【思い】被災した製麺所の挑戦 土石流災害から“新メニュー”開発で復興へ

【思い】被災した製麺所の挑戦 土石流災害から“新メニュー”開発で復興へ

【思い】被災した製麺所の挑戦 土石流災害から“新メニュー”開発で復興へ

2021年7月に大規模な土石流が発生した静岡・熱海市で去年11月、「熱海復興麺」が誕生しました。この新たなラーメンを作ったのは、自らも土石流の被害を受けた製麺所の4代目です。復興のために新たに開発した商品は、いまでは熱海の“人気メニュー”になっています。

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21日、日本テレビの藤井貴彦キャスターは熱海市にある中華料理店を訪ねました。

店員
「『熱海復興麺』でございます」

試食したのは、復興への思いが込められた「熱海復興麺」です。

藤井キャスター
「ワンタンの感じがする麺ですね。平打ちといっても、ものすごく薄いんですよ。唇をスルッとなめていくように口に入っていくんですよ。その後、噛んでいくと麺からどうやらお魚の香りがする」

この熱海復興麺を作ったのは、中島秀人さん(54)です。

藤井キャスター
「麺にどんな気持ちを込めて、お仕事をなさっていこうと?」

コマツ屋製麺 中島秀人さん(54)
「麺を作っているのは、本当に復興のためという思いがものすごく強いんですね」

中島さんは、熱海市伊豆山で80年以上の歴史を持つコマツ屋製麺の4代目。妻と2人の娘がいる4人家族です。

コマツ屋製麺 中島秀人さん(54)
「何気ない毎日だったんだけど、その毎日が自分も大好きだったんです」

しかし、その幸せな日常が一変します。2021年7月に熱海市で大規模な土石流災害が発生したのです。製麺所も大量の土砂が流れ込み、壊滅的な被害を受けました。さらに警戒区域にも指定されたため、立ち入ることすらできなくなりました。

それでも被災から1年後、市内の別の場所に新しい工場を建て、麺作りを再開させたのです。さらに、中島さんに強力な助っ人が現れました。熱海市内をはじめ、全国に5店舗を展開する創作中華の巨匠、五十嵐美幸シェフです。2人でタッグを組み、熱海の新しい名物となるラーメンを作ろうというのです。

25年間、麺を作り続けてきた中島さんにとっても新しい挑戦でした。

コマツ屋製麺 中島秀人さん(54)
「食感の出し方がものすごく繊細。ゆでて1分とか2分の世界」

一方、中島さんの二女・茉子(まこ)さんも、家族を助けるために大きな決断をしていました。

中島さんの二女・茉子さん
「(前の会社で)働いていたんですけど、家はすごくピンチな状況で、やっぱり家の手伝いもしたかった」

「家族の力になりたい」と勤めていた会社を辞め、父も修業していた東京の製麺所で修業を始めたのです。

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復興麺の開発を始めてから3か月。中島さんは、魚粉をベースにしたさらにコシの強い麺を作り上げました。

五十嵐美幸シェフ
「ねばりコシが一番、麺にはハマるんだけど、もう少し塩味かな」

しかし、最高のバランスにたどり着くまで、試作は何度も繰り返されました。そして去年11月、ついに「熱海復興麺」が完成。お披露目の日には多くのお客さんが訪れ、予定していた50杯は1時間で完売となりました。さらにこの復興麺は現在、熱海市の「ふるさと納税」の返礼品にもなっています。

コマツ屋製麺 中島秀人さん(54)
「復興は1人ではできない。みんなに携わってもらいたい。いろんな方が協力してくれて、大きく地域でやっていく、そういうような復興。“土石流を風化させない”という意味もありますし、そういう思いが『復興麺』には入っています」と話していました。
(2023年4月21日放送「news every.」より)

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