【解説】フェイクか?情報戦過熱…ウクライナ妊婦発言に波紋

【解説】フェイクか?情報戦過熱…ウクライナ妊婦発言に波紋

【解説】フェイクか?情報戦過熱…ウクライナ妊婦発言に波紋

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、様々な情報や映像が出回り、情報戦が過熱しています。「国連安保理でのゼレンスキー氏の訴え」「ロシア側の『映像はフェイク』という主張」「病院空爆もウソ?」「取材を受けた妊婦による“矛盾した発言“」、この4つのポイントについて、詳しく解説します。

■ゼレンスキー大統領「第二次大戦以来、最もひどい戦争犯罪」露を批判
日本時間5日夜、国連の安全保障理事会が緊急会合を開催しました。ロシアによる侵攻後初めて、ウクライナのゼレンスキー大統領が安保理を舞台にオンラインで演説しました。

ウクライナ ゼレンスキー大統領
「ロシア軍は我々の国に奉仕した人々を探し出し、意図的に殺害した。家の外にいる女性らに近づき射殺し、中にいる大人も子どもも呼び出し、無差別に家族全員を殺害し、遺体を燃やした。ウクライナでは第二次世界大戦以来、最もひどい戦争犯罪が起きている」

ウクライナの首都・キーウ(キエフ)近郊のブチャなどで、ロシア軍撤退後に民間人とされる遺体が多数見つかったことなどを受け、ゼレンスキー大統領は「第二次世界大戦以来、最もひどい戦争犯罪だ」などと、ロシアを強く非難しました。

■「西側諸国はフェイクに引っかかっている」露国連大使が反論
このゼレンスキー大統領の主張に対して、ロシアのネベンジャ国連大使は真っ向から反論しました。

ネベンジャ国連大使は、「ブチャがロシア軍の支配下にあった間、1人の民間人もいかなる暴力も受けていない」とし、「西側諸国はフェイクに引っかかっている」などと述べ、世界で報道されているブチャの映像について、改めて「フェイクだ」と反論しました。

■生き残った妊婦“矛盾の発言” 過熱する情報戦
ロシア側と欧米メディアで言い分が食い違うなど、“情報戦”とも言える状況が過熱しています。その1つの例として、今、ある出来事が話題になっています。

ウクライナ南東部・マリウポリで約1か月前の3月9日、「産科・小児科病院が攻撃を受けて、子どもや妊婦らが犠牲となった」と報道され、記憶に残っている人も多いと思います。地元当局は「ロシア軍による空爆があった」と発表し、世界中から強い批判が巻き起こりました。

この時、生き残ったある妊婦の発言に、波紋が広がっています。攻撃を受けた病院の敷地に立ち尽くしていた妊婦のマリアナさん。この時、AP通信の取材に対して、マリアナさんは「私は大丈夫」などと答えました。この翌日、マリアナさんは無事に女の子を出産しました。そして、攻撃の状況について、マリアナさんは当時、次のように話していました。

AP通信の取材に対して
「病院で横になっていたら、窓ガラスや窓枠が飛び散ってきました。何がどこから飛んできたのか、わかりません。いろんなうわさがあるけど、確実なことはいえません」

■露メディア「妊婦は無理やり撮影された」 AP通信「同意の上」と反論
4月1日、ロシア系メディアがマリアナさんに対してインタビューした動画が、新たに公開されました。注目すべきなのは、ロシア系メディアのインタビューでの発言が、当時のAP通信による取材内容とは食い違っていたということです。ロシア系メディアによるインタビューに対し、マリアナさんは次のように答えました。

攻撃受けた病院にいたマリアナさん
「(当時)私は、空爆はなかった。『外にいた人も(空爆の音を)誰も聞いてない』と答えました。『撮らないで』って言ったのに」

ロシア系メディアのインタビューでは、マリアナさんは「病院は空爆を受けたのではなく、地上からの砲撃だけだった」としています。また、AP通信の記者に対して、「撮影を断ったにもかかわらず、無理やり撮影された」と主張しました。

今回、マリアナさんがいつ、どこで、どのような状況で、このインタビューを撮影されたか、詳細はわかっていません。このロシア系メディアによるインタビューが公開されたのを受けて、今度はAP通信側がすかさず反論しました。

AP通信は「病院は砲撃ではなく、空爆された。その証拠として、爆発前に航空機の音が聞こえた。病院の外に巨大なクレーターができている。現場にいた警察、兵士が『空爆があった』と証言している」と反論しました。さらに、「マリアナさんがAP通信による取材を断った」という指摘に対して、AP通信は「そういった事実はない」と反論しています。

実際にマリアナさんを取材した当時のやりとりが全て記録されている映像を、AP通信はあえて公開し、「マリアナさんが、同意の上で取材を受けている」と強く反論しました。

■国連“限界”?「ロシアを非難する決議案は採択されない」
5日夜に開催された国連の安保理で、ウクライナのゼレンスキー大統領は「平和を確保し、侵略者に圧力をかけなければならない。世界の重要な機関が機能していない」として、安保理改革の必要性を強く訴えました。安保理の会合では、各国からロシアに対する非難決議を求める声が相次いでいますが、これまでのところ、一致した対応は取れていません。当事者であるロシアが常任理事国としての「拒否権」を持っているために、「ロシアを非難する決議案は採択されない」という事態に陥っています。また、「そもそも、安保理のあり方自体に問題がある」という見方がますます強まっています。  

    ◇

本来は、戦争や紛争を解決するためにある国連という機関が、今や紛争の当事者同士がお互いの言い分をぶつけ合う場になってしまっています。今回のウクライナ危機は、そうした矛盾や限界もあぶり出しているといえそうです。
(2022年4月6日放送「news every.」より)

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