悪臭虫の大群に住民苦悩廃虚水没ペンション所有者を直撃幻想的光景も #shorts

悪臭虫の大群に住民苦悩廃虚水没ペンション所有者を直撃幻想的光景も #shorts

悪臭・虫の大群に住民苦悩 廃虚“水没ペンション”所有者を直撃 幻想的光景も… #shorts

岡山県瀬戸内市に廃業したリゾート施設があり、そこは“水没ペンション”と呼ばれています。長年、水に浸かった状態で放置されていて、近隣住民が、においなどの被害を訴えています。なぜ放置されているのか、施設の所有者に話を聞きました。

■建物や車が水没 “鳥の楽園”となってる所も

瀬戸内海に面し大小の島々が点在する、岡山県瀬戸内市。特に風光明媚なリゾートエリアでもある港町の「牛窓」地区は、“日本のエーゲ海”とも称され、多くの観光客の目を楽しませています。

異国情緒あふれる牛窓地区で問題になっているのが、県道を進んでいくと突如現れる不思議な光景です。

湖のように広がる水面に、三角形の建物が浮かび上がるように建っています。木造とみられる建物は1棟だけでなく、何棟も連なっています。

辺りを歩いていると、車が水の中に沈んでました。その周りには街灯や電柱があって電線も垂れ下がってます。

敷地内にはゴルフの練習場らしき緑色のネットが掛けられたまま放置されている所もあります。目の前の建物は崩れています。

建築物があったと思われる場所は、かろうじて壁が残されているだけで、元がどのようになっていたか分からない状態になっていました。

さらに道路沿いを進んでいくと、かつて人が出入りしていたと思われる場所は水に浸かり、水面には何羽もの鳥たちの姿が見られました。木には巣が作られ、“鳥の楽園”のようになっていました。

■敷地は“東京ドーム3.6個分” ほぼすべてが水没

どれぐらいの敷地が水没しているのでしょうか。

ドローンで上空から見てみると、コバルトブルーに輝く部分は瀬戸内海。防波堤を挟んだ反対側が今回問題となっている場所です。広さはおよそ17万平方メートルといわれ、これは東京ドーム3.6個分に相当する広さで、その広大な敷地のほぼすべてが水没しているのです。

地上からは見えにくかったペンションだった建物は、全部で6棟あるのが確認できます。たまった水は茶色く濁っています。

敷地内には平屋建ての建物も…すぐ横に止められた2台のトラックは半分以上沈んでしまっています。長い時間、水に浸かっていたためか、荷台部分には水草のようなものが生えています。

防波堤部分には3階建てのやはり三角形の形をした建物も確認できます。

ところどころ水面から顔を出すように木材が積み上げられていて、その周辺を鳥たちが優雅に泳いでいました。

■取材中も…見物人続々「ジブリ感ある」

取材を進めていると、何台もの車やバイクが立ち止まり、写真を撮る観光スポットになっていました。

見物人:「不思議。なんで水没したの?とか…」「SNSで見て、近くを通り掛かったので来てみようかなと思って。想像以上にすごかったですね。パッと見て、ジブリ感が…」

水没前を知る男性:「ここ有名。結構、県外からも来る。関西のほうからとか、広島とか。こういう怪しいのがいいのかな」

この男性は水没する前にも、ここを訪れていたといいます。そこにあったのは…。

水没前を知る男性:「ペンション。30か40(軒くらい)あったんじゃないかな。結局残ったのがこれだけ。みんな壊れたから」

近所に住む住民に話を聞いてみると…。

近隣住民:「(当時は)こっち側にゴルフ場。こっち側にテニス(コート)があって。ログハウスみたいで、色々する施設だった」

■“水没ペンション”なぜできた? 過去の写真には…

この場所は、1980年ごろにオープンしたペンションが立ち並ぶリゾート地。テニスコートやゴルフなどを楽しむ人でにぎわっていたといいます。

しかし、テニスコートやゴルフ練習場があった場所もすべて水没してしまい、今はリゾート地だった面影はありません。

この様子がSNSなどで紹介されると、「水没ペンション」と話題になり、見物客が訪れるようになったといいます。

近所の住民が1枚の写真を見せてくれました。

近隣住民:「これは昔の。ここが浸かってる、塩田なんですよ」「(Q.これが塩田当時の風景?)はい。昭和20年代だよ」

海のすぐそばにあるこの場所は、古くから製塩業が行われていました。その後、土地の所有者がペンションを作り、リゾート地として開発したといいます。

しかし、近所の人によると、その後に業績が悪化し廃業。しばらくはそのままになっていたといいます。

12年前(2011年)の様子。すでに廃業しているペンション群の敷地は草に覆われていますが、まだ水没している様子はありません。

2014年にはゴルフ練習場付近は水に浸かっていますが、ペンション周辺は草が生い茂っている様子が分かります。

しかし、2022年4月の様子を見てみると一面、水没してしまっています。

元々、塩田だったこの場所は、海水を引き入れるため海よりも低い土地になっていたのです。

海水はポンプを使い、再び海に排水していましたが、近所の人によると、ポンプが故障して徐々に水がたまり始め、辺り一面が水没してしまったといいます。

■“悪臭”“大量の虫”に住民苦悩 市の対応は?

廃虚となり水没したままの状態が続くペンション群。近所の人は、あることに悩まされています。

近隣住民:「においは夏になれば、ありますよね」「(Q.どんなにおい?)どぶ臭いような」

たまった水から強烈な異臭がしてくるといいます。さらに、においよりも深刻だというのが…。

近隣住民:「小さな(網目の)網戸を通る小さい虫。かなり小さい。それと蚊。朝起きると、こういう所(玄関)も蚊が。夏の夕方、そこを歩いてみて下さい。(虫を手で払わないと)歩けないぐらい」

あまりの虫の多さにこの家では、網戸をより細かい網目のものに買い替えました。

実際に周辺を歩いていると、葉っぱの裏にビッシリと虫がいました。

住民は市に対して対策を取るよう訴えていますが、状況は何も変わらないままだといいます。インタビューに応じた瀬戸内市の武久顕也市長は…。

武久市長:「心配されている声、不安に思っていらっしゃる声、色々な声を我々も受け止めております。何か我々もできることをしていきたいと思い続けておりますけど、いかんせん私有地になるということで、財産権に対して我々がどこまでできるかというのは限界があるのが現状です」

これまでも市は土地の所有者と話し合いをしてきましたが、水没したペンション群の土地は個人が所有しているため、市ができることには限界があるといいます。

市は、土地の所有者と今後も話し合いを続けるとしています。

■なぜ放置?今後の使い道は? 土地所有者の主張

塩田の跡地に建てられ、今は水没してしまったペンション群。塩田に詳しい専門家は、たまっている水を抜いても、この土地を転用するのは難しいといいます。

たばこと塩の博物館 高梨浩樹主任学芸員:「数メートルとか高くして土地を作り直して、物流基地になったり工場になったりと転用している例はありますが、他のことにはなかなか転用しにくい。最近だとソーラーパネルを置いて、ソーラー発電所になってたりみたいなことはありますけど」

実際に“水没ペンション”の近くには、日本最大級のメガソーラーとして活用されている場所もあります。

土地の所有者は、この土地をどうしていこうとしているのでしょうか。私たちの取材に状況を話してくれました。

土地の所有者:「製塩業をやめて観光地にしたのは私の父の発想で、当時は斬新な仕事だった。その後、客足が減って廃業した」

所有者は水を抜くことを考えたものの、近くに生息する野犬の巣になることや、立ち入った人がけがをすることなどを考え、現在の状態を維持しているといいます。

さらに近所の住宅に近い部分は盛り土をして水が他の敷地に行かないよう対策も行ったといいます。今後、土地の使い道をどうしたいのか聞いてみると…。

土地の所有者:「本当は将来性のあること、例えば水素ステーションなどに使ってほしい」

企業などに土地を有効活用してもらいたいとする所有者。しかし、解決に向けた手段は見つかっていません。

今も、水没した廃虚群は広がったままです。

■行政の強制撤去できる? 弁護士「難しい」

元々この土地は塩を取り出すための塩田でしたが、1980年ごろに所有者がペンションなどを作り、リゾート地としてオープンしました。

しかし、その後に業績が悪化で廃業し、水が徐々にたまって水没しました。

この水没ペンションについて、地元・瀬戸内市の武久市長は「今の状況だと権限を行使して(建物や水などを)撤去することは難しい。所有者の考えに寄り添いながら、我々としてできることをやっていく」と話していますが、なぜ撤去ができないのか、横浜みなとみらい法律事務所の伊藤康典弁護士に伺いました。

空家対策特別措置法では、適切な管理が行われていない空き家を行政が“強制撤去”できるとされていますが、伊藤弁護士によりますと、「この法律では空き家は撤去できるが、水に浸かった施設全体は空き地の割合が大きいため空き地とみなされ、対象外となる可能性が高いということで、法律的にすべてを撤去するのは難しい」ということです。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2023年7月7日放送分より)/a>

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