NYでも“核の脅威”に現実味…NPT再検討会議開幕へ 大越キャスターが現地取材(2022年8月1日)

NYでも“核の脅威”に現実味…NPT再検討会議開幕へ 大越キャスターが現地取材(2022年8月1日)

NYでも“核の脅威”に現実味…NPT再検討会議開幕へ 大越キャスターが現地取材(2022年8月1日)

NPT=核拡散防止条約の再検討会議が、国連本部で、まもなく7年ぶりに開かれます。

人々が核戦争の脅威に脅えた冷戦時代。ニューヨーク市内では、一時、17000を超える施設に核シェルターがあったといわれています。今はもうシェルターとして使える状態ではありません。もし“その時”が来たらどうするのか。先月、ニューヨーク市当局が、取るべき行動を指南する映像を公開しました。当局が、このような映像を出すこと自体、今の時代を象徴しています。
ニューヨーク市・アダムス市長:「私の信条は『転ばぬ先の杖』。ウクライナが攻撃を受けた直後であり、市危機管理局は、積極的に『備えよう』と呼び掛けた。差し迫った脅威がなくとも、常に備えが必要だ」

今年2月、ウクライナに全面侵攻したロシア。プーチン大統領は、事あるごとに核兵器で脅しをかけてきました。

191の国と地域が加盟するNPT。冷戦下の1970年に発効し、アメリカ、ロシアなど5カ国に核兵器の保有を認める代わりに、核軍縮へ向けた交渉に取り組むよう義務付けています。過去には「核廃絶の明確な約束」が盛り込まれた最終文書が採択されたり、具体的措置の行動計画が合意されたりしてきました。しかし、前回、2015年の再検討会議では、核兵器を持つ国と持たない国が対立。最終文書の採択は全会一致が原則のため、決裂という結果に終わりました。

そして、ロシアのウクライナ侵攻によって、これまで進んできた核軍縮の時計は逆回転しようとしています。ロシアは複数の核弾頭が搭載できる重量級ICBM(大陸間弾道ミサイル)『サルマト』を年内に実戦配備する計画です。

今後10年で、世界の核弾頭の数が、冷戦後、初めて増加に転じる可能性があるとの分析も出ています。オバマ元大統領が打ち立てた「核なき世界」の継承を目指すバイデン政権ですが、うまくはいっていません。
CIA・バーンズ長官:「プーチン氏やロシアの指導層が自暴自棄になる恐れや、ロシア軍の行き詰まりを考えると、ロシアが戦術核や小型核を使う脅威は誰も軽視できない」

長年、中立的な立場を貫いてきたスウェーデンやフィンランドもNATOへの加盟を申請しました。核による抑止を求めてのことです。

ロシアの蛮行が一変させた世界の安全保障。安保理会合を終えたウクライナのキスリツァ国連大使は、こう話します。
ウクライナ・キスリツァ国連大使:「核保有国のひとつが21世紀とは思えない。無責任で現実離れした脅しをかけている状態では、NPTがとても重要になっている。(Q.日本人として ロシアに深刻な懸念を持っている。ロシアが核兵器を使いかねない、脅威を感じているか)それは誰もが感じている。ロシア国民さえもプーチンの脅威に不安を抱いている」

NPTの再検討会議に合わせて、民間の動きも活発です。国際的な核軍縮に取り組むNGOが主催するイベントが行われました。世界中からスピーカーがリモートなどで参加して討論を行いました。

登壇者の中に日本人の男性がいました。原爆が投下されたとき生後9カ月だった佐久間邦彦さん(77)。母親に背負われ、裏山に逃げる途中、“黒い雨”も浴びたそうです。11歳のころ、肝臓や腎臓を患い、学校を休むようになりました。原爆が残した傷は、体だけではありません。上京してできた交際相手の家へ行ったときのことです。
広島県原爆被害者団体協議会・佐久間邦彦理事長:「『ちょっと待って』ということで、(交際相手が)お母さんと話をしていた。そのとき、たまたま聞こえたのが『広島の人と』とか『なぜ』とかという言葉が頭から抜けなくて、どういう意味でお母さんは言ったんだろうと思って。原爆に対する偏見ではないかと感じて、こう思われるのであれば、東京で生活するより、広島に帰った方が生活しやすいのではないかと」

悲劇を世界の誰にも経験してほしくないという一心で活動を続けてきました。
広島県原爆被害者団体協議会・佐久間邦彦理事長:「このまま、もし進んでいけば、どんどん軍拡の方向に行く。相手より有利になろうと思えば、軍備しかないわけだから。軍縮していく、話し合いをしていくことが大事だと思う。今回のNPTの役割は、そこにある」

日本の総理大臣として、初めて演説する岸田総理。7年前の会議では、外務大臣として出席していました。しかし「核なき世界」へ向けた政府の取り組みには疑問符がついています。

6月に行われた核兵器禁止条約の締約国会議。日本と同じく「核の傘」のもとにある国が、一部オブザーバーとして参加するなか、日本はそれに背を向けました。

広島県原爆被害者団体協議会・佐久間邦彦理事長:「(Q.核兵器禁止条約には加わらずにNPTの場などを通じて、核保有国への働きかけ、橋渡しによって非核化の流れをつくると。それについては理解するか) 岸田総理が本当に核兵器をなくしていこうか、しなきゃいけないと考えておられるのか。そうしなきゃなんらないという方向に行ってない。日本政府が被爆国として、最低限の義務として核兵器禁止条約に賛同する。アメリカに対して呼び掛ける方が、国民世論が動くと思う」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事