【解説】アウターライズ型地震の怖さとは…揺れ小さくても津波の恐れ「昭和三陸地震」では大津波も『週刊地震ニュース』

【解説】アウターライズ型地震の怖さとは…揺れ小さくても津波の恐れ「昭和三陸地震」では大津波も『週刊地震ニュース』

【解説】アウターライズ型地震の怖さとは…揺れ小さくても津波の恐れ「昭和三陸地震」では大津波も『週刊地震ニュース』

日本海溝の沖合が震源となる「アウターライズ型地震」。陸地では被害を伴うような大きな揺れにならなくても津波が発生する可能性が高いとされています。東日本大震災以降、このアウターライズ付近でも地震活動が活発になっていて、今後大きな地震が発生するおそれがあり、警戒が必要です。「アウターライズ型地震」とはどのようなタイプの地震なのか?社会部災害担当・内藤ミカ記者が解説します。【週刊地震ニュース】

■震度1以上は29回―北海道・釧路沖を震源とする地震で震度5弱
今月20日~26日までの期間、国内で震度1以上の地震が29回発生しました。震度3以上の地震が5回ありました。

▼25日午後10時27分、北海道の釧路沖を震源とする地震がありました。地震の規模を示すマグニチュードは6.0、震源の深さは63キロで太平洋プレート内で発生した地震です。北海道・根室市と標津町で震度5弱の強い揺れを観測したほか、北海道・東北地方・関東地方で震度4~1の揺れを観測しました。

■去年末スタートの「後発地震注意情報」は発表されず
釧路沖での地震は、去年12月から運用が始まった「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の想定震源域で発生した地震でした。

後発地震注意情報とは、想定震源域で地震が起きた場合、そのあと巨大地震が起きる可能性が高まっているとして注意を促す情報です。「後発地震注意情報」の発表基準は想定震源域でおおむねマグニチュード7.0以上の地震が発生した場合です。

今回の釧路沖でおきた地震は基準に達しなかったため、「後発地震注意情報」は発表されませんでした。しかし、揺れが強かった地域では地震発生から1週間程度は、同程度の強い揺れをもたらす地震が発生する可能性もあるとして、気象庁が注意を呼びかけています。

▼群発地震が続く石川県の能登地方でも震度3の地震が2回ありました。21日にはマグニチュード4.1、震源の深さは12キロ、26日にはマグニチュード4.2、震源の深さ10キロと、ともに震源の浅い地震でどちらも珠洲市で震度3の揺れを観測しました。
■アウターライズ型地震で大津波――1933年の昭和三陸地震
3月3日は「昭和三陸地震」が起きた日です。この地震は「アウターライズ型地震」と呼ばれています。

1933年3月3日、三陸沖を震源とするマグニチュード8.1の巨大地震では、太平洋沿岸で最大震度5の揺れとなりました。この地震では岩手県で高さ30メートル近い津波が観測されています。死者・行方不明者数は3000人以上にのぼるなど大きな被害となりました。

■「アウターライズ」とは―日本海溝の沖合のエリア
三陸沖付近では、陸のプレートの下に海のプレートが沈み込んでいるため、沈み込もうとする海のプレートが海溝の手前から曲がり始めるためにその付近が地形的に盛り上がっています。海溝より東側、沖合の盛り上がった地形部分を「アウターライズ」といいます。「昭和三陸地震」は、このアウターライズ付近の海のプレートの内部で発生したものです。

■東日本大震災以降、「アウターライズ」エリアでも地震活動活発に
東日本大震災をきっかけに、震源域の周辺では地震活動が活発になりました。震源域内ではプレートが大きく破壊されてしまったので、壊れやすい所が少なくなり地震活動が低くなっています。

一方で、震源域の周辺を囲むような領域では、地震活動が活発になっています。「アウターライズ」でも地震が増えていて、2006年から2010年まではマグニチュード3.0以上の地震が388回だったのに対して、2018年から2022年までの同じ5年間では、823回発生しています。

■東日本大震災以降も「アウターライズ」で大地震――最大1メートルの津波観測
2012年12月7日、アウターライズ付近のプレート内部で発生した地震では太平洋側の広い範囲で最大震度5弱を観測しました。地震の規模を示すマグニチュードは7.3でした。さらに津波が発生し、宮城県石巻市で約1m、仙台港では約40センチの高さの津波が観測されています。

■陸地で大きな揺れにならなくても、津波発生の可能性が――
「アウターライズ型地震」は陸地から遠く離れた沖合で発生する地震です。このため陸地では被害を伴うような大きな揺れにならない可能性もありますが、海域でおきる大きな規模の地震では津波が発生するおそれがあります。大きな震度ではなくても、津波が発生する可能性があります。これが「アウターライズ型地震」の怖さです。

■プレート境界地震発生のあとに、アウターライズで大地震の事例も――東日本大震災からは12年経過
▼1933年におきた「昭和三陸地震」の37年前、1896年には「明治三陸地震」(マグニチュード8.2)が起きています。「明治三陸地震」はプレート境界で起きた地震です。

▼千島海溝のプレート境界では、2006年11月にマグニチュード7.9の地震がありましたが、その地震の約2か月後には、「アウターライズ」でマグニチュード8.2の巨大地震がおきています。

▼2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本海溝付近のプレート境界でおきた地震です。

「昭和三陸地震」と「明治三陸地震」、さらに千島海溝で2006年と2007年におきた地震、発生間隔はまちまちですが、どちらもプレート境界で巨大地震が起きたあとに、アウターライズでも巨大地震が起きています。

■東北地方沖合では地震活動高い状態が継続
地震の専門家、環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんは「アウターライズだけでなく、東北地方の沖合いの地震活動は、まだ高い状態が続いているため、今後も被害を伴うような大きな地震が発生する可能性があるとして注意が必要」と話します。

「アウターライズ型地震」に限らず、揺れが大きくないからといって津波が来ないと油断することは禁物です。津波警報・注意報などの情報を確認して、ただちに安全な高台に逃げるなど津波に備えて下さい。
(2023年2月27日放送)

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