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【解説】マリウポリ”地下シェルター” ロシア軍制圧は難しい?
ウクライナでは、東部ドンバス地方で大規模攻撃が始まりました。陥落間近とされる南東部マリウポリでは製鉄所に約1000人が避難し、再び投降が呼びかけられました。ウクライナ軍が押し返す可能性はあるのでしょうか?現代軍事戦略の専門家に聞きました。
■「投降要求」再び…ロシアの狙いは
有働由美子キャスター
「(ウクライナで)新たな大規模攻撃が始まったのは東部のドンバス地方です。アメリカ国防総省は、ロシア軍が東部や南部に新たに11大隊、1万人規模の部隊を追加投入したとみています」
「そして陥落間近とされる南東部マリウポリでは、製鉄所を拠点とするウクライナ軍に対し、再び投降するよう要求し、特殊部隊が攻撃を始めたとの情報もあります。この先はどんな状況が考えられるのでしょうか」
「現代軍事戦略に詳しい、防衛省の研究機関『防衛研究所』の高橋杉雄さんにうかがいます。ロシア軍は今回また、期限を設けて投降を要求しているといいますが、これはどう捉えたらよいでしょうか?」
「1つには早くマリウポリを陥落させて、マリウポリを攻略している部隊をドンバス地方の主戦場に移動させたいということだと思います。降伏してくれれば ロシア側も損害が出ずに、しかも早く済みますから、(降伏を)勧告していると思います」
■製鉄所が「砦」に…広さと構造は
有働キャスター
「(マリウポリにある)アゾフスタリ製鉄所の地下シェルターに、市民ら1000人以上が避難しているということに非常に驚きました。どういう所なのでしょうか」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「この製鉄所が『最後の砦』のようになっています。なぜここが砦なのかというと、まず広さがあります。ヨーロッパ最大級の製鉄所で、東京ドーム235個分の、11平方キロメートルです。これだけの広さの所に、製鉄所なので頑丈な構造物が多くあります」
■「地下施設」ロシアどう攻撃?
小野委員
「そして注目したいのは、巨大な地下施設です。ここに出入りしたことのあるアゾフ連隊の司令官に聞いたところ、地下はいくつもの層になっていて、居住空間があり、菜園や診療所もあります。トンネルも張り巡らされ、『地下に街があるようだ』とも言われています」
「そのため、ロシア軍が入って制圧するのは相当難しいとみられます。さらに地下施設は空爆を受けても耐えられるほど頑丈だというので、ロシア軍としてはミサイル攻撃などもあまり意味がないと思われます」
「ロシア軍からすれば、『中から出てきてくれた方がありがたい』ということになるので、『投降しろ』と繰り返し呼びかけていると考えられます。一方でロシア軍が、より破壊力のある兵器を使う可能性もあるという見方もあります」
有働キャスター
「破壊力のある兵器をロシア軍が使うとしたら、どのようなものが考えられますか?」
高橋室長
「1つは大きな爆弾や、地下を攻撃する『バンカーバスター』と呼ばれる類の爆弾が考えられますが、それによって地下施設を一網打尽にするのは非常に難しいです」
「むしろ考えられるのは、先週使ったと言われる有毒な化学物質や化学兵器といったものを、換気施設を利用して地下に流すことが懸念されます」
■「民間人」の扱いどうなる?
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「製鉄所に籠城しているとされる市民が1000人ほどいるということで、ロシアは彼らを民間人として扱うのかどうかが気になります。戦闘員と見なすのではないかと危惧しています。より攻撃力の高い兵器を使って州自体を収めていくと思いますが、どうでしょうか?」
高橋室長
「ロシアからすると降伏勧告を2度行った上で拒否したということで、彼らは全て戦闘員であると見なすのはでないかと思います。他の戦いでも民間人を区別して守るような戦い方をしていないので、ここでは全く意に介することなく攻撃するのではないかと思います」
落合さん
「降伏勧告をした後に残っている市民を戦闘員として扱うのは、一般的には普通のことなのでしょうか?」
高橋室長
「一般的にはあまり普通ではありませんが、ロシアはシリアでもそういうことをやってきたので、ロシアにとっては普通だと思います」
■「第2段階」…ロシアの動きは?
有働キャスター
「戦争の第2段階が始まったとも言われていますが、ロシア軍はこの後、どうしようとしているのでしょうか?」
高橋室長
「ロシア軍はもともと、ドンバス地方の突き出た部分で戦っているウクライナ軍を、南からとハルキウ(方面)の北から、そしてマリウポリの攻略を完了した部隊の3方向から取り囲んで撃破しようとしていたと思いますが、現状、そうした理想的な環境が整っていません」
「つまり、マリウポリが攻略されていないので、南部から攻める部隊と北部から攻める部隊の2つしか、今、戦闘に参加できていない状況です。しかも北部からの部隊も少し押し戻されている状態にあるように見受けられます」
「ロシアとしては当初描いていた、突き出た部分を切り取る作戦を、十分な準備ができない状態で始めたように、私には見えます」
有働キャスター
「理想的な状況でないのに攻撃を始めた理由は?」
高橋室長
「おそらく5月9日の対独戦勝記念日に向けて決定的な戦果を挙げる必要があって、それを考えると、あと3週間しかないためこのタイミングで始める必要があって、その他の条件が整う前に始めざるを得なかったのではないかと考えられます」
■ウクライナ「反撃」のカギは?
有働キャスター
「ウクライナ側は押し返すことは可能なのでしょうか?」
高橋室長
「可能ではあると思います。南側は2014年以来、準備してきた戦場で、防備が固い。北側も1度押し戻しているので、ロシア側の圧力が増していますので、ここの戦いがどうなるかが大きな要素です。現段階では(ドンバス北部で)守り切れる可能性はそれほど低くないと思います」
有働キャスター
「守り切るためには、ウクライナ側に何が必要ですか?」
高橋室長
「戦車や大砲などの重装備が少しでも多く必要ですね。それが少しでも早く届くことが必要です」
有働キャスター
「そうした軍備は西側(諸国)も入れていますが、十分なのでしょうか?」
高橋室長
「数として十分かどうかは、まだ分かりません。戦車についてはある程度メドは立っていますが、重砲、大砲についてはまだまだ送る必要がおそらくあると思います。それが少しでも多く、少しでも早くウクライナ国内に届き、国内を移動させることが重要だと思います」
有働キャスター
「重要とおっしゃっていた榴弾(りゅうだん)砲はどれくらい必要でしょうか?」
高橋室長
「アメリカが供与すると決めたのは18門ですが、ウクライナは元々、数は持っていて、陸上自衛隊が持っている数より多いです。やはり多い方がいいので、100を超える規模の砲は必要ではないかと思います」
「それはアメリカ側も分かっているはずなので、とにかく送れるものがそろえば、次から次へと送っていくのではないかと思います」
(2022年4月19日「news zero」より)
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