【単独取材】ロシア国営テレビ元職員 引き金は「紛争の記憶」と「現実との違和感」

【単独取材】ロシア国営テレビ元職員 引き金は「紛争の記憶」と「現実との違和感」

【単独取材】ロシア国営テレビ元職員 引き金は「紛争の記憶」と「現実との違和感」

ウクライナ侵攻への抗議で去年3月、ロシア国営テレビで生放送中に反戦を訴えた元職員。亡命先で単独インタビューに応じました。後悔はないものの、家族には溝ができたといいます。行動に出た理由や恐怖にさらされる生活、プーチン政権について聞きました。

■わずか10秒の行動…突然の戦争批判
「この1年間、私は常に恐怖と緊張の中で生きてきました」

16日、ロシア国営放送の元職員、マリーナ・オフシャンニコワさん(44)が単独取材に応じて語りました。

オフシャンニコワさんが世界中に知られるきっかけになったのが、ウクライナ侵攻が始まって2週間余りたった、去年3月の出来事でした。

「戦争をやめてください! プロパガンダを信じないでください! ロシア人は戦争に反対しています!」とメッセージを掲げました。ニュース番組の生放送中に突然反戦を訴えた、10秒ほどの行動でした。

■再び抗議…起訴、自宅軟禁で亡命決断
この抗議は罰金刑で済みましたが、去年7月には大統領府(クレムリン)の前で「プーチンは殺人者だ」などと紙を掲げて抗議活動を行ったことから、起訴されました。

2か月間の自宅軟禁が言い渡されました。その際、去年10月に弁護士から「刑務所から生きて出られないかもしれない」と言われたことで、亡命を決断したといいます。

オフシャンニコワさん
「(逃亡する時)外は真っ暗でした。ヘッドライトや国境警備隊から身を隠しながら、私たちは違法に国境を越えたのです」

今はNGO団体の助けを得て、フランス・パリで12歳の娘と暮らしています。

■記憶と違和感…異例の行動に出た理由
危険を冒してまで異例の行動に出た理由を聞くと、幼い頃に経験した紛争の記憶が1つにありました。「私の父はウクライナ人で、ソビエト連邦で生まれました。(当時の紛争で)家は破壊され、悲惨な子ども時代だったんです」と振り返ります。

もう1つは違和感だといいます。

「ロシアのテレビ局は全て国家の手にあります。自分のしていることと現実との間に違和感がありました。後悔はしていません。戦争が始まった時、誰かが立ち上がって『王様は裸だ』と言わなければならなかったんです」

■ロシアに残った18歳の息子と父親
ただ、侵攻をきっかけに家族の間には溝が生まれました。18歳の息子は父親とロシアで暮らしています。「息子は、私が家庭を崩壊させたと言っています。彼はロシアに残り、私を家族と祖国への裏切り者とみなしています」とオフシャンニコワさんは言います。

「全てを失いました。クレムリンは、私の家、家族、祖国を奪ったのです」

■「若い世代のために戦っている」
それでもプーチン政権を批判し、反戦を訴え続けます。

「私のメッセージは、全てのジャーナリスト、そしてロシアの全ての人々にとって非常に力強いものであったと思います」

「戦争は長く続き、ますます悪質で攻撃的になっています。世界は前に進んでいるのに、プーチンは若者をソ連時代に引きずり戻そうとしている。私たちは若い世代のために戦っているのです」
(2023年2月21日放送「news zero」より)

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