【月面に基地を】汚染ガレキを封じ込めた「新技術」が宇宙開発プロジェクトに採用
福島第一原発で続く廃炉作業。水素爆発で大量に発生した「汚染したガレキ」の撤去作業で培われた技術が宇宙開発プロジェクトに採用されています。
2011年3月、水素爆発を起こした福島第一原発=通称1F。鹿島建設の三浦悟さんは出張先の四国で一報を受けました。
鹿島建設機械部 自動化施工推進室長・三浦悟さん「爆発っていうのが(テレビで)出て、一瞬、凍りました。まさかという感じ」
急きょ、三浦さんは1Fへ。初めて現場を目の当たりにします。
三浦さん「ずっと見入ってしまって、怒られた。とにかく静かなんです。人はたくさんいるのに誰もしゃべっていない、バスに乗っても誰もしゃべらない」
三浦さんは複数の重機を遠隔操作などで動かし、土木工事を進める「無人化施工」の第一人者です。日本で初めて無人化施工が行われたのは、雲仙普賢岳の災害復旧工事。当時はまだ、発展途上の技術でした。
三浦さん「あの当時、GPS(全地球測位システム)がそろっていなくて、GPSが使える時間帯はここからここまでという中で、使えるかとやっていた」
そこから20年、GPSは普及し、鹿島建設の無地化施工技術が1Fの現場で力を発揮しました。大量の汚染ガレキが次々と撤去されていきました。しかし…。
三浦さん「それを(地上に)降ろした瞬間に、影響力がデカくなる。だから早くしまわないといけない。(汚染ガレキを)降ろしっぱなしにしてはダメ。容器に入れてふたを閉めて、地下にしまうということをしないといけない」
近づくと被ばくしてしまう汚染ガレキが、現場の周辺に積みあがることに…。日中の作業を妨げないため、運搬するとすれば夜でした。放射能汚染の環境の中、どうすればいいのか…。
2012年5月、三浦さんたちがあるものの開発に乗り出します。
三浦さん「線量がある程度高いものを運ぶときに、『自動』が使えないか、『自動』でやれないかと」
しかし、原子炉建屋から保管場所までは片道約1キロ。道幅がわずか数メートルの狭い所もありました。複雑な1F構内を自動で走行し、汚染ガレキを運搬する車両など、メーカーに発注しては時間がかかり過ぎます。
三浦さん「防護服をつけて、外でつくったものをつけて、プログラムをそこでやってということをしなければいけなかった」
自分たちで既製品に新たなセンサーをつけ、機械が自らの位置を確認しながら自動で動くように改造したのです。現場で新たな技術を生み出すというかつてない挑戦でした。
三浦さん「防護服を着て、マスクをかぶって、手袋を2枚か3枚する。それはネジを回せないくらいもこもこなんです。普通、人が1分でできることが、1時間かかった。それを地道にやる」
爆発後の1Fでは、小さな事故がさらなる汚染を広げるおそれもあります。
三浦さん「決してどこかにぶつかってはいけない、決して中の施設のものを踏んではいけない」
実際のテスト走行時の映像では、改造した車両がゆっくりと進むようすが確認できます。問題となっていた道幅が狭い所も、見事、自動で通過していきます。ルートから外れそうになったらすぐに止まります。
三浦さん「遅くてもいいから、確実に行きなさいと」
三浦さんたちは何度も何度も試行錯誤を繰り返しました。そして、自動化技術による汚染ガレキの運搬は、安全に、着実にできることが証明され、現場で採用されることになったのです。
三浦さん「ほっとしたんですけど、管制室にオペレーターが全員集まり、大拍手だった。できた!できた!ってみんな拍手してくれた。それがものすごく感動的だった。1Fだから、できたんだと思います」
1Fの事故をきっかけに注目された重機の遠隔操作、自動化運転の技術。今では、ダム建設の現場にもその技術が採用されています。
さらに、舞台は地球を飛び出し、なんと月へ。JAXA(=宇宙航空研究開発機構)と協力し、月面に基地をつくるプロジェクトに採用されているのです。
三浦さん「宇宙航空研究開発機構と一緒に、月面で基地をつくろうと。月面に有人探査基地をつくろうと。1Fはものすごい大きなきっかけだったと思う」
汚染ガレキとの闘いは今も続いています。長期間の厳重な管理が求められる放射性廃棄物。新たな技術が生み出されても、その負の遺産は厳しい現実を私たちに突きつけます。
しかし、福島第一原発の事故を乗り越えようとする挑戦が、新たな未来を切り開く可能性を秘めているのです。
(2022年9月16日放送)
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