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「子ども残したい」精子保存し戦場向かうウクライナ兵が増加 #shorts
ウクライナで2月に結婚式を挙げたばかりの夫婦。実はこの3日前、ある場所を訪れていました。首都キーウにあるクリニックです。その目的は、ウクライナ兵である夫の、精子の保存でした。
(クリニックの医師)
『ウクライナの兵士たちが、前線や危険な場所に行く前に、自分の精子を保存しに来るんです』
ロシアの軍事侵攻後の死傷者数が最大12万人との推計も出ているウクライナ兵。精子を液体窒素で凍結し、保存することで、もし夫が戦死したとしても、妻は人工授精で子どもを授かることが可能になるため、最近、利用者が増えています。
ウクライナ兵のヴィタリーさんは、侵攻初日から戦地へ赴き、死を覚悟する状況に追い込まれるたびに、自分に子どもがいないことを後悔していたと言います。
(精子保存したウクライナ兵・ヴィタリーさん(29))
『砲撃を受けた時は、地面に伏せて、生き残ることができるよう、神に祈っています。その時は、「自分の子どもだけでも残したい」、「愛する人が生きていて欲しい」と願うんです』
(妻・アンナさん(24))
『愛する人の“一部”を残すことには、意味があると思います』
この民間クリニックだけで、100人以上のウクライナ兵が訪れ、精子を保存していると言います。一方で、クリニックを訪れる時間さえ作れない、という兵士も多いようです。例えば、ある兵士が戦地を離れることを許可された時間は、わずか1日半でした。
(ウクライナ兵の妻)
『クリニックに電話したけど、クリスマス当日で誰も応じてくれませんでした』
しかし、休日返上で対応してくれたクリニックがありました。
(クリニックの医師)
『当初の予定にはありませんでしたが、兵士のためであればと、すぐに受け入れることにしました』
このクリニックでは、兵士らに対し、精子の凍結保存を半年間無料にする取り組みも始めています。一方で現場の医師たちから声があがっているのが、ウクライナの「人口減少」に対する懸念でした。
(クリニックの医師)
『終戦後には、非常に恐ろしい人口問題を抱えることになるでしょう。解決の糸口さえ見つかりません』
人口およそ4350万人のウクライナについて、3月、EUが気になる試算を公表しました。侵攻が長期化し、国外避難民の半数が戻らない、という最悪のケースでは、30年後の人口が31%減少するとしています。
精子を凍結保存してから、わずか8日後に命を落としたウクライナ兵もいます。
(精子保存後に戦死ヴィタリーさん(35)去年11月)
『ロシア軍はあの道沿いにいます。きのうは彼らの攻撃は失敗に終わりました。これが私たちの日常です』
最前線の戦況を記録するヴィタリーさん、35歳。去年11月まで、ウクライナ東部の地元・スロビャンスクで戦闘に参加していました。ヴィタリーさんが、亡くなる数分前に撮影していたという映像があります。
(精子保存後に戦死ヴィタリーさん(35) 去年11月)
『多くの死者と負傷者が出ています。とても大変な一日でした。みんな疲れました』
この直後、ロシア軍の砲撃により、頭部を負傷、即死だったと言います。妻のナタリヤさんが、サタデーステーションの取材に応じ、胸の内を明かしました。
(妻・ナタリヤさん(37))
『夫は私が孤独になることをとても心配していました。私がどれほど夫を愛し、子どもを欲しがっていたか、彼は知っていました』
ナタリヤさんは、ロシアの侵攻開始後、流産を経験しています。しかし、去年8月、危険を承知で夫のいる戦地へ向かい、半年ぶりの再会を果たすと、その後、妊娠が判明。去年11月、2度目の再会時に、女の子であることがわかりました。
(精子保存後に戦死ヴィタリーさん(35) 去年11月)
『私たちはとても幸せです。信じられません。この状況はとても幸運です。どうもありがとう』
再び流産する心配もあったことから、ヴィタリーさんは、この時に、精子を凍結保存。しかし、これが夫婦で過ごす最後の日となりました。妻のナタリヤさんは5月に出産予定ですが、その後も、夫が残した精子を使って、子どもを産みたいと言います。
(妻・ナタリヤさん(37))
『もし複数の受精卵が得られたら、その全員を出産するつもりです。勝利後の自由なウクライナで子どもたちの成長を見守り、愛情を注ぐことは、最高の幸せになるでしょう。夫や勇敢な兵士たちが命を捧げた幸せです』
侵攻の長期化がもたらす変化。150万人以上の避難民を受け入れている隣国ポーランドでは、「あの少女」も変化を迎えていました。
(アメリアさん)
Q元気でしたか?
『I’mfine.Thankyou.』
勉強中の英語で挨拶してくれたのは、ウクライナ人のアメリアさん、8歳です。ロシアの侵攻開始直後、平和な日常が崩れ去った首都キーウで、市民の命が無差別に狙われるなか、恐怖に怯える人々を勇気づけようと、防空壕で歌を披露したアメリアさん。この映像がSNS上で広がると、「戦禍の少女」として一躍有名になりました。その後、アメリアさんは母親とポーランドへ避難。去年12月放送のサタデーステーションでは、ウクライナ支援のコンサートで歌い続けながら、キーウに残る家族を想うアメリアさんを紹介しました。
(アメリアさん去年12月)
『パパにすごく会いたい。お兄ちゃんと猫ちゃんにもすごく会いたい』
実は、この取材の数日後、アメリアさんたちは、故郷・キーウに戻り、家族と久しぶりの再会を果たしました。
(アメリアさん)
『ほんとうに幸せだった。学校のお友達にも会えたんだもの』
幼馴染のキリル君にも再会。早くも結婚話が飛び出したといいます。
(アメリアさん)『二人で食事デートしたの』
(母・リリヤさん)『結婚式の計画もしてたね』
しかし、待ち焦がれた再会の傍ら、年末年始のウクライナを襲った「最大規模」のミサイル攻撃。キーウでも死傷者が数十人に上り、連日、停電が6時間以上続きました。
(アメリアさん)
『停電なんて気にならなかった。「パパ、ママ、懐中電灯をちょうだい」と言って、ゆっくりお絵描きしたくらいよ。』
(母・リリヤさん)
『攻撃の心配や緊張はあっても、家族が一緒だったから安心でした』
しかし、1か月後。アメリアさんたちは、再びポーランドに戻る決断をしました。
(母・リリヤさん)
『母親なら子どものために決断し、自分の人生と幸せを犠牲にするべきと考えました。今のウクライナは安全とは言えない状況です。そして娘が経験できないことが多すぎる。だからポーランドに戻ってきました』
母・リリヤさんが涙ながらに語る、「娘に経験させたかったこと」。それは歌やダンスの勉強です。「将来は歌手になりたい」というアメリアさん。表現力を磨くため、先月から、音楽を学べる学校に通い始めました。しかし、新たな悩みの種が生まれていました。お金の問題です。
(アメリアさん親子を支援するポーランド人アンナさん)
『ポーランド政府が、親子2人への支援を打ち切ったため、アメリアの学費は私個人が用意しています』
ポーランド人のアンナさん。アメリアさんたちが避難してきた去年3月以降、歌の指導など、2人を無償で支え続けてきましたが、最近では、自腹で学費を負担するまでになりました。現在、アメリアさんたちの収入は、ポーランド政府から貰える月に1万5000円ほどの子供手当と、コンサートで得る寄付金の一部。去年、ポーランド政府は、国内の避難民支援に1兆円以上を投じましたが、侵攻から1年以上が経ち、支援を縮小し始めています。
(アメリアさん親子を支援するポーランド人アンナさん)
『今年になり、ポーランドでもインフレが深刻化しました。そのうえ国民は、医療や介護問題などを抱えています』
これまで、無償で提供されていた一軒家に、祖母と母親と3人で暮らしていたアメリアさん。ピアノもあり、自由に歌える環境でしたが、昨年末、その支援も打ち切りに。現在は、1部屋しかない家で暮らしています。練習に必要なピアノも置けず、祖母とも離れて暮らすことになりました。
(アメリアさん)
『新しいアパートでいつも歌っています。シャワーを浴びるときも、靴下を履くときも。歌えばいつでも何でも上手くいくの』
あどけない歌声は、いつ、平和を取り戻したウクライナに響くのでしょうか。
サタデーステーション 4月8日OA
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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