被爆地・広島で語るゼレンスキー大統領「広島のような再建を夢見て」被爆者は何想う(2023年5月21日)
G7サミットに電撃参加したウクライナのゼレンスキー大統領。
きょう21日夕方、平和公園で献花をし、先ほど、会見を行いました。
ロシアから核の脅しを受ける戦時下の大統領は被爆地・広島で何を語ったのでしょうか
▽“電撃参加”ゼレンスキー氏が会見
(瀧尾春紀記者)「午後5時20分です。ウクライナのゼレンスキー大統領を乗せた車がいま、平和記念公園に入ります。」
G7広島サミット参加のため、来日しているウクライナのゼレンスキー大統領。21日午後5時すぎ、平和記念公園内の原爆資料館を視察しました。視察を終えたゼレンスキー大統領は、岸田総理と共に、原爆慰霊碑に献花を行いました。原爆慰霊碑に花を手向け、深く一礼。犠牲者に祈りを捧げました。
ロシアによる侵攻で核の脅威にさらされる中、何を思ったのでしょうか。
その後、首脳会談を行った岸田総理とゼレンスキー大統領。両首脳が会談するのは岸田総理がウクライナを訪問した今年3月以来のことです。
(岸田文雄総理大臣)「ロシアの核兵器による威嚇、ましてや使用、これはあってはなりません。核兵器のない世界に向けて取り組むうえでも平和記念公園の慰霊碑で献花を行うことは重要な意義を有する。」
(ウクライナ ゼレンスキー大統領)「広島に招待いただき大変感謝しています。今回のサミットでこれだけウクライナに対する注目をいただいたこと、ウクライナの主権、領土の統一性、ウクライナの人たちに対する支持を表明していただいたこと、一生忘れることはありません」
▽「戦争あるべきでない」ゼレンスキー氏会見
ゼレンスキー大統領は会見でこう語りました。
(ゼレンスキー大統領)「ご出席の皆さん、日本国民の皆さん、平和の価値がわかる世界中の皆さん、私は戦争によって歴史の“石にうつる影”だけが残されてもおかしくない国からやってきました。しかし、我々の英雄的な人たちは戦争そのものが影になるように歴史の方向を変えました。私は戦争というものは世界にあるべきでないと考えています。人類は今まで長い道のりを歩んできて、血が流れる対立でたくさんの命を失ってきました。ロシアが文明的なものをすべて踏みにじり、ヨーロッパ最大の原子力発電所を1年以上にわたって占領し続けていることを全世界に理解してもらうために私は広島に来たのです。」
ウクライナへの侵攻直後から、“核の威嚇”を繰り返してきたロシアのプーチン大統領。
(ロシア プーチン大統領)「現代のロシアは、ソ連が崩壊し、その国力の大半を失った後の今でも、世界で最大の核保有国の一つだ。我が国の領土保全に対する脅威があった場合、ロシアとその国民を守るために我々はあらゆる手段を使うのは言うまでもない。これははったりではない」
ことし3月には、同盟国ベラルーシに戦術核兵器を配備すると表明。すでに配備済みの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」などから発射が可能だと言います。
(ゼレンスキー大統領)「広島で起きたことと、ウクライナが破壊されていることを歴史的に比較するのは公平ではないが正直に言いたいことは、広島の破壊された写真は破壊されたバフムトを思い起こさせます。ウクライナのほかの都市も全く同じです。生きているものは何もなくすべての建物が破壊されています。どれが道でどれが建物かさえわからない状況です。まさに完全な破壊です。何もありません。人々も存在しません。今の広島は再建された街です。ウクライナも今はがれきだらけの街で、ロシアの攻撃で破壊されていない家が一つも残っていない村を一つ一つ建て直すことを夢見ています。」
▽原爆資料館を視察…被爆者の想いは
平和公園を訪れたゼレンスキー大統領。その姿は被爆者の目にどう映ったのでしょうか?
(8歳で被爆 森重昭さん(86))「実際に戦争をしている当事者、責任者ですから、自分の命がいつなくなるかもしれないなかで一生懸命頑張って、国と国民を助けようと一生懸命努力をなさってることをひしひしと感じましてね」
2016年、アメリカの現職大統領として初めて広島を訪問したオバマ氏と直接言葉を交わしました。
(8歳で被爆 森重昭さん(86))「核のない世界を実現したいというオバマ大統領の気持ち。僕もそういう二度と核が使われない世界を夢見たような感じですけれども、世の中はその逆の方向に進んでいるんじゃないかという気が今はします。」
あれから7年。ここ広島で行われているサミットで、ロシアによる核の脅威がテーマの1つになっています。
Q. 7年前と比べて核なき世界への道のりは後退?
(8歳で被爆 森重昭さん(86))「険しい。でも一番言いたいのは、でもそこで黙ってしまったら、核を使う国が出てくるかもしれないから、みんなで核を使わせないように頑張っていきたい。」
▽G7首脳&グローバルサウスと会談…中ロ反発
きのうG7は首脳声明でウクライナ問題について「ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で必要とされる限りウクライナを支援する」と強調。
中国に対しては、南シナ海などでの軍事化活動に反対し新疆ウイグル自治区などの人権状況に懸念を示しました。これに対しロシアのラブロフ外相は…
(ロシア ラブロフ外相)「広島で行われているG7で議論されていることを見てください。ロシアや中国の閉じ込めを目的としています」
中国外務省も首脳声明について「地域の安定を傷つけ、他国の発展を抑圧している」として日本などに厳正な申し入れを行ったと明らかにしました。
ゼレンスキー大統領はきょう午前、G7首脳との会合に参加。G7首脳とゼレンスキー大統領が一同に会するのは、これが初めてのことです。
(岸田文雄総理大臣)「ごらんの通りウクライナのゼレンスキー大統領にも参加していただいています。ウクライナ情勢をはじめ、国際社会が直面する平和と安定への挑戦にどのように対応すべきなのか、こうしたテーマの議論を深めたいと思います」
昼からは、G7に加えてグローバルサウスと呼ばれる招待国も含めた会合に出席。“ロシアへの制裁の抜け穴”になっていると指摘される国々に支援を呼びかけたとみられます。
▽バイデン氏と会談「F16戦闘機」供与へ
そして午後、この人とも会談を行いました。アメリカのバイデン大統領です。
(アメリカ バイデン大統領) 「あなたとあなたの仲間が来日することができ、ご一緒できて嬉しいです。そして勇敢なウクライナ国民、あなた方のロシアに対して勇敢に戦う姿は見事です。本日、アメリカからウクライナへの安全保障支援を発表します。このパッケージには、ウクライナの反撃能力を上げるための、さらなる弾薬、大砲、武装車両が含まれています」
(ゼレンスキー大統領)「新たなパッケージに感謝します。詳細は分かりませんでしたが、今年あなた方は私たちに大きなパッケージをくれました。心から感謝します。私たちは決して忘れることはありません」
Q. ゼレンスキー大統領、ロシアはバフムトを制圧したと言っていますが?
(ゼレンスキー大統領)「そうだとは思いません。しかし、あそこには何もありません。彼らはすべてを破壊したので建物もありません。悲しいことで悲劇です」
一進一退の攻防が続いてきたウクライナ東部のバフムト。ウクライナ軍の部隊が撮った映像には激しい撃ち合いの様子が映っていました。
この激戦地バフムトについて、20日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者プリゴジン氏は完全制圧を主張。
(ロシア民間軍事会社 ワグネル創設者 プリゴジン氏)「本日正午ごろ、バフムトを完全に制圧した。」
さらに、サミット出席中のゼレンスキー大統領に向けて。
(ロシア民間軍事会社 ワグネル創設者 プリゴジン氏)「バイデンに会ったら、頭のてっぺんにキスして、私からのあいさつだと伝えなさい」
一方で、ウクライナ軍のシルスキ―司令官は、20日、バフムトでの戦闘だとする映像をSNSに投稿。「1m単位の領土をめぐる戦闘が続いている」としていて、双方の主張は食い違っています。
近く始まるとみられるウクライナ軍による反転攻勢はどうなるのか。そのカギを握るのは、欧米からの兵器支援です。これまで戦車やミサイルなどが供与されてきましたが、いまゼレンスキー大統領が求めているのは、F16戦闘機。
(佐々木一真アナウンサー)「こちらにはウクライナメディアの姿もあります。今まさに岸田総理大臣とゼレンスキー大統領が会談を行っているということでウクライナメディアもこうして生中継で報じています」
ウクライナメディアがサミット出席の成果として強調したのもF16戦闘機の供与による軍事支援の強化です。
(ウクライナメディアICTV アノプチェンコ・ドミトロさん)「(F16戦闘機は)ゲームチェンジャーです。ウクライナの反撃が成功したら戦況が変わるかもしれません。いま広島で起きている最も重要なことはウクライナの飛行士を訓練し、ウクライナに戦闘機を提供することへの“GOサイン”です」
会談でバイデン大統領は、F16戦闘機の供与に向け、ウクライナ軍のパイロットの訓練をヨーロッパの同盟国と共に支援すると発表。また、弾薬や装甲車など3億7500万ドル、日本円で517億円規模の新たな軍事支援を表明しました。
(バイデン大統領)「私はゼレンスキー大統領にアメリカは同盟国らと共に、ウクライナにF16を含む第四世代戦闘機のトレーニングを始めると伝えました。空軍の強化はウクライナの防衛能力への長期にわたる貢献の一環です。」
戦時下の大統領として初めて来日。各国に追加の軍事支援や対ロシア制裁の強化を働きかけたゼレンスキー大統領。8歳で被爆した森さんは複雑な思いを抱いています。
(8歳で被爆 森重昭さん(86))「本音を言うとそこでちょっと待ってくださいと言いたい。ここで武器を渡せば、それを使って戦争をしてたくさんの人が死ぬんじゃないかと。エスカレートしたら最後は核に行きつく」
▽「体験を理解してくれたのか…」被爆者の想い
現在、核弾頭の最大の保有国は、ロシアで5977発。次はアメリカの5428発。イギリスとフランスも核保有国で、日本もアメリカの“核の傘”に守られている現実があります。
(岸田文雄総理大臣)「安全保障の上の課題に対処すること。そして同時にこの核兵器のない世界という理想に現実を近づけていくべく取り組むこと。これは決して矛盾するものではないと思います」
今回は、原爆資料館での首脳らの視察の様子やどんな展示を見たかは非公表とされるなど、核保有国への配慮が目立ちました。
13歳の時に被爆したサーロー節子さんは―。
(サーロー節子さん(91))「(小倉さんが)被爆者を代表してリーダーたちとお話をなさった。その5分間どういうお話をなさったのか。それを聞いていらしたリーダーの人たちがどういう質問をなさったのか。どういう表現をしてらっしゃるのか。
本当に我々の体験したことを理解してくださったでしょうか。その反応を私たち聞きたかったです。」
5月21日『サンデーステーション』より (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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