崎駅を結ぶ西九州新幹線はわずか66キロあまりの距離しかありません。この間に嬉野温泉、新大村、諫早の3駅が設けられます。

この距離、上越新幹線に例えると東京を出発して熊谷が終点というイメージです(約68キロ)。当然、日本一短い新幹線となります(回送線除いて)。
この始発駅の武雄温泉駅。多くの乗客にとっては「乗り換え」のための駅となります。

これまで福岡の博多から長崎まで行こうとしますとこれまでは在来線の特急一本で行くことができました。

しかしこれからはまず在来線特急で武雄温泉まで行き新幹線に乗り換えないと長崎まで行けなくなります。それでも所要時間は最速1時間50分が、30分短くなって最速1時間20分になります。
在来線がリレー 「乗り換える」新幹線は過去にも…
実は、「乗り換え」が必要な新幹線は「西九州新幹線」が初めてではありません。

同じ九州の博多と鹿児島を結ぶ九州新幹線では2004年に熊本県の新八代~鹿児島中央間が先に開業し、博多~新八代は在来線の特急が結びました。以前は3時間40分かかっていた博多~鹿児島間が2時間10分ほどとグッと短くなりました。1度乗り換えが増えても、大幅な時間短縮で乗客も増加したのです。

一方、今回の西九州新幹線開業で博多~長崎間は30分短縮され1時間20分にはなります。武雄温泉では同じホームで乗り換えはできるのですが、やはりその手間と比べ時短効果は小さいと指摘されます。

そして値段も上がります。多くの方が利用する割引きっぷだと、大体1000円前後、高くなります。

博多(福岡)~長崎は値段の安い高速バスも強力なライバルで乗り換えのないバスに乗客が流れる心配もあります。地元は開業効果に期待する一方で、果たして乗客を増やしていけるのか、観光客を呼び込めるのか懸念する声も聞かれます。

■「乗り換え」解消メド立たず…

「見切り発車」今回の西九州新幹線開業。九州新幹線とは決定的に違う問題があります。実は「乗り換え」解消のメドが立っていないのです。

2004年、九州新幹線が部分開業した際には博多への工事も始まっていて、実際、7年後には博多と鹿児島中央の全線がつながり、乗り換えなしで最短1時間19分になりました。

また新大阪からの直通列車も走るようになりました。こうした新幹線効果で鹿児島や熊本は観光客を大幅に増やすことに成功しました。

一方、「西九州新幹線」は武雄温泉駅と九州新幹線の駅がある新鳥栖駅この間わずか50キロほどの距離を新幹線で結べば、長崎から博多はもちろんのこと、そのまま関西方面に直通することもできるのだが具体的な建設計画はまだ立っていないのです新幹線の着工から開業までには用地買収なども含めて、通常10年以上の年月がかかりますので、乗り換え解消の見通しは立たないまま、文字どおりの「見切り発車」となってしまったのです。

■「夢の車両」で乗り換えなし…計画も“挫折”

なぜこのような中途半端な開業となってしまったのか、もともとは「夢の車両」とも言える画期的な車両が走る計画だったことに由来しています。
それは「フリーゲージトレイン」という線路の幅が違う新幹線と在来線を直通できる車両です。

国の責任で開発しようとしたこの試作車両。試験走行の中で、台車の耐久性に問題があるとして、2018年、西九州新幹線開業には間に合わないという結論となりました。

またJR九州も特殊な車両でコストが合わないと判断した結果、今回、乗り換え方式での開業となったのです。
■佐賀県 在来線で「十分便利」新幹線「不要」のワケ

ではなぜ最初から福岡~佐賀~長崎を全線新幹線で結ぶことは考えなかったのでしょうか?

実は、そもそも佐賀県は「新幹線はいらない」という立場であることが背景にあります。佐賀県の立場になると、県庁所在地の佐賀などでは現在の在来線でも十分便利なのです。一番需要の大きい佐賀と博多の間は現在、在来線特急で37分。新幹線になれば22分ほどになると言われますが短縮される時間は15分です。また、すでに佐賀県内には新鳥栖駅があって、関西とも直通の新幹線で結ばれています。

そして最大の問題は佐賀県の負担です。

新幹線建設に同意すれば660億円の負担を迫られるという試算もあります。さらに新幹線に並行する在来線がJRから分離され地元の第3セクターで運営せざるを得なくなることも負担です。

こうした負担は国が定めた整備新幹線の建設費負担のスキームによるものです。JRが国に払う貸付料をのぞいて建設費は国が3分の2、地方が3分の1を負担します。

この地方分は新幹線が県内の工事費に比例して各県が負担することになっています。すると佐賀県内は走行距離が長く、負担する建設費は重いのに 時間短縮効果は小さい、一方で、長崎県は距離は短く建設費の負担は軽いのに時間短縮の効果が大きいということが起きてしまうのです。

もちろん長崎県に近い佐賀県の自治体などには建設を望む声もありますが、佐賀県としてはかねて「新幹線整備を求めていない」という立場を崩していません。

■「悲願の新幹線」部分開業も見通し立たぬ「全線開通」

一方で、長崎県にとっては新幹線は長年の悲願でした。このため国は佐賀県内で在来線を活用できる、「フリーゲージトレイン」を前提に、武雄温泉から長崎の工事を始めたわけです。しかし、フリーゲージトレインの開発が断念されると、国や長崎県は、「フル規格」での建設を求めました。これに「約束が違う」と反発したのは佐賀県です。

与党も佐賀県の負担を減らす策を検討し国も佐賀県との協議を続けていますが、結論が出ないまま来週の部分開業を迎えることになったわけですね。

地元の方々のみならず鉄道ファンにとっても新しい新幹線の開業は明るい話題ですが手放しで喜べない現実もしっかり見つめる必要があると思っています。指摘してきたように建設費の問題やフリーゲージトレインの開発の頓挫など様々な経緯があるのはわかりますが、「乗り換え」が続く状況は一言で言って、「利用者不在」です。

さらに新幹線の建設費には私たちの税金も投入されています。だからこそ「ムダ遣い」とならないように費用対効果を上げる方策を早急に示すことが国には求められています。
(2022年9月17日放送)

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