大阪・吉村知事肝いりの“高校完全無償化”に「待った」の声 質が低下?不公平?教育現場の声は…
大阪府が実現を目指す高校の授業料の「完全無償化」について、教育現場などから「待った」の声が相次いでいます。なぜ、議論を呼んでいるのでしょうか。
大阪府・吉村洋文知事
「(高校)授業料は完全無償化、全員が対象、これをやります」
2期目をむかえた吉村知事が、目玉政策として推し進める高校授業料の完全無償化。その実現に向け、先月、素案が発表されました。2026年度には完全無償化を実現するとしています。ところが……。
大阪私立中高保護者連合会・松井次郎会長
「今回の案は保護者にとって聞こえのいい“無償化”の言葉ばかりが先行して、結果として子どもにとって不利益がある案となっています」
私立の高校に子どもを通わせている保護者から批判の声が。
松井会長
「授業の質の低下や特色が失われていくのではないか」
質の低下とは、一体どういうことなのでしょうか。
大阪府の私立高校の授業料は、現在60万円までは世帯年収に応じて国や大阪府、保護者が負担し、60万円を超える部分は、年収800万円未満の世帯を対象に高校側が負担していますが…。
大阪府が導入を目指す新たな制度案では、府の負担額を増やすことで、60万円未満の授業料については国と府だけで負担。一方、60万円を超える授業料については、全て高校側が負担することになります。
そうなると、何が起きてしまうのでしょうか。大阪の私立高校を取材しました。
数多くのアスリートを輩出する興國高校。充実した運動施設や特色のある授業を売りにしています。
興國高校・草島葉子校長
「フットサルの授業を、実際にプロの方に教えていただいている。あちらの白いTシャツの方ですけど、私学ならではのことだと思います」
興国高校の場合、完全無償化による負担額は、現在の約1.4倍になると試算しています。
草島校長
「(完全)無償化が導入されたら人件費、光熱費、施設設備、各種の経費削っていかないといけない。公立高校とよく似た内容になってしまうので、私学の良さが展開できなくなる。もったいないですね」
一方、懸念の声は大阪府外からもーー。
今回の完全無償化案では、大阪府内在住で、府外の私立高校に通う生徒も対象に加えるとしているため、近隣の府県の学校も不安を口にしています。
西大和学園・田野瀬太樹理事長
「大阪から来ていただく生徒は無償で安く、というそんな不公平はおかしい。教育上もよくないことだと思う」
街の子育て世代の反応はーー。
大阪府民
「中学校2年生の双子の男の子がいる。是非(完全無償化を)していただきたいなと。私自身、昔、高校に進学する時は私立高校なんて考えたこともなかったので」
奈良県民
「住んでいるところによって違うのは仕方ないけど、(補助額を)超えた分を私立高校が負担するというのは疑問」
無償化をめぐる様々な声に対し吉村知事はーー。
大阪府・吉村洋文知事
「反対の意見もしっかり受け止めて、より(多くの)関係者が合意できる形で努力をしていきたい」
近隣の府県も巻き込んでの議論となっている大阪府の高校授業料の「完全無償化」制度。
子どもたちにとってプラスになる制度となるのでしょうか。
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