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【思い】広島出身の大学生が世界に伝えた「被爆した曽祖父の体験」 そこに込めた思いとは?
今年6月、核兵器禁止条約の締約国会議が開かれ、広島出身の大学生がスピーチしました。世界に伝えたのは「被爆した曽祖父の体験」。そこに込めた思いとは?
◇◇◇
早稲田大学2年の高垣慶太さん(20)。広島の出身です。
核の開発や使用だけでなく、威嚇なども全面的に禁止する「核兵器禁止条約」。その締約国会議に、高垣さんは「赤十字国際委員会」のユース代表として参加します。
高垣さん「今回の核禁条約の締約国会議ですごく重要なポイントだと思っているのは、若い人たちが被爆者や亡くなられた方々も含めて、その人たちの記憶や経験をどう次に伝えていくのか」
◇
2年前、高校生だった高垣さんは祖父を訪ねていました。
祖父「はい、どうぞ」
2人の曽祖父は、ともに医師でした。谷岡只雄さんは広島で、磯野駿さんは長崎で、救護にあたりました。
谷岡さんから当時の話を聞いたのが祖父・慶宣さん(当時92)です。その記憶は今も鮮明でした。
谷岡慶宣さん「焼けただれた皮膚が垂れ下がった人やら、男も女もわからない人ばっかりいて」
◇
今、「核の抑止力」を巡り、世界の分断が加速しています。
ウクライナ侵攻を続ける核大国・ロシアによる威嚇…。アメリカの「核の傘」に頼る国々は、その「抑止力」を重視する姿勢をさらに強めます。
それは、アメリカの核保有を認める日本も同じです。
高垣さん「いつも国際政治のツール(道具)になってしまうのが、核兵器だと思うんですけど、皆さんは核兵器が使われるその結末を知っていますか、想像していますかと僕は問いたい」
◇
音楽の都、オーストリアの首都ウィーン。
国連軍縮担当上級代表・中満泉事務次長「核兵器禁止条約の第1回締約国会議の開会を宣言します」
締約国会議は、オブザーバーを含む83の国と地域が出席して開幕しました。
本会議での演説前日、高垣さんは「赤十字国際委員会」の催しでスピーチに立ち、曽祖父の体験を世界に伝えます。
高垣さん「私には、被爆者の曽祖父2人がいます。彼らは広島と長崎で負傷した人々を助けた医師でした。医療用テントで負傷者の手当てをしましたが、医療従事者の数は限られており、医療器具や薬も不足していたため、すべての人を治療することはできませんでした。被爆者と会える機会は今しかありません。核兵器を廃絶するための行動を起こすのは、まさに今です」
◇
そして、いよいよ各国代表がそろう本会議での演説に臨みます。
高垣さん「広島・長崎の被爆者の中には、77年の年月がたった今もなお、被爆者として認められない人々がいます。これらの事実を踏まえ、核被害者のニーズと科学的根拠に基づく適切な被害者支援を行うべきです」
訴えたのは、被爆したにもかかわらずそれを認められず、国の支援からこぼれ落ちた人々の救済でした。
高垣さん「被爆者の一人一人の苦しみや思いこそ禁止条約の中に反映されなければならないと思っていて、その問題を提起できたことはすごく良かったんだろうと思います」
◇
2週間後…。
高垣さん「これは広島の曽祖父の被爆者手帳です」
演壇に立った高垣さんは、曽祖父の「被爆者手帳」を胸元に忍ばせていました。
高垣さん「彼ら(曽祖父たち)はうまく語ることができなかったかもしれないけど、それを語らなければ語らないほど消えていくのが彼らの記憶だと思う。曽祖父たちの話をすることこそ、僕自身だからできることなのかなと思って」
(2022年8月6日放送「news every.サタデー」より)
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