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3歳男児に熱湯かけ虐待死 母親の交際相手の男に懲役10年の実刑判決 求刑は懲役18年
2年前、大阪府摂津市で当時の交際相手の3歳の子どもに熱湯をかけて殺害したなどの罪に問われた男(25)に対し、大阪地裁は14日、懲役10年の実刑判決を言い渡しました。
暴行罪については起訴内容の通り認定し、争点となっていた殺人罪については「意図的に熱湯をかけたものの、殺意は認められない」として、傷害致死罪と認定しました。
無職の松原拓海被告(25)は2021年8月、大阪府摂津市のマンションで当時の交際相手の長男・新村桜利斗ちゃん(当時3)に熱湯を浴びせ続けて、全身に重いやけどを負わせて、殺害した罪に問われていました。
また、この2か月前にもクッションで桜利斗ちゃんの頭を殴って、ソファーから転倒させるなどした暴行の罪にも問われていました。
■裁判の争点は“殺人罪”が成立 するか否か
裁判で争点となったのは殺人罪が成立するかどうかでした。
これまでの裁判で、松原被告は桜利斗ちゃんの頭を殴って転倒させるなどした暴行の罪については認めたものの、殺人の罪については「桜利斗ちゃん対して熱湯を浴びせ続けた事実はありません。殺意もありません」と起訴内容を否認していました。
弁護側も「目撃者はおらず、桜利斗ちゃんにシャワーをかけ続けたという具体的な証拠は何もない。被告人は高温の湯を出した状態で桜利斗ちゃんを浴室に15分~20分程度放置したが、脱水症状になる可能性を把握していただけだ」として、殺人罪は成立せず、傷害致死罪にとどまると主張していました。
一方、検察は「桜利斗ちゃんの重いやけどは全身の90%以上におよんでいて、松原被告が殺意を持って、意図的に熱湯をかけ続けたことは明らかだ。裸の幼児に60度または75度の熱湯をかけるという危険極まりない虐待の方法をあえて選択した残酷な行為で、同種の事案の中でも類を見ない悪質さだ」などとして、懲役18年を求刑しました。
■被告が語った背景「懲らしめるため」「嫉妬心」
6月に行われた被告人質問の中で、松原被告は「(桜利斗ちゃんが)トイレトレーニングに失敗したので、懲らしめることにした。直接熱湯をかけようとは思っておらず、熱いシャワーを浴槽に向けて出しっ放しにし、サウナ状態にして浴室に閉じ込めた」などと説明しました。
そのうえで、「桜利斗ちゃんは浴室の外に出ようとしていたが、10回ほど外から鍵を閉め直すうちに反応が無くなって、浴室の扉を開けたら倒れていた」などと証言しました。
4日、審理の最後に裁判長から尋ねられた松原被告は「伝えたいことがあります」と切り出すと、当時、交際していた桜利斗ちゃんの母親に向けて書いた文章を読み上げました。
この中で、松原被告は「桜利斗ちゃんはママのことが大好きで、事件当日、私と2人で家で留守番している時もバラエティパックのチョコレートを皿に取り分けて、“これママの分”と言っていました。とてもやさしい子でした」と話しました。
そのうえで、「私はあなたの知らないところで、桜利斗ちゃんをいじめていました。3人で暮らすようになって、桜利斗ちゃんよりもあなたへの愛情が深くなって、私を見てほしいという嫉妬心があったのかもしれません。桜利斗ちゃんのことが嫌いだったわけではありませんが、自分の息子のように愛情をもって接することはできず、最低だったと思います。本当にすみませんでした」などと時折、やや声を震わせながら、読み上げました。
■判決のポイントは―
大阪地裁は14日、松原被告に懲役10年の実刑判決を言い渡しました。
坂口裕俊裁判長は暴行の罪については起訴内容の通りに認定しました。一方で、争点となっていた殺人の罪については「殺意が認められない」として、傷害致死罪と認定しました。
判決の中ではまず、「被害者が何らかの理由で浴室で意識を失ったとしても、60度や75度の熱湯に触れれば、起きるはずで、少なくとも5分以上はお湯を浴びていたことからすれば、松原被告が意図的にお湯をかけたということは認められる」と桜利斗ちゃんに松原被告が意図的に熱湯をかけた事実については認めました。
しかし、「被告人が60度または75度のお湯をかけて、被害者が死ぬと考えていたかについては疑問が残り、殺意があったとまで認められない」として、殺人罪ではなく傷害致死罪にあたると判断したということです。
そのうえで、坂口裁判長は「被告の行為に殺意がなかったとはいえ、残酷というほかなく、傷害致死罪の同種の事件の中でも重いものだ。被告人は裁判の中で信用できない供述を繰り返しており、反省の態度もみられない。前科がないとしても、主文の通りの実刑判決はやむを得ない」と指摘しました。
松原被告は青のストライプシャツに、黒のカーディガンとスラックス姿で法廷に現れました。判決が読み上げられると、時折、うなづきながら静かに耳を傾けていました。
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