【WBC優勝!】選手の力を引き出す栗山監督の「信」 大谷を二刀流に育てた信念
野球のワールド・ベースボール・クラシック(=WBC)で、日本代表・侍ジャパンがアメリカを下し、世界一を奪還しました。ついに世界一の監督となった名将、栗山英樹監督に迫ります。
●意外な“信実”(真実)
●勝利への“信念”
●選手への“信頼”
以上の栗山監督の3つの「信」を中心に詳しく解説します。
■「信じる」が好きな言葉 栗山監督の意外な“信実”
栗山監督は勝利を祝うシャンパンファイトで、「ファンのみなさんが『野球すごいな』と思ってくれればうれしい」とした上で、「個人的には最後のユニホームになると思っているので、最後の日に最高の日になりました。これ以上ない、最高のサムライです」と語っていました。
栗山監督も勝利を信じていたでしょうし、日本中が栗山監督のことを信じていたと思います。その栗山監督は「信じる」という言葉が好きということです。実は栗山監督には意外な“信実”(真実)があります。
栗山監督は1961年生まれの61歳です。東京学芸大学出身で、現役時代はヤクルトで7年間活躍しました。引退後はプロ野球解説者、ジャーナリストとして活動しながら、2004年に白鷗大学経営学部の「助教授」に就任し、2008年には「教授」となっています(現在は休職中)。
■常識覆す「二刀流」に懐疑的な声も 戦略と“信念”が
これだけの学歴、経歴を経て2012年、北海道日本ハムファイターズの監督に就任しました。ここから監督として貫いたのが、栗山監督の2つ目の「信」、「信念」です。
その2012年、当初は日本の球団に入らずに「メジャーリーグ挑戦」を表明していたのが、決勝戦でも日本最後のピッチャーとして登場した大谷翔平選手です。その大谷選手を栗山監督と日本ハムはドラフトで強行指名しました。
当時、18歳の大谷選手の心を動かしたのが、球団が作成した「大谷翔平君 夢への道しるべ」です。そこにはピッチャーとバッターの「二刀流」で育成するという常識を覆すプランが書かれていました。
「二刀流」のアイデアは、大谷選手本人の頭にもなかったといいます。その大谷選手に栗山監督は「誰も歩いたことのない道を歩いてほしい」と声をかけたといいます。そして、大谷選手は栗山監督のもとでプレーすることを決意します。
ただ、プロ入り後も大谷選手の二刀流には、“どちらかに集中した方がいいのではないか”と懐疑的な声もありました。しかし、栗山監督は信念を貫き、大谷選手を一流のピッチャー、一流のバッターに育て上げ、同じ試合で投手とバッターの両方で出場するという“リアル二刀流”を実現します。
そのリアル二刀流は海を越え、2021年に大谷選手はメジャーリーグで9勝2敗、46本のホームランを放ち、最も活躍した選手に贈られる年間MVPに選出されました。
二刀流の生みの親とも言える栗山監督ですが、大谷選手の二刀流に対しては信念があります。それは「二刀流はチームを勝たせるためにあるんだ」ということです。これを大谷選手にずっと伝えてきたといいます。
■「思い切って行ってこい」 準決勝のサヨナラタイムリーに
3つ目の「信」は、今回の大会でも栗山監督が貫いた選手への「信頼」です。
このWBCで準々決勝まで不振に苦しんできたのが、日本の三冠王、「村神様」こと村上宗隆選手です。日本時間21日の準決勝・メキシコ戦で、その村上選手に1点を追う9回ノーアウト1・2塁の場面で打席が回ってきました。あの時、村上選手は、実は「バントのサインも頭をよぎった」といいます。つまり、ランナーを送ってチャンスを広げた方がいいのではとも考えたというのです。
しかし、その村上選手に勇気を与えたのが、ホームランが出なくても起用し続けた栗山監督の言葉でした。「もうムネに任せた。思い切って行ってこい」との言葉で、村上選手は「腹をくくった」ということです。
そして、22日の決勝戦では、2回に村上選手待望のホームランが飛び出しました。これがなかったら優勝できなかったわけですから、まさに栗山監督の言葉、「最後おまえで勝つんだ」が実現したわけです。
■北海道「栗山町」も大喜び 日本ハム監督就任前から縁が…
そして、栗山監督が世界一の監督となってお祭り騒ぎとなっているのが、北海道の「栗山町」です。
22日は、町内のパブリックビューイングで約80人が大盛り上がりしたそうです。取材したところ、栗山監督と同じ名前のこの町とは、北海道日本ハムの監督に就任する前の約20年前から交流があるということです。
同じ名前ということを縁に、町の若者が町おこしの一環で連絡をとったのが、ご縁になったということです。2002年には、栗山監督がこの町に「栗の樹ファーム」という少年野球場を造りました。日本ハム時代には、監督はこの町から札幌に通っていて、現在も町内に監督の家があるといいます。
22日、普段から「栗さん」「塩見ちゃん」と呼び合う仲だという住民の塩見望さんに取材しました。監督の人柄については、「同じ目線で、おごることなく話しかけてくれる」「『信じる』という言葉が好き」と話していました。「これまでは『栗山町の宝』だったけど、世界一になって『日本の宝だよ』と伝えたい」と興奮気味に語っていました。
◇
栗山監督の信頼に見事応えた日本代表の選手たちにも、惜しみない拍手を送りたいと思います。
(2023年3月22日放送「news every.」より)
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