【解説】“くるみアレルギー急増” 表示を義務化へ
食物アレルギーがあり、自分が食べる物に注意しているという人は多いと思います。近年、ナッツ類によるアレルギーが急増しています。こうした中、くるみの表示が義務化される方針が決まりました。なぜ、今、“くるみアレルギー”が増えてるのでしょうか。
■食物アレルギー表示 くるみは“義務“に変更
食品表示は、お菓子などの加工食品に貼られています。加工食品には、表示が義務づけられている原材料と、推奨されている原材料があります。
表示義務とされている7品目は、エビ、カニ、小麦、そば、卵などです。表示を推奨されている21品目は、アーモンド、アワビなどです。義務、推奨の基準は、アレルギーの発症数や重篤化する人の数などを基に決められています。
消費者庁は、早くて今年度中に、表示推奨だったくるみを義務化のカテゴリーに変更するということです。エビとカニが表示義務に追加された2008年以来となります。
■“くるみアレルギー”症例 9年で10倍 に
表示義務化しなければならないほど、くるみアレルギーの症例が急増していることが明らかになりました。
消費者庁が3年ごとに行う調査報告によると、2012年度のくるみアレルギーの症例数は40件でした。2021年度は463件と、9年間で10倍以上増加しました。
さらに、2018年度と2021年度のアレルギー症例の多い順位は、卵、牛乳、小麦に次ぎ、くるみは4番目となりました。こうした事から、義務化の動きに至ったということです。
■くるみの消費量8倍に コンビニでナッツ売り場広がる
今、なぜクルミアレルギーが増えているのか。その背景にあるのは“消費量の増加”です。
農林水産省の統計によると、1985年のくるみの消費量は約7000トン、2020年は約5万6000トンと35年間で8倍に増加しました。
日本人の食生活の変化、最近の健康志向を受けて、小腹が空いた時にナッツをつまむ人も増加しています。実際、コンビニエンスストアなどでは、ナッツ売り場の面積も広がっているということです。
■くるみアレルギー アナフィラキシーショックで重篤な症状の可能性も
ただ、アレルギーのある人にとっては、要注意です。くるみアレルギーでは、どんな症状が出るのでしょうか。一般的な食物アレルギーと同じく、「じんま疹」、「下痢」、「おう吐」、「咳」などが主な症状です。
中には、全身に強い症状が急速に現れる「アナフィラキシーショック」を起こす人もいるため、重篤な場合、「呼吸困難」、「意識を失う」などのケースもあります。
昭和大学病院・小児科の今井孝成教授によると、食物アレルギーは子どもに圧倒的に多く見られるということです。
子どもは、人生で初めてその食品を食べた時に、強いアレルギー反応を起こして、その食品にアレルギーがあることが初めてわかるケースが多いということです。
■実際に“くるみアレルギー”を発症したケース では…
現在、小学4年生の長女がくるみアレルギーだという日本テレビ報道局の女性に話を聞きました。
アレルギーに気が付いたのは、長女が2歳の時だったということです。結婚式の引き出物でもらったくるみのクッキーを食べたところ、「顔の腫れ」、「おう吐」、「息苦しさ」といった症状が出たそうです。
病院に聞いたところ、アレルギー検査を勧められた結果、くるみが原因とわかったということです。
その後は、ずっと食べないように気をつけていたそうですが、7歳の時、おせんべいを食べて、再び同じような症状が出てしまったそうです。実は、このおせんべいに“落とし穴”がありました。
食べたおせんべいは、大きな袋の中に小分けの袋の状態でおせんべいが入っているという物でした。小分けの袋だけをもらって、食べてしまったということです。
外側の大袋にはアレルギー表示がありますが、小袋にはアレルギー表示がないというものだったということです。ホームページで原材料を調べると、くるみが入っていたことがわかったそうです。
■くるみの表示義務化 “落とし穴”は外食・テイクアウト
今回、くるみの表示の義務化が進みますが、まだ“落とし穴”があります。
今回の表示義務化は、容器包装された加工食品のみが対象です。外食・テイクアウトなどの中食は表示義務化の対象外となり、現時点で表示ルールはありません。
したがって、レストランなどでオーダーした料理にクルミが入っていても、見分けづらいということです。
現在、外食・テイクアウトの表示についても、検討が進められているということです。
■「食物アレルギー」とうまく付き合う方法 とは
今井教授によると、「食物アレルギーは基本的には治らない」ということです。したがって、アレルギーのある人は「うまく付き合っていくことが求められる」ということです。そのために、大事なポイントは2点あります。
1.予防 表示を確認
食品パッケージなどの表示をしっかり確認して、間違って摂取してしまうリスクを下げる。
2.対応能力を高める
どれだけ注意していても、アレルギー食物が混入してしまうことはあり得ます。いざ、症状が出た時に、素早く適切に対処できる能力を医療機関に相談しながら、本人や周りの家族が普段から習得しておく事も大切です。
(2022年6月3日放送「news every. 」より)
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