【解説】“中毒症状”は化学兵器?致死量には不十分?プーチン氏との関りは…

【解説】“中毒症状”は化学兵器?致死量には不十分?プーチン氏との関りは…

【解説】“中毒症状”は化学兵器?致死量には不十分?プーチン氏との関りは…

ロシアとウクライナの停戦協議は29日再開されていますが、依然両国の主張には大きな隔たりがあり、進展は不透明です。一方、非公式の停戦交渉後、参加者が中毒のような症状を訴えたと米メディアが報じました。誰が何のために…詳しく解説します。
■依然大きい両国の主張の隔たり…歩み寄りは?“3週間ぶり”対面の停戦協議  
日本時間29日午後4時ごろから、トルコ・イスタンブールでロシアとウクライナの代表団による公式の停戦協議が行われています。しばらくオンライン協議をしていましたが、今回は3月7日にベラルーシで行った協議以来、約3週間ぶりに対面での協議となります。

ただ、両国の主張の隔たりは依然大きいままです。ポイントの一つが「中立化」です。

ロシアはウクライナに対してNATO(北大西洋条約機構)への加盟を法的に認めさせない「中立化」を要求しています。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ウクライナの安全が守られるのであれば、中立な国でもいい」と話しました。ただ、中立化には「第三者による保証と国民投票が必要」との考えを示しています。

NATOに入らず中立な立場となれば、プーチン大統領が求めていたことなので、「応じる用意がある」というメッセージとなります。
■停戦協議に進展は?ロシアの要求にゼレンスキー大統領は…
まだ、大きな問題があります。ロシアが求める「非武装化」に対して、ゼレンスキー大統領は「拒否している」と述べています。

そして、もう一つのポイントは「クリミア半島、東部地域の主権」です。ロシアが一方的に併合したクリミア半島、一方的に国家として承認した東部の2地域を巡り、ロシアは「主権と独立を認めろ」と主張しています。

一方、ゼレンスキー大統領は「ウクライナの主権を守り、領土の全てを守るのは絶対譲れない」と主張しています。このように両国の溝は大きく、協議の進展はまだ見通せないのが実情です。
■チェルシーのオーナー・アブラモビッチ氏“中毒症状”か 「化学兵器の可能性」指摘も
このような大事な交渉を前に、気になるニュースが入ってきました。

米ウォール・ストリート・ジャーナルは、3月3日にウクライナの首都・キーウで行われた非公式停戦交渉後、参加者に中毒症状が出ていたと報道しました。この非公式停戦交渉は、両国の代表団がベラルーシやトルコで行っている公式の停戦協議とは別の物ということです。

中毒症状が出たのは、ウクライナの交渉団2人の他、ロシアの新興財閥「オリガルヒ」の1人で富豪・アブラモビッチ氏の合わせて3人と伝えられています。アブラモビッチ氏は、ロシアとウクライナをつなぐ重要な人物で、プーチン露大統領に近い富豪の1人です。また、サッカー英プレミアリーグ・チェルシーのオーナーとして知られています。

アブラモビッチ氏はロシアの軍事侵攻後、「侵攻を終わらせよう」とウクライナとロシアの仲介にあたり、ロシア大統領府とは別の裏ルートで行動し、ウクライナに関してプーチン大統領と個人的に会うこともあったと、ウォール・ストリート・ジャーナルは伝えています。

3人は交渉後、目の充血や痛みを伴う涙、顔や手の皮膚がはがれ、アブラモビッチ氏は数時間目が見えなくなるなどの症状があったといいますが、その後回復して命に別条はないということです。

調査に当たった英・調査報道グループ「ベリングキャット」によると、「専門家による検査によれば、何らかの化学兵器による毒物の可能性が高い」としています。

症状が出る前、3人はチョコレートと水しか口にしておらず、4人目のメンバーも口にしましたが、症状は出なかったということです。「致死量には不十分で、怖がらせることを意図した可能性が高い」と分析しています。チョコレートか水に毒物が使われたのかもしれないと考えられます。
■米“毒物”否定も…「何も食べたり飲んだりしないように」ウクライナ外相が皮肉
ロイター通信によると、米政府高官は「毒物ではなく、環境要因によるもの」と述べ、また、ウクライナのポドリャク大統領顧問も「多くの臆測、さまざまな陰謀論がある」と、否定的な見解を示しているということです。

そして、ウクライナのクレバ外相も「誰もがニュースや、センセーションを渇望している。ロシアとの交渉に行く人は、何も食べたり飲んだりしないように」と皮肉交じりに忠告しました。

■「不服に思う人物が交渉つぶす狙い」指摘も…ロシアが一枚岩になっていない状況?
今回の“中毒疑惑”について、専門家はどうみているのでしょうか。ロシア安全保障などが専門の防衛研究所主任研究官・山添博史氏に聞きました。

山添氏は「もし、今回の毒物疑惑が本当ならば、アブラモビッチ氏が仲介役として関わっていること。もしくは、交渉が非公式・裏ルートで行われていること。こうしたことを不服、気に入らないと思っている何者かによるもので、この停戦交渉をつぶす狙いがあったのではないか」と指摘しています。

また、山添氏は「ロシア側の人物が行った可能性があるが、プーチン大統領が関わった可能性は低いと思われる」と話し、「そもそも、この交渉はプーチン大統領なら権力ですぐにつぶせるものなので、毒を盛る必要性がない。さらに、ロシアにとっては、停戦交渉は続けるつもりなので、この動きを止める理由もない」と分析しています。

何が真実か正直わかりませんが、ロシアの内部が一枚岩になっていない状況なのかもしれません。

ロシアによる軍事侵攻から1か月が経過し各地で激しい攻防が続く中、ウクライナ南東部・マリウポリ市の当局は、これまでに5000人が死亡、建物の90%が損壊したと発表しています。犠牲者がこれ以上増えないように、29日からの停戦協議で具体的な歩み寄りがあることを期待したいです。
(2022年3月29日放送「news every.」より)

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