中央省庁で“日本初”全面移転し京都に「文化庁」27日より業務開始 裏側に一体何が…その効果は?

中央省庁で“日本初”全面移転し京都に「文化庁」27日より業務開始 裏側に一体何が…その効果は?

中央省庁で“日本初”全面移転し京都に「文化庁」27日より業務開始 裏側に一体何が…その効果は?

 文化庁が東京から京都へ移転し、27日から業務を開始しました。中央省庁の全面的な移転は初めてです。

 新しい季節の訪れとともに、この日朝、京都市上京区にある文化庁の新庁舎では京都への移転を記念して除幕式が行われました。

 都倉俊一・文化庁長官「これから京都と東京と連携してやる事業がたくさん起こって参ります。こういうシステムに私も皆さんも慣れていないかも知れませんが、皆さんと一緒にまい進したいと思います」

 前日、岸田首相は―。「場所を選ばず、柔軟な新しい働き方を進めることを期待をしています」

 文化庁の新庁舎では都倉俊一長官をはじめ、全職員の7割にあたる約390人が勤務することになり、中央省庁の“全面的な移転”は初めてです。その裏側には一体何があったのでしょうか?

 中央省庁が移転に向けて動きだしたのは9年前、当時の安倍元首相が“地方創生”を打ち出したことがきっかけでした。

 政府は移転を望む自治体を募集し、2年後、文化庁の移転が決まったのです。当時、地方創生担当大臣として移転を進めたのが石破茂衆議院議員でした。

 石破さんは安全保障や外交のイメージが強い安倍元首相が、地方を大切にする姿勢を見せたかったのでは、と当時を振り返ります。

 石破さん「必要と思ったんだろうね。自分の人気をあげていくには、やっぱり安倍さんと地方って何となく結びつかなかったから。東京一極集中を変えるためには民間企業に本社を移転してね、と。そうであれば民間ばかりにお願いしてもいけないので、中央省庁の何が何でも東京にいないといけないもの以外は地方に移したいなというのがそもそもの始まりです」

 国会対応の忙しさなどを理由に官僚の反対の声も根強いなか、なぜ、実現できたのかー。

 石破さん「官僚の反対って、そんなに簡単なもんじゃないよと。あれが出来たのは、大義名分、地元の熱意もあるし、文部科学大臣が今の石川県知事の馳さんだったんだよね。すごく実行力もあるし、そういういろんなことが重なってうまくいった」

 しかし、中央省庁の全面的な移転は文化庁だけに留まりました。2015年には“一億総活躍”という新たなスローガンが掲げられ、「徐々に地方創生への熱が冷めていったのでは」と石破さんは考えます。

 文化庁移転の決定と同じ時期、全面的ではありませんが、消費者庁の一部が徳島県に移転することも決まりました。現在、徳島県庁の中にある「新未来創造戦略本部」で約80人が勤務しています。

 尾木水紀記者「これまでいろんな役所を取材してきましたが、雰囲気が違いますね」

 消費者庁新未来創造戦略本部の宮島義典さん「こちらに来ることになってフリーアドレス制をとっています」

 中央省庁の移転は、移転先を“働き方改革”の拠点とすることも目標で席を固定化せず、資料や荷物はロッカーに入るだけにし、ペーパーレス化を進めました。

 尾木記者「こちらも働き方改革の一環として、会議時間の短縮を目指して立って会議を行うこともあるということです」

 東京から転勤してきた職員も地方で働くメリットを実感していました。

 消費者庁新未来創造戦略本部 大友伸幸さん「ある職員は東京では子どもたちを送り届けた後、霞が関の職場まで毎日満員電車で片道1時間以上かけて通勤していたんですが、徳島での通勤時間は保育園への送り届けを含めても、自転車で20分程度と短く、子どもたちと一緒に夕食を食べることも増え、それが何より幸せだという職員もいます」

 また地元と連携した取り組みにも力を入れています。

 大友さん「徳島県内の自治体、市町村、民間企業の力をお借りしながら、共同で新しい政策を試しに行ってみて検証し、より良いものが出来た場合は全国に展開していきます」。

 消費者庁はこれまでSNSを活用した消費生活相談など、全国に先駆けた様々な“モデルプロジェクト”を県内で実施してきました。これが徳島県にとって強みとなっているのです。

 徳島県消費者政策課の島田准子室長「全国をけん引するような消費者行政、消費者教育が実践できていると思っています。徳島県の魅力が高まって地方創生、住んでみたいという所に繋がってくる」

 さらに県内では国際会議も実施されるようになり、世界各国から多くの人が訪れ、地元の人たちとの交流も生みだしました。

 移転決定当時、地方創生担当大臣だった石破さんは、今後も中央省庁の移転を進めるべきだと強調します。

 石破さん「何々省、何々庁とか、大きなものではなくても、ある役所のある部門だけでも地方に移転した方がその地域のためのみならず、日本全体のためにとっても良いというのはまだあると思います」

 Q:岸田首相はどれほど本気で地方創生に取り組もうとしていますか?
 石破さん「それは岸田さんに聞かないとわかんない。地方創生がデジタルと組み合わせになっちゃっていますよね。デジタルはあくまで手段道具であって、デジタルそのものが目的じゃないわけですよ。ちょっとズレてきちゃったかなという感じはしますけどね。このまま東京一極集中が続いたら、日本は人口は減るわ、経済は停滞するわ。これから先は地方が人を増やしていく、地方が経済を引っ張っていく時代になるんですよ。しなきゃいけないんですよ」

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